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長江の一部では、地元の水先人に対する新型コロナの検疫措置の影響で国際貿易船の航行がストップしています。

こちらは、英文記事「Legal risks following quarantine of Yangtze River pilots」(2022年1月5日付)の和訳です。

先週、海事関係のメディアが、長江の水先人2名が新型コロナ検査で陽性と判定されたことを報じました。その後まもなく、長江水先人センターに所属する水先人約500名のうち200名程度が中国当局によって隔離された模様です。それを受けて、長江の江陰 (Jiangyin) 港およびそれよりも上流に位置する港(南京を含む)に寄港する国際貿易船の航行の大半がストップしていることをGardでは把握しています。江陰港およびそれよりも上流に航行可能なのは、石炭、LNGなどの重要な輸入貨物の運搬船に限定されているようです。

 

状況は急速に変化しているため、現時点で国際貿易にどの程度の影響が及ぶかは正確に予測できませんが、状況を継続的に注視し、必要に応じて現地代理店に最新情報を求めるなどの予防措置を講じるようにしてください。この記事では、現状の水先人の勤務体制の概要を示し、遅延の長期化による潜在的な法的リスクについて考察します。

 

長江の水先人のローテーション

 

中国当局は、水先人は外国人船員と接触することから、新型コロナの感染を拡大させるリスクが高いと考えています。そうした考えに基づき、水先人はリスクを抑制するために厳格な勤務体制下に置かれています。

 

2021年8月の南京禄口国際空港での集団感染の発生を受けて、長江の水先人の勤務体制にさらなる制限が追加されました。水先人は、通常14日間の交代勤務に就くと、その間は外部との接触が一切禁止されます。14日間が終わると、集中検疫所で7日間の医学的観察下に置かれ、その後7日間、自宅で健康状態の観察期間に入ります。水先人がもたらすリスクに対する中国当局のこれまでの対処の仕方を考えれば、対象の水先人の隔離期間は少なくとも14日間から21日間継続されることになるでしょう。

 

検疫によって、既に逼迫している水先人の対応能力に悪影響が出ています

 

こうした検疫によって、長江河岸の港に寄港する船舶による輻輳がさらに激しくなる可能性があります。水先人の勤務体制が厳格化された影響で、長江で水先案内を受けた国際貿易船の1日当たりの隻数は、新型コロナ前の130隻から、2021年の最後の数週間には70~80隻に減少しています。その数は現在大幅に減少しており、隔離中の水先人が業務に復帰するまでは、以前の水準に戻る可能性は低いと考えられます。また、水先業務が再開されたとしても、隔離期間に悪化した輻輳が解消されるまでに少なくとも数週間を要することが予想されます。その結果、長江の各河川港への寄港予定が大幅に遅延する可能性があります。メンバーの皆様には、このような遅延の可能性に留意し、必要に応じて予防措置を講じられることをお勧めします。

 

遅延の長期化に伴う法的リスク

 

こうした遅延に起因する法的リスクの例としては、返船遅れ、Laycanに間に合わない、バンカーの消費量の増加につながる可能性のある船体の汚損やそれに伴う洗浄の必要性、停泊期間や滞船料に関する紛争の可能性などが挙げられます。また、こうした遅延が一般的なオフハイヤー条項の範囲内にどのように該当するかは解釈が難しいものの、これに伴う紛争も発生する可能性があります。確かなことは、船主と傭船者の双方が傭船契約書を手に取り、今回のような出来事において、自分たちのどの権利と責任に影響が及ぶのか、どのような免除や例外が適用されるかを確認することになるであろうということです。

 

さらに、長江の水先人に対する検疫の影響で生じる法的リスクには、貨物に関連する幅広い問題が含まれる可能性があります。ヘーグ/ヘーグ・ヴィスビー・ルール第3条2項に基づき、運送人は運送する物品を「適切かつ慎重に積込、取扱、積付、運送、保管、注意」する責任があります。この責任は「テークルからテークルまで」、つまり貨物が積み込まれた時から荷揚げされるまでの間、運送人を拘束します。例えば、長江の水先人の検疫の影響を受けて遅延した船舶の貨物が劣化した場合、運

 

送人がこの責任を果たしたかどうかという問題が生じる可能性があります。このような場合、船舶が堪航性を備えていることを条件に、運送人は、ヘーグ/ヘーグ・ヴィスビー・ルール第4条2項に列挙されている以下の抗弁を利用できる可能性があります。

 

1.  検疫上の制限(第4条2項(h))

2.  物品の隠れた欠陥、特殊な性質または固有の欠陥(第4条ルール2(m))

3.  相当の注意をしても発見することのできない隠れた欠陥(第4条2項(p))

4.  運送人の故意または過失によらない原因(第4条2項(q))

 

また、積み込み時点では危険でなかった貨物が、その後、その貨物を積載した船舶が長江の河川港への寄港待ちをしている間に遅延が長期化し、その間に危険物化してしまったかどうかという問題が生じる可能性もあります。そのような事態が発生した場合に運送人が取れる法的手段の範囲や、積荷関係者またはその他の法的問題によって運送人が求償されるかどうかは、当然、個々の事案のそれぞれの状況により異なります。このような法的問題が発生するリスクを最小限に抑えるために、配船にあたり、あるいは既に長江の河川港に向かう途上である場合も、あらゆる合理的な予防措置を講じ、必要に応じて法的助言を求められることをお勧めします。