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ハッチカバーの風雨密性に問題はありませんか? /Are your hatch covers weathertight? (Japanese HTML)

貨物の濡れ損クレームは、Gardに1年間に寄せられるクレームの中でもかなりの割合を占めています。その主な原因の1つが、以前からたびたび問題となっているハッチカバーの欠陥です。Gardの検査プログラムの一環であるコンディションサーベイにおいても、ハッチカバーに関する欠陥が多数見つかっています。

こちらは、英文記事「Are your hatch covers weathertight?」(2022年8月31日付)の和訳です。

はじめに

 

本稿の目的は、この問題に対する意識を高めること、そして、ハッチカバーの正しいメンテナンスとテストがいかに重要かをお伝えすることです。まず、ハッチカバー装置に関して発生頻度の高い問題をいくつかご紹介します。次に、ハッチカバーの風雨密性を調べる各種テスト方法と、シール材を別途使用することによる問題を検討し、最後に、メンバーの皆さまに向けた推奨事項をご紹介します。

  

ハッチカバーでよく見受けられる問題

 

Gardがコンディションサーベイプログラムを実施してきた経験から言えること:Gardでは、ばら積み船のコンディションサーベイを実施する際、ハッチカバーの風雨密性を特に念入りに点検するようサーベイヤーに指示しており、超音波テストの実施を要求することも多々あります。サーベイはチェック表を用いて行っていますが、これまでの経験上、所見が特に多く認められる項目は以下の3点です。

  1. ラバーパッキンの外観は良好か?修理は正しく行われているか(見えにくい部品にもきちんと目が行き届いているか)?
  2. チェーンプル/油圧装置の外観は良好か?
  3. シールテープやフォームを使用した形跡やその残骸が残っていないか? それ以外にも別途、シーラントを使用していないか?

 

ここからは、サーベイ中に上記の項目に該当し、実際に貨物の濡れ損クレームも受けたことでGardが把握している欠陥についてご紹介します。ただし、ここに挙げたものはあくまで一部ですのでご注意ください。

 

ラバーパッキン:ハッチカバーの欠陥の中で圧倒的に多いのはラバーパッキンに関する欠陥です。荷役道具が接触するなどして発生した物理的な損傷については、通常の検査をすれば損傷しているとだいたいすぐに分かりますが、それと同じくらい重要なのが、摩耗や過度な圧縮によるパッキンの経年劣化です。これは見落とされてしまうことがあります。

 

他にも、古いパッキンの隣に新しいパッキンを差し込んでいる、パッキンのシール面上に補修用ラバーストリップを使用している、押しつけた跡が中心にない、隙間を埋めるために短いラバーパッキンが使用されている、といったことも、ハッチカバーの密封性や性能に影響を与えます。

 

また、パッキンの設計圧を頭に入れておくことも大切です。設計圧はメーカーのマニュアルに書かれています。圧縮が弱すぎると船体が動いているときに水が浸入してしまうおそれがあり、逆に、過度に圧縮すると短期間でパッキンが損傷し、ゴムの弾力性や柔軟性といった特性が損なわれてしまいます。

 

見落としがちなのが、メーカーマニュアルに記載の許容範囲を超えたラバーパッキンのへたり(押しつけた跡)です。これは、パッキンの過度な圧縮やクリートの過度な締め付け、ランディングパッドの摩耗が原因で、ラバーパッキンの弾力性に悪影響を及ぼす可能性があります。一般的にラバーパッキンの廃棄の目安は、へたりが設計圧の50%を超えた場合とされていますが、廃棄する際は必ず各メーカーのマニュアルをご確認ください。

 

ランディングパッド:サポートパッド、チョック、レスティングパッド、ベアリングパッドとも呼ばれ、痩せや摩耗がメーカーマニュアルに記載の許容範囲を超えているケースが多く指摘されています。また、パッドがなくなってしまっているというケースも時折あります。このような状態になると、次のようなことが起こりえます。

 

  • ラバーパッキンが過度に圧縮されて劣化してしまう。
  • コーミングテーブルとハッチカバーのサイドプレートが直接合わさり、接合面が摩耗してしまうおそれがある。
  • 船体が海上で屈曲しているときのハッチカバーとコーミングの相対運動が制限される。

 

コンプレッションバー:ラバーパッキンにぴったり密着し、風雨密性を確保する役割がありますが、波打ちや湾曲、摩耗、腐食が指摘されることがあります。このような状態になると、ラバーパッキンを圧縮する力が不均等、不十分になってしまいます。

 

操作システム:ハッチカバーの操作システムにはさまざまなものがあり、システムによって特性や故障・損傷しやすい箇所が異なります。現在最も普及しているのは、油圧・鎖伝動式システムです。

 

