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ばら積み貨物船でのコンテナの輸送 / Carriage of containers on bulk carriers (Japanese HTML)

従来のばら積み貨物船は、コンテナの輸送に適しているのでしょうか。こうした疑問がここ数週間で複数の業界団体から提起されています。今回の記事では、そうした転用についての技術的・法的意味合いを考察します。

こちらは、英文記事「Carriage of containers on bulk carriers」(2021年10月5日付)の和訳です。

 

ばら積み貨物船でのコンテナ輸送は、最近始まったことではありません。2000年発行のGardの記事では、そうした転用にまつわる問題をいくつか取り上げています。今回の記事では、ばら積み貨物船の転用についての技術的・法的な側面に加え、より重要なこととして、船主と乗組員が直面する可能性の高い問題について考察します。

 

 

堪航性担保義務

船舶所有者は、海上輸送のための堪航性のある船舶を提供する義務があります。運送契約には船荷証券と傭船契約の両方が含まれます。一般的な海事法(コモンロー)においては、堪航性担保義務は絶対的義務であり、堪航性を欠いた場合には、仮に船主に過失がなかったとしても責任を負うこととなります。大まかに言えば、堪航性とは、船舶が

  • 航海にあたり遭遇するであろう危険に堪え、
  • これらの危険から貨物を保護できる能力です。

 

一例として、ニューヨーク・プロデュース・エクスチェンジ(NYPE)書式の傭船契約の要件は、船舶が「堅固で、頑丈で、強く、あらゆる点でサービスに適している」ことです。堪航性担保義務は、本船の乗組員の能力にも及びます。

ほとんどの船荷証券と傭船契約には、ヘーグ/ヘーグ・ヴィスビー・ルール(HVR)のように堪航性について「デューディリジェンス(相当の注意)」を尽くす義務にまで軽減する至上約款が組み込まれています。例えば、HVR第 3 条第 1 項は次のように規定しています。

「運送人は、航海前および航海の開始にあたり、船舶の堪航性を保ち船舶の乗組員を適切に配置し、設備および備品を適切に備え船倉、冷凍冷蔵区画および貨物を輸送するその他のすべての船上区画を、貨物の受入れ、輸送、保管が適切かつ安全に行える状態にするために、相当の注意を尽くすものとする。」

つまり、船主は、船舶が確実に適切な船員と装備を備え、貨物の輸送業務に適した状態となるように、あらゆる合理的な対策を講じる必要があります。管轄地域によっては、法律で義務付けられている国際海上物品運送法(COGSA)が異なり、異なる堪航性の基準が課せられる場合もあります。

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船級協会に登録されている、または船級協会の承認を受けた改造が施されているからといって、その船舶が自動的に堪航性を有することにはなりません。 


必要な船級証書をすべて取得していても、船級によって検証された項目に起因する事故が発生した場合、調査の結果、その船舶に堪航性が欠如していることが判明したときには、責任は船主に残ります。

 

貨物やコンテナが損傷した場合のクレーム額を考えると、船級の承認にかかわらず、事故後には必然的に不堪航性の申し立てが発生します。以下で、コンテナを積載するばら積み貨物船の不堪航性の申し立てを回避し、申し立てが発生した場合に抗弁するために船主が考慮すべき技術的問題をいくつか特定し、説明します。

 

船主はコンテナの積載を拒否できるのでしょうか

ばら積み貨物船の傭船契約には、ほとんどの場合、取引除外条項と貨物除外条項が含まれています。当然のことながら、ドライバルク船の船主は、中長期の定期傭船契約を締結する際は、コンテナの輸送を想定していません。傭船契約でコンテナが明示的に除外されていない場合、船主はばら積み貨物船へのコンテナの積載を拒否できるのでしょうか。

 

今のところ明確な答えはありません。ただし、船主は傭船契約の船舶明細の条項を当てにすることができます。明細には通常、想定される取引が例えば次のように示されています。「本船は、ばら積み貨物船であり、穀物を輸送するために完全に装備され、ドライバルク貨物の取引用に完全に効率的な状態となっている」。これは、本船が特に穀物を含むドライバルク貨物を輸送するために傭船されていることを示しています。これがコンテナの輸送を除外していると主張できるかどうかはまだ分かりませんが(いずれにしても、個々の傭船契約の条件によります)、今後、この問題が提起されるかどうかは興味深いところです。

 

後述するように、従来のドライバルク船は、コンテナの輸送を検討する前に、設計の変更、承認・許可、追加書類が必要となります。つまり、従来のドライバルク船は、そのままでは貨物の輸送に適している、もしくは堪航性があるとは言えず、船主は標準的なドライバルク傭船契約に基づいてコンテナの輸送を拒否できる可能性があります。

 

