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アルゼンチン国内の港では、ばら積み貨物の船積みや荷揚げをする際、陸上計測値以外は正式な数字として認められていないとして、陸上計測値で積み・揚げ数量を決めるよう貨物関係者から求められることが多々あります。はたして、この要求は正当なのでしょうか。そして、船主や傭船者、運航者はこの数字を黙って受け入れざるをえないのでしょうか。

こちらは、英文記事「Argentina - determining the cargo quantity for bulk cargoes - are shore figures mandatory?」(2022年3月24日付)の和訳です。

法律上の仕組み

アルゼンチンはヘーグ・ヴィスビー・ルールの批准国であり、国内の海上運送法にも同ルールの原則の大半が取り入れられています。

 

同国では2013年以前、ばら積み貨物の数量決定方法は輸出入者が自由に選んでよいことになっていました。しかし、同年6月、アルゼンチン税関当局より「固体ばら積み貨物運送船舶の喫水およびタンク計測による数量決定」と題したGeneral Resolution(一般決議)No.3506が出され、貨物数量の決定方法については、陸上計測とドラフトサーベイのいずれかを税関の判断で選択することになりました。

 

現状

アルゼンチンでは陸上計測値以外は認められないというのは誤解です。仮に税関当局が陸上計測を数量決定方法として選択したとしても、本船はドラフトサーベイを行って構いませんし、関係者がそこにサーベイヤーを立ち会わせることもできます。どのような場合でも、メンバーの皆さまはヘーグ・ヴィスビー・ルールに従うことが求められ、荷役時には本船で独自にドラフトサーベイを行う必要があるのです。ドラフトサーベイの数字は、荷送人が陸上計測値を記載したB/Lを差し入れてきた場合にその数字の妥当性を判断する材料となります。

 

通常範囲の誤差とは

アルゼンチンで特に多い問題は、現地の荷送人が陸上計測値を記載したB/Lを差し入れ、その数字が本船のドラフトサーベイの数字と食い違っていることです。誤差が通常の範囲内であれば、陸上計測値を記載したB/Lをリマークなしでクリーンで発行してもよしとされています。

 

何を通常範囲の誤差とするかは、その時々の状況や、本船側での貨物数量の計測方法によって変わってきます。たとえば、ドラフトサーベイを正しく行った場合の計測結果の誤差は、実際の数量の0.5パーセント以内に収まると言われています。したがって、陸上計測値とドラフトサーベイの数字に0.5パーセント以上の開きがあれば、通常はB/Lにリマークを入れるべきです。一般的な目安として、固体ばら積み貨物の輸送で、B/L上の数字と実際の貨物数量が0.5パーセント以上異なる場合は、P&I保険のてん補対象外となるおそれがあります。この0.5パーセントという値が、ドラフトサーベイを正しく行った場合の精度として一般的に受け入れられているからです。実際は、多くの要素が絡んでこのパーセンテージが変わることもあるため、ケースバイケースで判断します。詳しくはGardのクラブルール(第34条)に関するガイダンスをご参照ください。

 

ただし、B/L上の数字と実際の貨物数量が0.5パーセント以上異なる場合は、揚地で数量不足のクレームを受けるリスクが高まることが予想されます。それでも荷送人は、Mate’s ReceiptとB/Lへのリマーク挿入はできないと突っぱね、この誤差に関するプロテストレターを発行すればいいと船長に言うでしょう。しかし、このようなプロテストレターに実質的な効力があるかは疑問です。荷送人がしていることは、最初から数量が不足してことを荷受人に通知することになるだけだと反論する余地はあります。

 

対策

陸上計測値とドラフトサーベイの数字に0.5パーセント以上の開きがあり、荷送人から陸上計測値をB/Lにリマークなしで記載するよう求められた場合は、Gardがこれまで扱ったクレームや現地コレスポンデントとの話し合いを踏まえ、以下の対策を講じることをお勧めします。

 

  1. Gardに至急連絡し、本船にサーベイヤーを手配したうえで、ファイナルドラフトサーベイを独自に行い、本船の計測が正確であることを証明しましょう。サーベイには関係者全員(荷送人と傭船者)に立ち会ってもらうことが望ましいですが、立ち会いを拒否された場合は、船長がその旨をプロテストレターに記載し、サーベイを始めてください。
  2. 数量が食い違っている旨を傭船者/荷送人に通知したうえで、誤差を0.5パーセント未満にするため貨物を追い積みするか、または、船積み書類に本船のドラフトサーベイの数字と陸上計測値を記したリマークの挿入を認めるよう提案しましょう。アルゼンチン航海法(第20094号)第204項では、船長が物品の状態に関するリマークをMate’s Receiptに記入する権利が認められています。

 

荷送人・傭船者は、金銭的なプレッシャーをかけようと、上記のような作業による遅延は船主負担だとする根拠のない主張をしてくることがよくあります。ただ、英国法では、貨物の数量や記述、状態が食い違っている場合に船長がその理由を調べることを認めています。合理的な調査だったのであれば、正当な行為だと裁判や仲裁で支持され、遅延はすべて荷送人・傭船者負担となります。これについては、The “Boukadoura” (1989) 1 Ll. Rep 393を判例としてご参照ください。

 

また、昨年の記事「ドラフトサーベイ – ばら積み貨物の数量不足クレームに対する切り札」もご参照ください。

 

本記事は、GardのコレスポンデントであるSimonsen & Cia. S.R.L.Sigvart G.J.氏からの情報に基づいて作成したものです。同コレスポンデント作成のアラートは、こちらからご覧いただけます。