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カリフォルニア州の着岸中の排出削減規制の強化に備える / Prepare for tougher at-berth emissions reductions in California (Japanese HTML)

着岸中の船舶から排出される汚染物質のさらなる削減を目的とした新しい規制がカリフォルニア州で施行されました。この新しい規制に対する遵守が寄港時に求められるのは2023年以降ですが、規制を守るために必要な措置、手続き、設備の整備にはかなりの手間と費用がかかる可能性があるため、早めの準備をお勧めします。

こちらは、英文記事「Prepare for tougher at-berth emissions reductions in California」(2021年4月15日付)の和訳です。

 

カリフォルニア州の新しい規制「着岸中の外航船に対する規制措置」(以下、規制措置)が、同州行政法局(OAL)により承認され、2021年1月1日に発効しました。この新たな規制措置は、「カリフォルニア州の港に着岸中の外航船のディーゼル補機から排出される有害物質の規制措置」(以下、着岸中規則)に代わるもので、通航量の多いカリフォルニア州の港に着岸中の船舶から排出される大気汚染物質への公衆の曝露を減少させることを目的としています。2020年11月5日付のGardアラート「カリフォルニア州、着岸中の船舶による大気汚染の取り締まりを強化」を参照ください。

 

カリフォルニア州大気資源局(CARB)によると、新たな規制措置は、従来の着岸中規則で達成された成果をベースとするものの、対象となる汚染物質の種類や、港、船種が拡大されているとのことです。また、CARBは、着岸中の船舶から排出される汚染物質の削減にあたり、船舶の乗組員・運航者とターミナル・港湾の職員とが協力して取り組む必要があるとしています。従来の着岸中規則では、陸上電源対応の本船が陸上電源に接続可能な状態で到着しても、港湾やターミナルの職員側に規定の時間内に本船を陸上電源に適切に接続する用意、意思、あるいは能力がない場合は、規制違反とされるリスクがあります。新しい規制措置は、各関係当事者の責任の分界を明確にすることで、本船がコントロールできない事象について運航者が責任を問われる状況が発生しないようにすることを意図したもののようです。

 

船舶運航者に対する実務上の影響

 

この新しい規制措置の下では、カリフォルニア州の大型港湾ターミナルに寄港するほぼすべてのコンテナ船、リーファー船、旅客船、RoRo船、タンカーは、着岸中の補機排出量80%以上削減を達成するCARB承認の排出量規制手段を用いることが求められることになります。排出物質の捕捉・制御設備や船内の別の排出制御装置等の代替手段があっても、ほとんどの船舶は、確実な遵守のために、陸上電源を使用する必要があるでしょう。また、タンカーの補助ボイラーからの排出量の削減を求められる場合があります。

 

新しい規制措置は2021年1月1日に正式に発効しましたが、寄港時に遵守が求められるのは2023年以降です。2023年1月1日以降、従来の着岸中規則で既に規制対象に含まれているコンテナ船、リーファー船、旅客船は新しい規制措置に移行します。RoRo船は2025年以降、新しい規制措置を遵守する必要があります。また、ロサンゼルス港とロングビーチ港に着岸するタンカーについては2025年以降、北部の港に着岸するタンカーについては2027年以降に規制対象となります。

 

Compliance start date by vessel type:

1 January 2023

Container, refrigerated cargo, and passenger vessels

1 January 2025

Ro-Ro vessels and tankers visiting the ports of Los Angeles and Long Beach

1 January 2027

All remaining tankers

 

すなわち、2022年12月31日までは、寄港船に適用される規制に変更はなく、従来の着岸中規則に基づく排出ガス規制は2022年12月31日まで継続して適用されることになります。

 

推奨事項

 

2023年以降に適用される新しい規制措置の遵守に必要な手続きと設備の整備には、かなりの手間と費用がかかる可能性があります。カリフォルニア州の港に寄港する船舶の運航者には、新たな規制措置とその実施スケジュールを十分に理解しておかれることをお勧めします。また、確実な遵守のためには、前倒しで準備するのがよいでしょう。以下は、新たな要求事項の抜粋です。

 

 