  • 油圧式システム:よく指摘されるのは、ホースの過剰ペイントやひび割れ、システム(配管、バルブ、作動中のシリンダーやモーター)からの漏洩、油圧シリンダーの損傷、潤滑油不足による作動油への不純物混入やジャッキシステムからの漏洩、メンテナンス不足やスペアパーツ不足です。油圧システムに欠陥があるとハッチカバーがきちんと閉まらなくなるおそれがあります。
  • 鎖伝動:これは電動、手動だけでなく油圧式の場合もあります。ここでよく見られる欠陥は鎖の激しい腐食・摩耗で、腐食によってジプシーホイールにも影響が生じるおそれがあります。

 

ドレン溝とドレン弁:ドレン溝は、カーゴホールドへの浸水を防ぐ重要な壁となるものです。このドレン溝とそれに付随する逆止弁が詰まったり設計どおり機能しなかったりすると、水がたまり、最終的にはドレン溝からあふれてカーゴホールドに流れていってしまいます。このような状況になっても船舶の安全にただちに影響が出るわけではありませんが、これだけでも貨物は濡れてしまい、重大なカーゴクレームの原因となってしまいます。ドレンシステムに関してよく指摘される欠陥には次のようなものがあります。

 

  • ドレン管やドレン弁にひび割れや穴がある。ペイントやマスキングテープで穴が塞がれているケースも数件あった。
  • ハッチコーミング裏側のドレン孔にフレキシブルホースが取り付けられている。
  • コーミングのドレン溝に前荷の残渣や錆片があり、ドレン弁までの水の流れを塞いでいる。
  • ドレン溝に穴や腐食部分がある。

 

セキュアリング装置:クリートは、船体が海上で動いて屈曲しているときにハッチカバーを固定する重要な役割を果たします。セキュアリング装置には、クイックアクティングクリートやウェッジクリート、シュータイプクリート、油圧式クリートなど多様な種類があります。主によく見られる指摘事項は次のとおりです。

 

  • クリートの過度な締め付け
  • クリートの腐食や痩せ
  • クリートの損傷やひび割れ、へこみ
  • クリートの配置が正しくない
  • ワッシャーの損傷や紛失
  • 貨物の濡れ損クレームの一部では、荒天下でクリートが緩んでいたために、ハッチカバーが風雨密性を失ったと指摘されている。

 

誤解されがちなのですが、クリートを増し締めしてもラバーパッキンの密着性が増すわけではありません。これはむしろ逆効果で、次のような状況を引き起こしかねません。

 

  • ハッチカバーとコーミングの相対運動など、ハッチカバー装置の柔軟性が弱まる。
  • ラバーパッキンが過度に圧縮されて損傷する。
  • ランディングパッドの摩耗速度が速くなる。
  • ラバーワッシャーの寿命が短くなる。

 

その他:ハッチカバー装置を重点的にチェックすることも必要ですが、通気孔やアクセスハッチなどカーゴホールドに通じる箇所も見逃してはならないことをぜひ覚えておいてください。こうした箇所のパッキンやセキュアリング装置に欠陥や損傷があると、そこからカーゴホールドに水が入ってしまうおそれがあります。保守管理システム(PMS)を用いたメンテナンスチェックはメーカーの定める要件をくまなくカバーできるため、こちらも重要です。メンテナンスチェックの記録は付けておくようにしてください。メーカーの指示に従ってチェックをした証拠がなければ、仮にカーゴクレームを受けた場合に、船主が相当の注意を尽くしていたことを証明するのが難しくなってしまうかもしれないからです。

 

コンディションサーベイで発見されたハッチカバーに関する欠陥の写真:

 

ハッチカバーの風雨密性テスト

 

最もよく用いられているのは、チョークテスト、ホーステスト、超音波テストの3つです。ロスプリベンションの観点から見れば、この3つのうちでは超音波テストが望ましいとされています。その理由については後述します。

 

チョークテスト:3つのうちでは最も原始的な方法です。これで分かるのはラバーパッキンとコンプレッションバーが接触しているか否かという点だけで、パッキンの密着具合については分かりません。

 

ホーステスト:ハッチカバーの接合部に向けて、ホースで水を勢いよく(通常は2-3 kg/cm2の圧力で)かける方法です。水がカーゴホールド内に入り込んでいれば、密閉構造に欠陥があると言えます。ホーステストに適した条件は、国際船級協会(IACS)発行の『Rec 14 Hatch cover securing and tightness(Rec 14 ハッチカバーの固定と風雨密性)』に記載されています。船舶が静止している状態でこのテストを行ってカーゴホールドに水が入り込んでいれば、船舶が海上で激しく湾曲・屈曲しているときにはさらに大量の水が入り込むことが想定できます。ただし、このテストには次のような欠点があります。

 

