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ALERT

海賊行為の動向とホットスポット / Piracy trends and hotspots (Japanese HTML)

2021年は世界的に海賊行為の数が減少しました。しかし、ギニア湾では依然として脅威レベルが高くなっているほか、シンガポール海峡や南米の錨地では船舶に対する武装強盗事件が増加の一途をたどっており、懸念を引き起こしています。

国際海事局海賊情報センター(IMB PRC)によると、2021年は世界における海賊行為・武装強盗事件数が減少し、最新の年間報告では事件総数が前年比で32%減少しています。これは、ギニア湾内、その中でも特にナイジェリア海域での事件が減ったことが主な理由です。ギニア湾以外のアフリカ大陸で発生した事件も、2020年の4件に対し、2021年はわずか2件でした。また、アジア海賊対策地域協定情報共有センター(ReCAAP ISC)によると、アジアでの事件総数は前年比で15%の減少となりました。

事件数が地域レベルで減少しているのは喜ばしいことではありますが、大きな問題は依然として残っています。西アフリカ沖の海域が海賊行為のホットスポットであることには変わりありません。また、シンガポール海峡での武装強盗も続いているほか、南米での強盗事件にも改善の兆しは見られません。世界各国から寄せられる事件報告を見ると、多くの地域で乗組員に対する暴力行為が今も高い割合で発生していることが分かります。

 

アフリカ

ギニア湾では、護衛艦の存在感が高まり、各国当局が連携を強化したこともあって、状況が改善し、報告された事件数は前年比で60%の減少となりました。ただ、事件総数は減ったものの、罪もない乗組員たちに対する脅威は今も続いているとIMB PRCは警告しています。2020年と同様、世界で発生した誘拐事件はすべてこの地域で発生しており、昨年は7つの事件で計57名の乗組員が誘拐されています。また、人質に取られた人や怪我をした人も複数名おり、1名が殺害されています。

 

IMB PRCのデータによると、ギニア湾で発生した事件を総合的に見た場合、航行中に発生した事件と錨泊・着岸中に発生した事件はちょうど半々ずつでした。下の表からも分かるように、今も誘拐事件の大半は航行中に発生しており、陸からかなり離れた場所で起きる可能性があります。

Kidnapping incidents 2021 (source IMB PRC)

Date

Country

Location

Type of vessel

Crew kidnapped

23 Jan

Sao Tome and Principe

98 nm NW of Sao Tome Island

Container ship

15

8 Feb

Gabon

83 nm WSW of Port Gentil

Fishing vessel

10

11 Mar

Benin

212 nm South of Cotonou

Chemical tanker

15

19 May

Ghana

66 nm South of Tema

Fishing vessel

5

31 May

Benin

104 nm South of Cotonou

Fishing vessel

5

5 Sep

Gabon

At Owendo Inner Anchorage

Offshore supply vessel

1

13 Dec

Equatorial Guinea

46 nm SW of Luba

Container ship

6

 

ナイジェリアでは昨年、誘拐事件は1件も報告されておらず、同国海域での事件総数は前年比で80%以上減少しました。ただ同国は昨年も、ギニア湾岸諸国の中でガーナサントメ・プリンシペアンゴラガボンと並んで事件数が特に多い国の1つとなっています。また、アンゴラのルアンダ錨地とギニアのコナクリ錨地がIMB PRCの「2021年に事件が3件以上発生した港・錨地」一覧で大きく取り上げられている点にも注目です。ルアンダ錨地では今年の最初の6週間で武装強盗事件が既に3件報告されていることから、こうした傾向は今年も続くものと思われます。

ソマリ海盆アデン湾では昨年報告された事件がわずか1件で、ソマリアを拠点とする海賊による攻撃の脅威は低下したようにも見えます。こうした状況は昨年9月に更新・縮小された「ハイリスク海域」にも反映されました。とはいえ、ソマリア海賊は依然として攻撃実行能力を保有しているため、IMB PRCは、同海域を航行する船舶、特にソマリア沿岸に接近して航行する船舶の船長に対して、警戒を怠らないよう引き続き呼びかけています。また、海賊とは関係ありませんが、紅海南部、バブエルマンデブ海峡、アデン湾では、イエメンで続く紛争によって海上の安全が脅かされています。この紛争は基本的に陸上が主な舞台ではありますが、同地域を航行する商船にも直接的・間接的な損害が及ばないとも限りません。詳しくは「イエメン - 港湾の状況について」をご参照ください。

 

アジア

ReCAAP ISCによると、アジアでは昨年、82件の事件が報告されています(2020年は97件)。いずれも「武装強盗」のカテゴリーに該当する事件です。アジアではほとんどの場所で事件数が減少しているものの、シンガポール海峡では増加の一途をたどっており、引き続き懸念事項となっています。ReCAAP ISCは、フィリピン・マニラ湾錨地で発生している事件の凶暴さを指摘しているほか、スールー海・セレベス海で乗組員の誘拐が依然として脅威となっていることを忘れないよう注意喚起をしています。

 

 

  • シンガポール海峡:シンガポール海峡では昨年、計49件の海賊事件が報告されました(2020年は34件)。その大半は東向き航路で発生しており、ばら積み船が一番の標的となっています。負傷者が出た事件はほとんどありませんでしたが、犯人がナイフや銃器などで武装していることも珍しくありません。GardのAlert記事「シンガポール海峡では海賊行為が続いています」(2021年7月13日付)もご参照ください。

