Rate this article:  

ばら積み貨物のドラフトサーベイ(喫水検査)とは、船荷証券(B/L)に挿入される荷送人申告の貨物数量が正しいかを確認するための方法です。荷受人はB/Lに記載された数字に対して代金を支払っており、この数字はそれだけの貨物数量が実際に船積みされたことを示す一応の証拠(prima facie evidence)、あるいは確定的証拠(conclusive evidence)にもなります。ドラフトサーベイは数量不足クレームに対する一番の反証となりうるため、ばら積み貨物を船積みする際は毎回ドラフトサーベイの実施を指示するよう推奨いたします。

こちらは、英文記事「Draft surveys – a critical tool to defend dry bulk cargo shortage claims」(2021年10月14日付)の和訳です。

ドラフトサーベイが精密科学ではないことは周知の事実です。実施時の天候、うねり、喫水標の正確さ、必要な計算を行うにあたっての注意深さに依存するところが大きいからです。それでも、ドラフトサーベイを適切に行えば、最大でも最終数字の0.5パーセント前後に収まる正確な結果が出ると一般的には考えられています。そのため、サーベイ中にうねりが高かったなどの例外的な状況を除き、陸側の数字とドラフトサーベイによる数字に0.5パーセント以上の開きがあれば、それは単なる「書類上の差異」ではなく、実際に積まれた貨物が陸側の数字よりも多い、もしくは少ない可能性が高いと言えます。「書類上の差異」とは文字どおり単なる書類上の問題にすぎません。こうした差異はたいてい、用いられている計量方法の違いから生まれる誤差によるものです。

 

陸側の数字がドラフトサーベイの数字よりも小さい場合、その差異はさほど重要ではないでしょう。後述しますが、船主は、実際に船積みされた荷揚げ可能な貨物量とは関係なく、B/Lに記載された重量あるいは数量を引き渡す法的責任を負うおそれがあります。実際に積み込まれた貨物数量を船側で計測した数字(船積みのドラフトサーベイで確定した数字)がB/L上の数字よりも大きい場合、船主はB/Lに記載された重量あるいは数量と少なくとも同量の貨物が本船に積み込まれたと考えてまず問題ありません。既に述べたように、この重量あるいは数量が、船主が契約上引き渡さなければならない量と言ってもよいでしょう。そのため、航海中の事故で貨物そのものが失われる場合を除き、計測時にどうしても誤差が生じる点や、輸送中に貨物が乾いて重量が軽くなるなど貨物固有の性質によるロスがある点を見込んでも、船主はB/Lに記載された重量あるいは数量とほぼ同量を荷揚港で引き渡せるはずです。

 

しかしながら、荷送人がB/L上に記載したい数字がドラフトサーベイの数字より0.5パーセント以上大きい場合は、本船、船主ともに警戒が必要です。船主は、B/Lに記載された数字がそれ自体正確であるか否かにかかわらずその数字に法的に拘束されることが多く、B/Lの数字が間違っており貨物が「余分に」積まれることはなかったと主張できないおそれがあるからです(法律用語でいう「禁反言」)。ヘーグ・ヴィスビー・ルールでは、運送人は、荷送人の請求により、とりわけ物品の数量あるいは重量を記載したB/Lを発行しなければならないと定められています。発行されたB/Lは、そこに記載された有効な文言が適用されることになり、記載された数量あるいは重量を受け取ったとする一応の証拠となります。ただし、そのB/Lが流通する、つまり荷送人が裏書きをして善意の第三者に譲渡されれば、ほとんどの場合、その善意の第三者においては確定的証拠となってしまいます。そのため運送人としては当然、輸送するばら積み貨物を受け取り次第、ドラフトサーベイを実施して数量に問題がないか入念な検証を行う必要があります。検証の結果、齟齬や不足があった場合は、それをMate’s Receiptに、次いでB/Lにも正しく記載しなければなりません。ヘーグ・ルールおよびヘーグ・ヴィスビー・ルールの第3条第2項の但し書きでは、運送人、運送人の代理人または船長のいずれも、実際に船積みされた数量が正しくないと思われる合理的な根拠がある場合、または数量を調べる合理的な方法がない場合、当該物品の数量を記載したB/Lを発行する義務はないと強調しています。