  • ホースから噴射する水の勢いが不十分だと、欠陥場所があっても水が入り込まないことがある。
  • すべての接合部をテストできない可能性がある。
  • ラバーパッキンの密着具合を知ることはできない。
  • 水に弱い貨物をカーゴホールドに積んでいるときや、気温が氷点下の場合には実施できない。

 

超音波テスト:超音波発信器をカーゴホールド内に設置し、機器の使い方を習得した人が受信器を使って超音波の漏洩箇所を調べる方法です。はじめに「オープンハッチバリュー」(ハッチカバーを開いた状態で測定した数値で、そのカーゴホールド/ハッチで測定しうる最も強い値)を測定し、それをハッチカバーなどの開口部をすべて閉じた状態で測定した数値と比較します。測定した数値がオープンハッチバリューの10%(または機器メーカーの指定値)を超えていた場合は、ハッチカバーに漏洩箇所があると言えます。超音波テストには主に次のような利点があります。

 

  • カーゴホールド内に貨物があっても、また、テスト時の気温に関係なく、ハッチカバーの風雨密性を確認できる。
  • 漏洩箇所を正確に特定できる。
  • ラバーパッキンの密着具合を知ることができる。

 

ハッチカバー装置の風雨密性を調べるにはこれが最も正確な方法ではありますが、テストを行うにあたり覚えておくべきことが何点かあります。

 

  • 通常、船員では対応しきれないため、機器を操作するのは、訓練を受けた有資格者のみに限定するべきである。
  • 機器は、認証を受けた型をきちんと較正したものでなければならない。

 

シールテープやフォーム(発泡樹脂)の使用

 

ハッチカバーはきちんとメンテナンスをすれば厳しい海象にも耐えられるよう設計されているため、P&Iクラブとしては、Ramnek/シールテープやフォームの使用は基本的に推奨していません。Ramnekテープやフォームを使用していたということが分かれば、ハッチカバーに欠陥があったと荷受人に受け止められ、貨物の濡れ損クレームを主張する材料に使われてしまうからです。ただ、傭船者が使用を求めてくることもあります。そのような場合には、ハッチカバーテスト(超音波テストが望ましい)と併せて外部のサーベイヤーによる検査を行い、積地出港時点でハッチカバーの風雨密性に問題がないことを確認しておくとよいでしょう。テストと検査の結果はきちんと記録に残しておき、Ramnekテープやフォームはあくまで傭船者の要請を受けて追加の対策として使用したことが分かるようにしておく必要があります。

 

Ramnekテープやフォームは、効果を発揮させるためには正しく使用しなければなりません。使用の際には次の点に注意してください。

 

  • フォームを取り除かないままハッチカバーを開けてしまうと、破片がカーゴホールド内に落ちて異物混入の原因になってしまうおそれがある。
  • フォームがドレン溝やパネル間の隙間に詰まると、水を排出できなくなるおそれもある。
  • また、Ramnekテープやフォームは取り除きにくいため、使用した航海の終了後、ハッチカバーがきちんと閉まらなくなるおそれもある。
  • Ramnekテープを剥がす際にハッチカバーの縁付近のペイントも剥がれ、そこから腐食してしまうおそれがある。
  • フォームでラバーパッキンが傷んでしまうおそれがある。

 

 

 

推奨事項

 

満載喫水線に関する国際条約の規定を順守するため、また、船舶の安全を確保し、貨物を船積み時と同様の状態で引き渡し、仮にカーゴクレームを受けた場合にも相当の注意を尽くしていたことを証明できるようにするために、船主、管理会社、船員が考慮すべき点として次のようなことが挙げられます。

 

 

  • メンテナンスと記録
    • ハッチカバー装置と関連部品のメンテナンス・修理はメーカーのガイドラインに従って行い、スペアパーツは正規品のみを使用するようにしてください。
    • どの部品に関しても、実施した検査、メンテナンス、修理はすべて記録し、作業の証拠として写真や動画もできれば一緒に残しておくようにしてください。このような証拠を残しておけば、貨物の濡れ損クレームを受けた場合の抗弁材料となります。
    • 欠陥・損傷部品を交換できるよう、スペアパーツは十分な数を備えておくようにしてください。欠陥・損傷部品の特定作業は、船主/管理会社と船員によるリスク分析に基づいて行う必要があります。そのため、経験が大きく物を言います。
  • 作業
    • ハッチカバーの操作や締め付けなどの作業に関しては、船ごとに手順を定めておくようにしてください。
  • テスト
    • ハッチカバーのテストを定期的に行うことをお勧めします。実施頻度を安全管理手順で定めておくようにしてください。
  • シーラントの使用
    • シールテープやフォームを使用する場合は、使用前にまず補修用シーラントがない状態でのハッチカバーの風雨密性を確保するようにしてください。

 

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