    当海峡では今年も事件の多発が予想されます。今年1月1日~2月21日の間に、当海峡を通航中の船舶を狙った事件が既に10件報告されており、その内の7件は東向き航路で発生しています。ReCAAP ISCは、「犯人は捕まっていないため、シンガポール海峡では今後も事件が起きる可能性がある」と、Incident Alert(事件に関するアラート)(2022年2月21日付)で注意を呼びかけています。
  • フィリピン・マニラ湾錨地:マニラ湾錨地では昨年、計9件の事件が報告されています。いずれも夜間に発生しており、この内7件はコンテナ船を狙ったものでした。GardのAlert記事「フィリピンにおける窃盗と強盗」(2021年9月29日付)でも強調しましたが、ReCAAP ISCは、こうした事件の多くで犯人から乗組員への暴力行為が増加することへの懸念を示しています。一方、明るい話題もあります。当錨地では、この一帯で事件を起こしていた犯罪グループのメンバー数名が昨年9月に当局に逮捕されて以降、ReCAAP ISCに事故の報告は入っていません。
  • スールー海・セレベス海とサバ州東部地域:2020年1月以降、身代金目的の乗組員の誘拐事件は報告されていません。ただ、ReCAAP ISCは、過去に当地域で誘拐事件を起こしたアブサヤフ・グループの主犯者らが今も逃亡中であることから、事件に巻き込まれる可能性は依然として高いと警告しています。GardのAlert記事「東南アジアにおける乗組員拉致事件」(2021年11月11日付)でも別途アドバイスを紹介しています。

中南米・カリブ海地域

中南米・カリブ海地域では昨年、海賊行為・武装強盗事件が計36件発生しており、IMB PRCの5年間の統計でも一向に改善の兆しが見られません。同センターによると、この地域の昨年の被害は、脅迫が6名、人質が4名、暴行が2名となっています。また昨年10~12月には、エクアドルで河川を航行中のコンテナ船2隻が接近、発砲される被害に遭っています。

ペルー・カヤオ錨地は長年、強盗のホットスポットとされてきましたが、2021年も例外ではありませんでした。当錨地では昨年、前年の倍以上となる18件の事件が報告されており、今年もこの傾向は続くと言われています。また、コロンビアで前年と比べて事件が増加している点も要注意です。同国は昨年、事件数の多さで南米上位5か国に入り、再び注目が集まっています。

 

引き続き警戒を

 

海賊行為・武装強盗の脅威の度合い、犯罪者と遭遇する確率、犯罪者の手口は、地域によって異なるうえ、頻繁に変わる可能性もあります。そのため、海賊の多発地域に入る前に、現地の情報源や保安専門家から最新の情報を取得し、その情報に基づいて船舶の保安計画を見直すこと、航海ごとにリスクを評価すること、乗組員へのブリーフィングと訓練を行うこと、本船の緊急時通信計画の準備・テストをすることが重要となります。「BMP West Africa(ベストマネージメントプラクティス・西アフリカ)」、「BMP5」、「Regional Guide to Counter Piracy and Armed Robbery Against Ships in Asia(アジアでの海賊行為と武装強盗から船舶を保護するための地域ガイド)」、「Global Counter Piracy Guidance for Companies, Masters and Seafarers(メンバー、船長、船員向け海賊防止グローバルガイダンス)」など、業界で発行しているガイダンスやベストマネージメントプラクティス(BMP)に従って適切な防止策を講じる必要があります。海賊多発地域を航行する際、業界のこうしたベストプラクティスに従っていないと、深刻な事態が生じることにもなりかねません。

 

錨泊時は特に被害に遭いやすいため、リスクの高い港・錨地で停泊する際は、監視をより一層強化する必要があります。なお、適切な見張りは船舶を守る効果が特に高い方法とされています。見張りを適切に行うことで、不審な船の接近や不審な攻撃を早期に発見でき、防御体制を取ることができます。

 

詳しくは、Gardのウェブサイト「海上での海賊行為と武装強盗(英文のみ)」をご参照ください。

 

覚書

海賊行為および武装強盗被害の予防

孤立しない

  • 該当する報告センターおよびRegister Transitに報告する。
  • 必要に応じて軍隊または他の海賊行為対策機関と連携する。
  • AIS(船舶自動識別装置)を常時作動させる。

探知されない

  • 随時NAVWARNSを確認し、既知の海賊行為発生場所については関連ウェブサイトを確認する。
  • リスクがある海域では照明を適切なレベルに調整する。

動揺しない

  • 警戒レベルを高める(監視、CCTVカメラ、レーダー)

弱点を見せない

  • 抑止効果のある視覚的かつ物理的な船舶防護策(Ship Protection Measures)を講じる。
  • 防衛策の一環として、レーザーワイヤー(有刺鉄線)、水噴射・泡消火器などを使用する。
  • ブリッジチーム用に追加の個人用防護具を用意する。

乗船させない

  • 航行速度を最大まで上げる。
  • 速度を大幅に落とさずに運航する。

服従しない

  • 訓練した手順を実行する。
  • 緊急避難所を使用する(十分な準備・訓練を行い、船長と乗組員の間での事前の合意がある場合のみ使用する。なお、海軍・陸軍の援護は保証されない)。
  • 道具、設備、アクセス経路の使用を拒否する。

 

出典:Global Counter Piracy Guidance for Companies, Masters and Seafarers

 

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