陸上パイプラインの洗浄中に船のタンクが過圧状態になると、タンクが歪んだり、場合によっては破断したりすることもあります。また、タンクからあふれそうなほど貨物を充填した状態でパイプライン洗浄を行うと、貨物がP/Vバルブから漏れて汚染が発生したり、怪我人が出たりすることもあります。こうしたリスクを減らすには、事前の計画や訓練、船陸間でのコミュニケーションが重要となります。
19 JAN 2022
こちらは、英文記事「Clearing of shore pipelines - a final step in cargo loading operations」(2021年11月3日付)の和訳です。
ここ数年、ラインブローイングやピギングによる陸上パイプラインの洗浄中に液体貨物タンクが過圧状態になり、構造物が大きな損傷を受ける事故が発生しています。ラインブローイングとは、圧縮ガスや窒素を用いてパイプラインを洗浄する方法です。ピギングも洗浄方法の一種で、こちらは「ピグ」と呼ばれるゴム製の器具(球状や円筒状になっていることが多い)を液体または圧縮ガスでパイプライン内に発射して洗浄します。パイプラインを完全にきれいな状態にしたい場合は、圧縮ガスでピグを発射するのが一般的です。次にグレード違いの貨物を積むためパイプライン内に前のグレードができるだけ残らないようにしたい場合は、次に積むグレードでピグを発射することが多いです。こうした作業は、パイプライン内に違うグレードや貨物が混入してコンタミが起きないようにするため、また、パイプラインを次の荷役にいつでも使えるようにしておくために必要となります。
ピギングでは本船のカーゴマニホールドから貨物を注入し、ラインブローイングでは貨物とガスの両方を注入します。本船のタンクが損傷する直接の原因には次のようなものがあります。
陸上のタンクと本船のマニホールドを結ぶパイプラインの洗浄手順は、各ターミナルで利用できる設備や、積荷の種類によって異なります。洗浄中に貨物タンクに排出される貨物量を考えると、弁を備えたマニホールドでこの量を調節することが極めて重要です。本船とターミナルによる作業手順では、荷役とパイプライン洗浄に関するあらゆる項目をカバーする必要がありますが、作業前と作業中に関係者間で円滑なコミュニケーションをとることこそが、事故を防ぐ上で重要な要素であることが明らかになっています。
計画と責任
荷役を行うにあたっては、すべての作業内容を入念に計画し、しっかりと文書化しておく必要があります。また、本船とターミナルの作業員全員で計画の詳細を協議し、両者の責任分担について合意しておく必要があります。
船長は、荷役中に職務にあたる乗組員に対して適切な訓練を施し、パイプラインの洗浄作業に伴う問題や危険を十分に認識させておくべきです。
本船とターミナルの担当者で荷役前ミーティングを行い、双方に共通する重要な作業項目をくまなく確認してください。パイプラインの洗浄作業中に重要となる項目も確認対象です。
荷役前ミーティングで話し合うべき危険と項目には以下のようなものがあります。
認識すべき危険 |
荷役前ミーティングで話し合うべき項目 |
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荷役開始時および当直やシフトの交代時に、担当航海士とターミナル責任者は、荷役作業にあたる人員が荷役を進める上でのコミュニケーション方法を理解しているかを、確認し合うようにしてください。ターミナルと本船は荷役中、作業が完了してすべてのマニホールド弁を閉じるまで常に直接連絡を取り合うことが求められます。
推奨事項
タンクの過圧を防ぐためには、以下の項目を守ってください。
まとめ
陸上パイプラインの洗浄でどんな危険が生じるかを認識しておくこと、作業に向けた訓練を積んでおくこと、ターミナル側の作業員と事前に計画を入念に立てておくこと、本船とターミナルの間で綿密なコミュニケーションをとること。荷役終了時に行う陸上バイプラインの洗浄中にタンク過圧やタンクあふれが発生しないようにするには、こうしたことが重要となります。