コンテナ貨物への言及を特に含まない広範な取引が傭船契約の対象とされている場合、船主はおそらくコンテナ用の備品を備える義務を負いません。もちろん、それはコンテナの運搬を拒否できるということとは異なりますが、船舶がコンテナの輸送を目的として明示的に傭船されていない限り、コンテナ用の備品を備えるための費用の一部は傭船者に課せられます。

 

傭船者はコンテナの輸送を可能にするために必要な改造を提供し、その費用を支払う(傭船期間終了時には撤去費用を負担する)義務があるという主張は、傭船契約の条項によってさらに補強できます。例えば、NYPE 1993 cl.7では「傭船者は、必要なダンネージと特別な輸送または通常とは異なる貨物に必要な追加の備品を提供し、その費用を支払うものとする・・・」と規定しています。ドライバルク船でのコンテナの輸送は、特別な輸送または通常とは異なる貨物に当たる可能性が高いと考えられます。Baltime書式では船舶には「通常の貨物サービスのための」備品を備えることのみが求められており、ドライバルク船に関しては、コンテナ用の備品はこの記述に該当しない可能性があります。

 

ばら積み貨物船はコンテナの輸送に適しているのでしょうか

最初に言えることは、従来のばら積み貨物船はコンテナをカーゴホールドで輸送するようには設計されていないということです。ばら積み貨物船の運航者がコンテナを輸送する必要がある場合、安全な輸送を行うために、当該船舶には必要な備品、書類、承認のほか、訓練を受けた乗組員が必要となります。

 

ばら積み貨物船をコンテナ輸送に転用する際のプロセスを把握するために、Gardではそうした転用に成功されたメンバーの方々に連絡を取りました。その結果、次のような重要ポイントが見えてきました。

 

セキュアリング装置と貨物スペース:船舶のセキュアリング装置は、その船舶が転用に適しているかを判断するための出発点となります。ほとんどの場合、タンクトップとハッチカバーの既存のセキュアリング装置とその強度を考慮すれば、一般的な木材運搬船がコンテナの運搬に最も適しています。一部の船級協会によると、荷役作業中に貨物スペースに十分な大きさの開口部を確保するためには、サイドローリング式よりもフォールディング式のハッチカバーの方がはるかに優れているとのことです。船舶に十分なセキュアリング装置がない場合は、専門家の監督の下で組み立てる必要があり、そのような改造はすべて当局の承認が必要となります。

 

構造強度:カーゴホールドの内部・外部のセキュアリング装置に加えて、スタックの総重量がタンクトップとハッチカバーの最大荷重/許容点荷重(MT/m2)を超えないように、タンクトップとハッチカバーの構造強度を検証する必要があります。検証には専門家の監督が必要となり、船長は、重量を分散させ、スタックの重量配分を安全に最適化するための荷重分散ツールやその他のダンネージの使い方に関するガイダンスを受ける必要があります。構造強度の妥当性に関する計算は、コンテナ貨物のVGM(コンテナ総重量の申告)の精度に依存します。

 

貨物固縛マニュアル:ほとんどのばら積み貨物船の貨物固縛マニュアル(CSM)には、船舶でのコンテナの輸送に関する項目が含まれていない場合があります。CSMは、特定の GM(メタセンタ高さ)基準の下でコンテナを固定するために必要なラッシング強度に関する重要な情報を提供するものであることから、船舶の適合性を判断するための重要な一要素です。コンテナの輸送に対して船舶の適合性を確保するには、CSMの修正が必要となるでしょう。それには、バラストを搭載した特定の積載条件下で積載されたコンテナのラッシング装置を組み込むことになります。これにより、コンテナのスタック高さの制限につながる加速力を発生させる可能性があります。CSMはGM基準を考慮した固縛装置に関するガイダンスを提供します。

 

積付ソフトウェア:一般に「Loadicator(積付計算機)」と呼ばれる積付ソフトウェアは、積付マニュアルのソフトウェア版です。従来のばら積み貨物船の積付計算機は、コンテナを貨物とした場合の復原性を計算するように作られていない可能性があり、また、貨物の重量配分がばら積み貨物の場合ほど均一ではない可能性があります。ばら積み貨物船の標準的な積付計算機のもう一つの限界は、コンテナの復原性とラッシングの要件の計算対象となる船舶の能力に必然的に影響を与えるものでありながら、貨物固縛マニュアルの要件が組み込まれていない点です。

 

危険貨物の輸送:

  • 火災検知:SOLAS条約の第II-2章では、2,000GTを超える船舶の貨物スペースの防火システムに関する明確なガイドラインを提供していますが、貨物スペース内の火災検知についてはガイドラインを提供していません。これはばら積み貨物船に限られたことで、専用のコンテナ船であれば、貨物スペース内にサンプル抽出式の煙検知システムなどの火災検知手段が備わっています。
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 Gardではコンテナ船の大規模火災を何度か扱った経験から、早期発見が最も効果的な火災対策だと考えています。検知システムを設置しない限り、ばら積み貨物船はこの点で不利な状況のままです。

