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Gardではこの数年、AISデータを活用してメンバーの輸送パターンを詳しく把握した上で、特定のロスプリベンション情報を、必要と思われるタイミングと場所で提供しています。これまでのところ重点を置いてきたのは「固体ばら積み貨物の液状化」リスクです。液状化の多発地域とされる港で積まれた貨物は、悲惨な事故やヒヤリハットにつながります。これは、原料に詳しい専門家から懸念地域として特定されている地域の貨物でも同様です。このリスクに着目することにしたのは、他のクレームに比べて発生頻度は低いものの、起きた場合の損害が大きいからです。貨物の液状化による損害で特徴的なのは、船舶と船員をあっという間に失いかねないという点で、これまでの事故を見ても、危険信号が出ていたのにそれが見落とされたり、誤解や軽視されていたりしたケースが多数ありました。

こちらは、英文記事「Geofencing – targeted and timely loss prevention advice to Members」(2022年1月20日付)の和訳です。

 

貨物の申告内容が間違っている、試験証明書が信頼できない、航海中や揚地到着時に貨物の移動や液状化が見つかった、といった船主からの報告はあとを絶ちません。ニッケル鉱や微粉鉄鉱石、ボーキサイトをはじめとする未精製の鉱石は、その組成から特に液状化が懸念される貨物です。採掘場所が遠隔地にあるため、高度な試験を行いにくく、法令順守のチェックの目も届きにくいケースも多々あります。昨今の世界的な資源需要の高まりによって新たな鉱山開発が進んでいますが、その結果、輸出に適さないような低品質の原料を輸出するよう経済的な圧力が高まったり、荷送人や規制当局、現地のサーベイヤーがIMSBCコードで定められている試験や申告義務を把握していないなどのケースも出てきています。加えて、世界的な気候変動によって液状化リスクは今後さらに高まることが予想されます。実際、一部のハイリスク地域では貨物の液状化の一因となっている雨期がこれまでより長くなっているほか、船体の安定性を奪い貨物ダメージを引き起こす荒天についても頻度や激しさが高まってきています。

 

ジオフェンシングとは

GardはAISのデータを活用して、液状化リスクが高いことで知られる港湾地域に入出港するP&I保険加入船舶を特定しています。また、ロスプリベンションチームでは、原料に詳しい専門家、現地コレスポンデント、船主、クレーム担当者からの助言を基に、液状化リスクが既に起きている地域と新たに発生しつつある地域を割り出しています。メンバーの船舶が当該地域に入港する際は、最新情報や警告なども含めたロスプリベンション情報をクレーム担当者からメンバーに提供し、質問を受けた場合やサポートを求められた場合のフォローアップも行っています。

フォローアップの内容は、メンバーの要望と当該地域のリスクプロファイルの両方を踏まえて決定します。フィリピンとインドネシアではニッケル鉱の船積みについて通知義務があるため、まだ通知していない場合、メンバーは必要な通知情報の提供を求められるでしょう。Gardからの連絡の有無にかかわらず、要件を守るよう注意してください。適切な防止策を考えられるよう、通知は船積み前に余裕を持って行っておくのが望ましいです。また、傭船者リスクの保険加入をしている船舶については、ジオフェンシングの対象外となる点には注意が必要です。ただこの場合も、傭船者が通知義務要件に従うことには変わりありません。さらにメンバーは、船積み書類の内容が規則に従っているかや、どのようなリスク低減策を講じたのかについて、船積み後に情報提供を求められることもあります。

通知義務はないものの、貨物内容の誤申告や貨物の液状化といった重要な懸念事項が最近報告されている地域に寄港する際は、クレーム担当者がロスプリベンションチームとの協力のもと、メンバーに連絡を取り、リスク管理に必要な情報や人員について話し合う場合があります。

一般的なリスク認識以外に重要な懸念事項がないような地域については、Gardの保険に加入している船舶の活動をチェックする場合があります。これは、その地域に定期的に配船しているメンバーに最新情報や補足情報を常時把握してもらうこと、特定の貨物の輸送や特定の港への寄港が初めてと思われるメンバーの参考にしてもらうことが目的です。活動が増えれば、Gardにとっても現地コレスポンデントや専門家から新たな情報を得られるよい機会になり、状況を詳しく把握して、その情報をメンバーと共有することが可能になります。

 

ジオフェンシングを行う理由

Gardの一番の目的は、メンバーや海運業界のクライアントがリスクとその結果に対処しやすくすることです。その筆頭として、現在行っているジオフェンシングでは、貨物の液状化事故によってメンバーが船舶や船員を失う悲惨な状況を回避することを目指しています。また、液状化リスクのある貨物の輸送に関して、船舶や船員を失うほど深刻ではないものの対処が難しい問題をサポートできればと思っています。対処が難しい問題とは、例えば、危険信号を認識すること、船主の権利・義務を把握すること、そして特に重要とも言えるのが、必要に応じたサポートの求め方を知ることです。

メンバーが求めるタイミングと場所で連絡を取ることは、単にこちらから情報を渡すだけでなく、話し合いを行ったり互いの知識を共有したりするよい機会にもなると考えています。

Gardは現地コレスポンデントや専門家、業界団体、社内のスタッフから定期的にヒヤリングを行い、知識を強化してそれをメンバーに伝えています。ただもちろん、重要な知見を持ち、調査対象の貨物輸送に精通し、実際に荷役を現場で見ている経験豊富で優秀な船員を抱えているのは、メンバーの皆さまであるということも決して忘れていません。皆さまには質問や懸念事項があれば遠慮せず尋ねてほしいと、かねて強く訴えてきました。また、今後の調査全般に役立つような情報や体験の共有も呼びかけています。何より大切なのは船員の安全と健康です。液状化リスクを管理するには、全ての関係者が警戒と協力を強化することが必要となります。

このジオフェンシングの取り組みを進めることで、重点リスクへの知見を深め、新たな多発地域を特定できるようになるとともに、メンバーの皆さまへのサービス改善に役立てられればと思っています。この方法は将来、結氷や港湾情報、液状化以外に貨物で起こりがちな問題など、他のリスクにも応用することができます。

これからも引き続きメンバーの皆さまとの協力、情報共有を行い、リスク認識を高めて安全を向上させることで、避けられる悲劇は避けたいと考えています。