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陸上パイプラインの洗浄中に船のタンクが過圧状態になると、タンクが歪んだり、場合によっては破断したりすることもあります。また、タンクからあふれそうなほど貨物を充填した状態でパイプライン洗浄を行うと、貨物がP/Vバルブから漏れて汚染が発生したり、怪我人が出たりすることもあります。こうしたリスクを減らすには、事前の計画や訓練、船陸間でのコミュニケーションが重要となります。

こちらは、英文記事「Clearing of shore pipelines - a final step in cargo loading operations」(2021年11月3日付)の和訳です。

 

ここ数年、ラインブローイングやピギングによる陸上パイプラインの洗浄中に液体貨物タンクが過圧状態になり、構造物が大きな損傷を受ける事故が発生しています。ラインブローイングとは、圧縮ガスや窒素を用いてパイプラインを洗浄する方法です。ピギングも洗浄方法の一種で、こちらは「ピグ」と呼ばれるゴム製の器具(球状や円筒状になっていることが多い)を液体または圧縮ガスでパイプライン内に発射して洗浄します。パイプラインを完全にきれいな状態にしたい場合は、圧縮ガスでピグを発射するのが一般的です。次にグレード違いの貨物を積むためパイプライン内に前のグレードができるだけ残らないようにしたい場合は、次に積むグレードでピグを発射することが多いです。こうした作業は、パイプライン内に違うグレードや貨物が混入してコンタミが起きないようにするため、また、パイプラインを次の荷役にいつでも使えるようにしておくために必要となります。

 

ピギングでは本船のカーゴマニホールドから貨物を注入し、ラインブローイングでは貨物とガスの両方を注入します。本船のタンクが損傷する直接の原因には次のようなものがあります。

 

  • 本船のタンクの通気系統能力を超える大量のガスが供給された
  • 本船のタンクの空き容量を超える大量の貨物がタンクに押し込まれた
  • 貨物がタンクに送られる速度が速すぎた

 

陸上のタンクと本船のマニホールドを結ぶパイプラインの洗浄手順は、各ターミナルで利用できる設備や、積荷の種類によって異なります。洗浄中に貨物タンクに排出される貨物量を考えると、弁を備えたマニホールドでこの量を調節することが極めて重要です。本船とターミナルによる作業手順では、荷役とパイプライン洗浄に関するあらゆる項目をカバーする必要がありますが、作業前と作業中に関係者間で円滑なコミュニケーションをとることこそが、事故を防ぐ上で重要な要素であることが明らかになっています。

 

計画と責任

 

荷役を行うにあたっては、すべての作業内容を入念に計画し、しっかりと文書化しておく必要があります。また、本船とターミナルの作業員全員で計画の詳細を協議し、両者の責任分担について合意しておく必要があります。

 

船長は、荷役中に職務にあたる乗組員に対して適切な訓練を施し、パイプラインの洗浄作業に伴う問題や危険を十分に認識させておくべきです。

 

本船とターミナルの担当者で荷役前ミーティングを行い、双方に共通する重要な作業項目をくまなく確認してください。パイプラインの洗浄作業中に重要となる項目も確認対象です。

 

荷役前ミーティングで話し合うべき危険と項目には以下のようなものがあります。

 

認識すべき危険

荷役前ミーティングで話し合うべき項目

  • 配管の圧力の上昇
  • タンクの過圧
  • 充填速度の急上昇
  • 貨物の積み過ぎによる貨物タンクあふれ
  • 圧縮ガスの流入による貨物タンクあふれ
  • パイプライン洗浄の実施タイミング
  • 洗浄作業を行う旨を本船に通知すべきタイミング
  • 使用する噴射媒体
  • 陸上パイプライン内の貨物量
  • ピグのパイプライン通過所要時間
  • 本船の受入タンクの圧力と通気能力
  • パイプラインに残っている貨物量と本船の受入タンクの空き容量
  • 陸側への蒸気戻り配管の容量
  • パイプライン洗浄を行った後の荷役計画の修正(満載する場合、あとどのくらい積めるかなど)
  • 作業中のコミュニケーション手順

 

荷役開始時および当直やシフトの交代時に、担当航海士とターミナル責任者は、荷役作業にあたる人員が荷役を進める上でのコミュニケーション方法を理解しているかを、確認し合うようにしてください。ターミナルと本船は荷役中、作業が完了してすべてのマニホールド弁を閉じるまで常に直接連絡を取り合うことが求められます。

 

 

推奨事項

 

タンクの過圧を防ぐためには、以下の項目を守ってください。

 

  • 洗浄用の受入タンクには、98%近くまで積載されているタンクを使用しない。また、ターミナルから通知された「ピギングによる排出量」が不正確である場合に備えて、受入タンクの必要空き容量を見積もる際にマージンを設けておく。
  • タンクがあふれそうになった場合に備えて、予備の貨物タンクを確保し、いつでも開けられるようにしておく対策などを考えておく。
  • 作業停止中はマニホールド弁を閉じておく。こうしておけば、陸側のミスでうっかり過圧状態になることをふせぐことができる。
  • 作業中は陸側への蒸気戻り配管を必ず開けておく(可能な場合)。
  • マニホールド圧を注意深くチェックし、必要に応じてマニホールド弁を絞る。ピギングの開始時は、満載に近い貨物タンクへの液体や噴射ガスの流入量を抑えるため、弁は最小限だけ開くこと。マニホールド弁の操作を含む職務には、適切な訓練を受けて経験を積んだ乗組員のみを割り当てることを強く推奨する。
  • 貨物タンクの利用可能な空き容量とタンク圧を常にチェックする。空き容量が少なくなったり圧力が高くなりすぎたりした場合は、マニホールド弁を閉め、ピギングを中断するようターミナル側に知らせる。
  • 凍結するような天候の場合には、タンクの通気口(P/Vバルブ)を定期的に確認する。貨物によっては凍結して通気口を塞いでしまい、その結果、圧力が高まることがある。
  • 圧縮された噴射ガスが貨物の積まれたタンクに入り込まないよう、ピグが終点(またはトラップ)に到達したら、(ターミナルとの合意の上で)マニホールド弁を直ちに閉じる。
  • 異常や、既存の手順から逸脱があった場合には、直ちに報告する。

 

まとめ

 

陸上パイプラインの洗浄でどんな危険が生じるかを認識しておくこと、作業に向けた訓練を積んでおくこと、ターミナル側の作業員と事前に計画を入念に立てておくこと、本船とターミナルの間で綿密なコミュニケーションをとること。荷役終了時に行う陸上バイプラインの洗浄中にタンク過圧やタンクあふれが発生しないようにするには、こうしたことが重要となります。