 

こうした点に、コンテナの内容物の誤申告の頻度を加味すると、コンテナを貨物として、特にカーゴホールド内に積載する従来型のばら積み貨物船の場合、火災安全に関連するリスク要因が高くなります。

  • 消火活動:コンテナ内での消火活動には特有の課題があります。誤申告の問題が増えていることを考慮すれば、運航者は、貨物スペースの中や外の消火のための適切な手段を船舶に装備することが推奨されます。船舶に危険物の輸送に関するコンプライアンス文書(DOC)があるかどうかに関係なく、緊急時には移動式のウォーターモニターやウォーターミストランスなどの消火手段が有効となる可能性があります。カーゴホールド用の固定式消火装置については、危険物輸送の承認を受けている従来のばら積み貨物船のほとんどが、すでにそのような装置を備えています。

 

旗国・船級協会の承認プロセス

書類の提出:コンテナをばら積み貨物船で輸送する場合、船主は本船の旗国と船級協会の両方から許可を得る必要があります。船級および法令上の要件は、ケースバイケースで適用される可能性があり、船級協会および旗国の当局によって異なります。特に、承認プロセスが初めて行われる場合は数日かかる場合があります。ある試算によると、ばら積み貨物船でコンテナの最初の貨物を受け取るための最終承認を与えるまでに、船級協会は8〜10日間を要したとされています。さらに、船級協会の要求に応じて、船主は、強度と復原性の計算が安全な範囲内にあることを確認するために、積み込み前に各航海の承認を必要とする場合があります。また、船主は寄港国によっては特定の書類の提出を求められる場合があることにも留意する必要があります。一般的に、必要な承認を得るためには、以下の項目を文書化する必要があると考えられ、それは航海ごとの場合もあれば、より永続的な場合もあります。

  • CSSコードおよび/または貨物固縛マニュアル(CSM)に準拠したコンテナの積付けおよび固縛計画
  • カーゴホールド/甲板/ハッチカバーの固定装置に関する新しい構造要素の構造図
  • コンテナを貨物とする場合の出発時と到着時の積荷条件の修正(航海ごとに審査用に提出が必要)
  • 本船の復原性マニュアルおよびソフトウェアに対する変更または修正
  • 確率論的損傷時復原性計算
  • また、船主は必要に応じて、危険物の輸送に関する適合文書(DOC)を申請する必要があります。

 

船主は船級協会や旗国との対話を早めに開始し、様々な要件や承認プロセスについて理解を深めることが推奨されます。また、船舶の適合性や必要な改造の程度を評価するために、船舶の事前評価を行うことも良いアイデアかもしれません。

 

乗組員の訓練と習熟

ばら積み貨物船の乗組員は、十分な訓練を受けていても、コンテナ輸送に必要な習熟度は不十分である場合があります。そのため、船上でのコンテナの安全な輸送や緊急時の対応など、様々な面で意識改革が必要となります。このような理由から、一部の運航者は荷積港にポートキャプテンを任命し、確実に貨物が安全に積み込まれ、CSMに従って固定され、本船が復原基準を満たすようにしています。これは確かに有用かもしれませんが、航海を実行するのは乗組員であるため、訓練を通じて乗組員の習熟度を高めることの代わりにはなりません。運航者が乗組員の習熟度について考慮すべき重要なポイントを見てみましょう。

 

コンテナ貨物に関する知識:コンテナ船では、以下のような状況が原因で多くの犠牲者が出ています。

 

  • 荷主がコンテナの内容物を誤って申告したため、火災が発生した
  • 貨物の梱包やコンテナ内での固定が不適切だったため、損傷、流出、火災が発生した
  • コンテナの重量が正確に申告されていなかったり、重いコンテナが軽いコンテナの上に積まれていたりしたことが原因で荷崩れが発生した

 

したがって、運航者は適切な顧客確認(KYC)手順を導入し、申告の正確性に責任を持つ傭船者、荷主、運送会社等を調べ、CTUコードに準拠するよう要請することが重要です。乗組員は、船主のKYC方針を熟知すると同時に、IMDGコード第5.3章「IBCを含む容器のマーキングとラベリング」に準拠したコンテナのマーキングとラベリングに精通していることが不可欠です。

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 乗組員は、流出事故や火災事故の際に参照する必要のある「IMDGコード補遺」についても熟知しておく必要があります。補遺の別表14に記載されているように、船舶は医薬品や機器を追加で備えておく必要がある場合もあります。

 

積付計算ソフト:乗組員は、積付、隔離、復原性、ラッシングに使用されるソフトウェアに精通している必要があります。すべての要件を満たすために複数のソフトウェア製品が使用されることもありますが、その場合、乗組員はそれぞれのプログラムの計算の仕組みを把握しておくことが望まれます。

 

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