article-img

ALERT

極海コードに関するPSCの検査キャンペーン / Polar Code on the PSC agenda (Japanese HTML)

この度パリMOUは、極海コードの要件の順守状況を確認するための検査キャンペーンを開始しました。2期に分けて実施される予定で、第1期は2022613日から既に始まっており、71日までの予定、第2期は81日~19日の予定です。

こちらは、英文記事「Polar Code on the PSC agenda」(2022年6月22日付)の和訳です。

極海コード検査キャンペーンは、通常の集中検査キャンペーン(CIC)に追加する形で、極海域を航行する船舶の季節航海計画に合わせて、1年の別の時期に実施されています。キャンペーンの主な目的には、海運業界における極海コード要件の順守状況の確認のほかに、次のようなものがあります。

 

  • 船舶が極海域を運航する場合のリスク増加、脆弱な極地環境の保護に関して、船員および船主の意識を高める
  • 極海コードの安全・汚染防止要件は必須であり、これらの要件の順守徹底がパリMOU加盟国の優先課題となっていることを業界に知らせる

 

パリMOUによると、期間中、各船舶が本検査キャンペーンに関する検査を受けるのは1回のみです。ポートステートコントロール(PSC)検査官が所定の質問票をもとに、船内にある情報と設備が関連条約を順守しているか確認します。

 

質問票は2022年6月3日付のパリMOUのプレスリリースに添付されています。

 

極海コードの概要

 

国際海事機関(IMO)の定めた極海コード(極海域における船舶運航のための国際基準)は、2017年1月1日に発効しました。SOLASMARPOLの両条約に基づいて義務づけられたもので、北極および南極周辺の過酷な海域における船舶の航行に関して、船舶の設計、構造、設備、運航、船員訓練、捜索・救助、環境保護をすべて対象としたコードです。

 

本コードでは、北極および南極の指定海域を航行予定の船舶に対して、極海域運航船証書(Polar Ship Certificateの取得を求めています。この証書は、極海域で航行中に遭遇すると思われる状況や危険に応じて、船舶をA、B、Cの3つのカテゴリーに分類しています。

 

また、極海域運航手順書(Polar Water Operational Manual [PWOM]を備え置く必要もあります。これは、船社と乗組員が船舶の運航能力と限界に関する情報を十分に把握して意思決定をしやすくすることを目的としたものです。国際安全管理(ISM)コードに基づく船舶の安全管理システムの延長ととらえ、内容の維持管理と適宜更新が求められます。

 

さらに船社は、極海域を航行する船舶で航海当直を担う乗組員に対し、STCW条約に基づく船橋航海当直の特別証書取得のための訓練を実施しておく必要があります。

 

なお、極海域は環境汚染の影響を受けやすいため、廃棄物・汚水の排出は厳しく規制されています。

 

詳しい情報はIMOのウェブページ「Shipping in polar waters(極海域の航行)」でも入手いただけます。

 

推奨事項

 

本来、船舶やその設備は、安全に航行してPSC検査も問題なくパスできるよう、常に維持・管理しておくべきです。とはいえ、対象となるPSC検査項目を事前に発表してもらえれば、船社や乗組員にとっては、事故の起きるリスクや国際安全規制違反になるリスクが他より高そうな特定の領域に注力するよい機会となります。

 

指定の極海域を運航している、もしくは運航予定がある船社におかれましては、ぜひ今回の検査キャンペーンを、陸上組織、乗組員、設備が「極地における危険」にもれなく対応できるよう準備しておく大切さを改めて考える機会にしていただければと思います。「極地における危険」は、より深刻なリスクを招きかねません。氷況は時期や海域によって異なります。また、低温や船体着氷によって労働環境や設備の機能に影響が出る、夜間や昼間の時間が延びて航行や乗組員のパフォーマンスに影響が出る、天候が急激に悪化する、緊急事態が起こり救援が必要な場合でも遠隔地のために到着が遅れる、などの危険があります。そのため、こうした危険を確認し、PWOMで対応できるようにしておくべきです。

 

最近発生している複数の座礁事故から分かったのは、一部の極海域では海図が必ずしも当てにならないということです。そのため、海氷の多い海域の運航に慣れていない船社は、ブリッジチーム員がSTCW条約に基づく所定の訓練を受けている場合でも、公認のアイスアドバイザーを雇って、海氷が予想される海域の航行計画を立てる際のサポート役になってもらうことを検討した方がよいでしょう。

 

 

Most read:

Insight articles

Loss prevention material

Member circulars