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近々に退船操練の予定はありますか? / Having an abandon ship drill anytime soon? (Japanese HTML)

人が乗った状態で救命艇を動かす場合は、必ずその前に救命艇とダビット装置の状態に問題がないか目視で細かく確認し、降下試験を実施してください。

こちらは、英文記事「Having an abandon ship drill anytime soon?」(2022年6月1日付)の和訳です。

救命艇は命を救うためのものですが、過去には、ダビット進水式救命艇の操練中や定期保守点検中に重大事故が多数発生しています。こうした事故は、救命艇進水装置に対する乗組員の信頼低下にもつながっています。

 

米国コーストガードが先日発表した安全通知にも救命艇に関する事故が載っています。乗組員がすぐに動いて、甲板上にあるダビットのウインチのブレーキレバーを操作しなければ、大惨事になっていた可能性があります。この事故では、おそらくリモートコントロールワイヤーの巻き取りが不十分だったために設備が故障したことが原因と特定されました。一方、調査の結果から、乗組員が会社のポリシーを守っていなかったことも分かっています。この会社のポリシーでは、救命艇に人を乗せる前は、必ず無人の状態で降下試験を行うよう求めていたのです。

 

この事故は、救命艇に人を乗せる前には救命艇とダビット装置を目視で点検しておくこと、また、救命設備の試験に関する会社のポリシーを船員がきちんと把握しておくことがいかに重要かを改めて物語っています。コーストガードは、点検時に特に注意すべき点として以下の項目を挙げています。

 

  • リモートコントロールワイヤーの巻き取りに問題がないか確認し、必要に応じて点検範囲を広げる。
  • リモートコントロールワイヤーの重心が適切であるか確認する。重心が救命艇上部に近すぎる場合は、ワイヤーが長すぎる可能性がある。
  • 救命艇内でプルケーブルとリモートコントロールワイヤーをつないでいるシャックルの状態を確認する。鉄製シャックルは風雨で腐食してしまうが、週次・月次・年次検査で見落とされてしまうことがある。

 

本事故の詳細とそこから得られた教訓については、米国コーストガードのMarine Safety Alert(海事安全通知)07-22をご参照ください。

 

操練は安全に実施しなければならない

 

乗組員が自船の救命設備の機能や操作方法を把握するには、定期的な退船操練を頻繁に行うのが一番効果的です。操練を行うことで、複雑な緊急事態にも適切に対応できるようになるうえ、救命設備が問題なく作動していることや、どの関連設備も正しく設置され、問題なく作動し、いつでも使用できる状態にあることを確認できます。

 

SOLAS条約第III章第19.3規則では、すべての船員が毎月最低1回は退船操練に参加しなければならず、操練については実際の緊急事態を想定してできる限り実践的に行わなければならないと定めています。つまり、操練には、通達、点呼、ライフジャケットの装着、救命設備の進水など、緊急事態発生時に踏むべき手順をすべて組み込む必要があるということです。とはいえ、余計なリスクまで負う必要はありません。例えば、乗組員全員が乗った状態で救命艇を降下させるような操練は、状況にもよりますが、余計なリスクを伴うことにもなりかねません。

 

したがって、退船操練は、認識済みのリスクをできる限り抑えるために、会社のポリシーに基づいて計画、準備、実行する必要があります。操練を安全に実施するための手順が実際の救命設備に合わせた作業環境評価から明らかな場合は、その手順を各船の安全管理システム(SMS)に組み込むようにしてください。また手順には、退船操練中の安全性に関する国際海事機関(IMO)のガイドライン(MSC.1/Circ.1578)も組み込むようにしてください。このガイドラインでは、以下の点を注意事項として挙げています。

 

  • 救命艇に人を乗せた状態で操練を行う必要がある場合は、まず無人の状態で救命艇を降下、回収してみて、設備が問題なく動くか確認することが推奨されます。問題ないことが確認できたら、操作に必要な人数だけを乗せた状態で救命艇を水面に降ろす。

 

  • 操練の実施にあたっては、救命艇とその設備が本船の保守マニュアルやその他の関連技術資料に基づいて整備されているか確認し、必要な予防措置すべてに留意すること。経年劣化や腐食による異常があった場合は、担当航海士に至急報告すること。
  • また、操練を実施する際は学習に重点を置くこと。法令上の要件を満たすためだけに実施するのではなく、学習機会として捉えること。また、操練で得た教訓は、記録を取り、その後に行う船内ミーティングの議題や次回の操練計画に取り入れること。

 

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