 

ばら積み貨物を輸送する際のB/Lには、「said to weigh」や「said to be」、「weight, measure, marks, numbers, quality, contents and value unknown」などの文言がよく含まれています。一部の司法管轄では、このような文言は、B/Lの表面にタイプされたものではなく印刷されたものであっても、そのB/Lは記載された数量が輸送されたことの一応の証拠にさえなりません。したがって、輸送されたと称する数量を証明する責任は貨物の賠償請求人の側にあるのです。こうした文言は一般的に英国の法廷では支持されますが、あいにく他の多くの国ではこうした印刷された文言は認められていません。これはB/L書式の基本的文言の一部にすぎず、特定の貨物に関して付加されたものではないからというのがその理由です。したがって、これらの文言がB/L書式に初めから印刷されているか否かにかかわらず、B/Lの表面にこうした文言をタイプするか手書きで付け加えることが不可欠です。ただし管轄によっては、印刷、タイプ、手書きかにかかわらず、このような文言は認められないので注意してください。また、数量の差異が通常の範囲を超えるような状況においては「number, quantity and weight unknown」という文言を加えてもあまり効果はありません。船長が貨物の個数や数量、重量を測定できていれば、その文言が正しくないのは明らかだからです。一方、差異が通常の範囲であれば、こうした文言を引き続き用いるべきでしょう。

 

そこで、ドラフトサーベイが重要になるのです。本船上ではこれが荷送人の申告した数字を検証できる唯一の方法だからです。荷送人の申告した数字は通常、陸上での計測結果が基になっていますが、船長にはそれを検証する術はありません。荷送人の申告数字はさまざまな理由から正確とは限らないため、ドラフトサーベイの結果、荷送人の数字よりも0.5パーセント以上少ない数字が出た場合は、実際の貨物数量が不足している可能性がある旨を反映したリマークをMate’s ReceiptとB/Lに入れるべきです。そのリマークは、ドラフトサーベイの数字を明記したできる限り正確な内容でなければなりません。一方で、傭船者がこうしたリマークの挿入に合意せず、その代わりに船主を免責にするLOIを差し入れることがあります。ただ、裁判の結果、傭船者や荷送人が貨物のバイヤーなど善意の第三者を欺く手助けを船主にしてもらおうとする目的でLOIが差し入れられたという判決が出てしまえば、そのLOIの法的拘束力はなくなってしまうので注意してください。

 

現実的な問題ももちろん数多く起こりえます。B/Lは現地代理店が発行・署名する取り決めになっていることがありますが、代理店は傭船者の代理人である場合がよくあります。また、傭船者自身が荷送人であったり、荷送人と何らかの関係があったりすることもあります。荷送人がB/Lに記載された重量あるいは数量に基づいてインボイスを発行するのはほぼ間違いないでしょう。ところがB/Lは、傭船者とではなく船主との運送契約を証するような文言で作成され、署名されるのです。このような状況では、船長が適切と考える形式と文言(Mate’s Receiptと厳密に一致している)でB/Lを発行、署名してもらうことは難しいかもしれません。船長としてできることは以下の2点です。

 

(1) 船長から代理店に宛てた授権書に、B/LはMate’s Receiptと厳密に一致させた上で署名すべきことを必ず特記する。

 

(2) Mate’s Receiptの文言が適切であることを確認し、ドラフトサーベイで算出した本船側の数字を適宜記入する。

 

上記の2点を行うよう念押しすることが大切です。1点のみでは不十分です。この手順を踏んでも、傭船者やその代理店が船長から委任された形で本当にB/Lを発行する保証はなく、仮に荷受人が貨物の数量不足についての損害賠償を申し立てても船主が抗弁できるという保証もありません。ただ、こうしておけば、傭船者やその代理店がB/Lを委任された形で発行・署名しなかったために船主が荷受人に対する責任を被ることになった場合に、船主は傭船契約に基づいて傭船者から損害賠償を受けられる可能性が高くなるでしょう。