  • 汚染物質排出制御の対象となる汚染物質の種類は、窒素酸化物(NOx)、ディーゼル排気微粒子(DPM)、微小粒子状物質(PM2.5)、反応性有機ガス(ROG)、温室効果ガス(GHG)です。
  • 船種従来の着岸中規則の対象であったコンテナ船、リーファー船、旅客船に加え、規制措置ではRoRo船とタンカーも対象となります。これは、寄港船の多数をRoRo船やタンカーが占める小規模なコミュニティを大気汚染物質から保護するためです。
  • 港湾「カリフォルニア州の港」の定義は、6つの港(ロサンゼルス、ロングビーチ、オークランド、ヒューニーメ、サンフランシスコ、サンディエゴ)に限定されなくなり、新たに「外航船を受け入れるカリフォルニア州内のすべての港または独立した港湾ターミナル」と定義されることになりました。各港における船舶の活動状況は、排出制御の必要性を判断する材料とされ、現在、年間「寄港回数基準」は20回に設定されています。ある船種が港湾またはターミナルに2年連続で年間20回以上寄港した場合、当該港湾・ターミナルは当該船種の「規制対象となるカリフォルニア州の港」に該当することになります。
  • 適用性排出ガス規制は、フリートの累積寄港数に関係なく、規制対象となる船舶がカリフォルニア州の対象港に寄港する都度、適用されます。すなわち、コンテナ船、リーファー船、旅客船のフリートのうち、従来の着岸中規則の「フリートの寄港回数基準」を現在下回っている船舶も規制対象となります。
  • 性能基準大気汚染物質の種類ごとに許容される排出量が性能基準として提示されるようになります。ただし、全体的な排出削減目標に変更はありません。この性能基準を満たすことで、規制対象の船舶は、着岸中の補機やタンカーの補助ボイラーの運転に伴う排出量を80%以上削減できます。
  • 遵守方法対象船舶は、規制遵守のために「CARBが承認した排出ガス規制手段」(CAECS)を使用する必要があります。原則として、船舶とターミナルは、CARBが承認した排出ガス規制手段であれば、各々固有のオペレーションに最適な排出ガス規制手段を自由に選択できます。現在の排出技術の利用可能性に基づくと、ほとんどの船舶は陸上電源を利用して規制を遵守することが予想されます。陸上電源は、既にCAECSとして認定されており、追加の承認は必要ありません。
  • タンカーの補助ボイラー新たな規制措置では、補助ボイラーで貨物搬出用ポンプの動力源となる蒸気を発生させているタンカーは、他の船舶に比べ、着岸中の補助ボイラーの発電量が非常に多いとされています。しかし、陸上電源を使用しても、ボイラーからの排出量は削減されず、陸上電源は着岸中の大気汚染防止の「切り札」であると考えられていることから、補機からの排出量の削減のために陸上電源を使用していないタンカーのみが、タンカーの補助ボイラーに適用される排出量性能基準を満たすことが求められるようになります。
  • 接続手順「寄港」が新たに定義されたことで、船舶運航者の予測可能性が向上することが予想されます。従来の着岸中規則では「寄港」とは、本船の係船索を最初に岸壁につないだ時点から係船索を解くまでの時間とされていました。新たな規制措置の下では、船舶は「作業準備完了」と宣言されてから2時間以内にCAECSに接続して排出制御を開始することが求められ、少なくとも水先人が乗船して船舶の運航を引き継ぐ1時間前まで接続を維持しておく必要があります。この新しい「寄港」の定義は、船舶が「作業準備完了」との宣言を受けて、排出制御装置への接続プロセスを開始できるようになる前に生じ得る事象に伴う不確実性に対処するものとなっています。こうした事象は、本船側では制御できず、本船が従来の着岸中規則が規定する陸上電源への切替制限時間を遵守するのを難しくしています。
  • Vessel Incident Event [VIE]船舶が予期せぬ運航上の事情により、寄港中に排出制御装置に接続できない場合、VIEをリクエストすることで規制措置に対処できる場合があります。VIEは、着岸中の船舶の挙動や荷役にまつわる不確実性を認め、余分な排出制御システムの必要性を排除することでコストを削減するものです。VIEは、各フリートに対し、年間で限られた回数しか認められていません。また、限定的ではあるものの、遵守が不可能な船会社がCARBに申請して承認を得た場合、改善基金への支払いの機会が提供されます。

 

新しい規制措置と従来の着岸中規則の全文は、CARBのウェブサイト(https://ww2.arb.ca.gov/our-work/programs/ocean-going-vessels-berth-regulation)からダウンロードできます。

 

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