 

もう1つ指摘しておきたい点があります。それは、Gardのクラブルールでは「メンバーまたは船長が、貨物の明細、数量または状態につき不正確な記載があることを知りながら、B/L、Waybill、その他運送契約を証する証券を発行したことによって生じた責任、経費および費用はてん補されない」(第34条第1項但し書き(x))という点です。したがって、メンバーまたは船長がB/Lに記載された数量が間違っていることを把握しているにもかかわらず、B/Lにその旨のリマークを入れることを怠った結果「責任、経費および費用」が生じた場合、この条項を基にてん補されないことになります。

 

ばら積み貨物は1,500MTずつの5つの梱包など、比較的小さな梱包に分けられていることがあります。ただ、こうした梱包は船に積んでしまえば当然一緒になってしまうことを考えると、ドラフトサーベイを効果的に行えるのはその港で貨物を全て積み終わった時点に限られます。傭船者と荷送人は荷役が終わり次第速やかに本船を出港させたがるのはほぼ間違いありませんが、ドラフトサーベイに関する計算表をあらかじめチェックしておけば、サーベイは長くても2~3時間以内で終わるはずです。Gardとしては、船積み後と荷揚げ前の両方のタイミングでこのわずかな時間を捻出する価値は十分あると考えています。

 

Gardはこれまで、特に農産物の損失に関するクレームを数多く扱ってきました。こうした損失クレームはB/L上の数字との誤差が0.5~5パーセントの範囲に収まっているものが多く、ほぼどのクレームも「書類上の損失」であり、本船が受け取った貨物をすべて荷揚げしたことを疑う余地はほとんどありません。ただ、このような論拠だけではクレームを撃退できない場合もあります。そこでドラフトサーベイのレポートが物を言うのです。このレポートは、船積港で本船上に受け取った数量と荷揚げ開始前の本船上にある数量を本船側で独自に記録したものとしての役割があるからです。船積み後にハッチカバーが密閉され、その状態が荷揚げ開始前まで破られていなければ(また、その旨を荷受人が確認すれば)、航海中に貨物の損失など起こりえなかったことがさらに裏付けられることになります。

 

具体的かつ事実に基づいた証拠というのはどのようなクレームに対抗する際にも必要不可欠です。これは今まで見てきた貨物の数量不足クレームにおいても例外ではありません。ドラフトサーベイのレポートがないということは、B/Lに記載された重量あるいは数量が間違っていること、そしてレポート上の数字と比較しながら、本船が船積港で受け取った重量あるいは数量とほぼ同量を引き渡したことを示すための、船主が援用できる独自の証拠がないということです。このような証拠がなければ船主としては、B/Lに記載された重量あるいは数量は実際に船積みされた重量あるいは数量の一応の証拠にすらならないと主張するほかありません。ただ、これまで述べたようにこの論拠はB/Lの文言頼りでもあるため、クレームを完全に却下するのは往々にして難しいでしょう。

 

上述のように、運送人がB/Lの表面に正確な貨物数量を記載しなければならない義務はヘーグ・ルール、ヘーグ・ヴィスビー・ルールに由来するものです。したがって、船主の皆さまにおかれましては、ばら積み貨物を輸送する場合は必ず船積み後と荷揚げ前の両方のタイミングでドラフトサーベイを手配するよう推奨いたします。Gardは現地コレスポンデントを通じてサーベイの手配を行っております。通常、関連費用は一次的にメンバーにご負担いただく形になりますが、レポートがクレーム対応に役立った場合は、Gardが費用をてん補することもあります。また、このレポートによってクレームが却下、取り下げになった場合は、メンバーの保険成績に有利に反映されます。

 

ドラフトサーベイに関してご質問がございましたら、Gardにお気軽にご相談ください。

 

この記事は、1999年に発行されたGard NewsSenior Claims AdviserであるAlexandra Chatzimichailoglouが改稿したものです。