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ソマリアでの海賊行為の減少傾向が続いていることにより、主要海運団体はインド洋における海賊行為の「ハイリスク海域」の地理的境界を縮小することを決定しましたが、この海域を通過する船舶は引き続き警戒し、海上安全環境の変化に注意する必要があります。

こちらは、英文記事「Indian Ocean piracy ‘High Risk Area’ reduced.」(2021年8月30日付)の和訳です。

2021年8月17日、世界の海運・石油業界を代表するBIMCO、ICS、INTERCARGO、 INTERTANKO、およびOCIMFは、インド洋での海賊事件が減少し続けていることから、同地域の海賊行為ハイリスク海域(HRA)の境界縮小に合意したと発表しました。この変更は202191に発効され、HRAの境界は大きく言うとイエメン領海とソマリア領海、およびその東部・南部の排他的経済水域に縮小されます。

 

共同プレスリリースのコピー(下に示す、変更後HRAのマップと正確な経緯度情報を含む)は、Maritime Global Security ウェブサイトの「Red Sea, Gulf Of Aden, Somali Basin, Arabian Sea(紅海、アデン湾、ソマリア沿岸、アラビア海)」セクションからダウンロード可能です。

 しかし、インド洋地域の地理は多様であり、バブ・エル・マンデブ海峡やホルムズ海峡等の狭いチョークポイントから、ソマリア沿岸の大きく開いた海まで多岐にわたっています。各地域にそれぞれ難所があり、脅威はさまざまです。したがって、ソマリアの海賊行為に関する限り、HRA境界の縮小は望ましい方向への一歩を示すものといえますが、インド洋海域を通過するすべての船舶は、今後も引き続き警戒し、海上安全環境の変化に注意することが推奨されます。準備と計画が肝要であり、有効な安全対策を講じなければ深刻な結果が生じ得ることを忘れないでください。

 

ソマリアの海賊行為

HRAは、ソマリアの海賊行為の脅威が最も高まった2010年に、船主や運航者、船員に海賊の活動地域と、脅威を避けるのに特別な警戒を要する地域を示すために作成されました。その後の更新により、HRAはソマリア海賊の活動抑制の成功等、当該地域における脅威の変化を反映してきました。

IMB PRCによると、インド洋地域でのソマリア海賊による総攻撃数は2011年に237件を記録して最大となり、2010年から2014年の5年間で557件に急増しました。この数値は2015年から2020年の6年間ではわずか14件に急減しており、海上犯罪を減らすための共同の取り組みの成果として広く認められています。本稿の執筆時点では、ソマリア海賊グループは2017年以来、商船への攻撃に成功していないと報じられています。

 

 


注意点

 

  • ソマリアの海賊行為は減少しているとはいえ、IMB PRCは、ソマリア海賊が引き続きソマリア沿岸およびインド洋広域で攻撃を実行する可能性があると警告しています。また、ソマリア海賊は自動小銃や携行式ロケット弾(RPG)で完全武装していることが多く、乗っ取った漁船やダウ船を母船にして、そこから小型ボートを発進させることが知られています。このため、すべての商船は上記海域を通過する際に、海運業界の最新ベストマネジメントプラクティス(BMP)の勧告を遵守することが推奨されます。
  • HRAは、BMPに記載の「自主通報海域」(VRA)として示される地域の一部にすぎません。船舶は海事保安センター・ホーン・オブ・アフリカ(MSCHOA)に登録し、この地域に入る前に英国海軍商船隊司令部(UKMTO)に報告することが推奨されます。
  • 脅威は動的であるため、運航前のリスク評価でVRAおよびHRAにおける現在の脅威に関する最新情報を考慮する必要があります。船舶はBMPの付録Aに記載の組織から情報を入手し、航海警告や軍隊の示す脅威を避けるため、急な通告であっても計画航路から外れて航行できるように準備しておいてください。
  • イエメン紛争により、南紅海およびバブ・エル・マンデブでは海賊行為以外にも海上保安上の脅威が発生しています。この地域を通過する船舶は、海軍が駐留して監視活動に注力するために軍隊が設置した航路帯である、海上警備航路帯(MSTC)を利用することが推奨されます。

 

先頃変更されたHRAの境界はBMPの措置実施にのみ関わっていることにも注意してください。インド洋地域は戦争委員会連合(JWC)にもリストアップされており、IBF/ITF船員協約のハイリスク地域でもありますが、これらの地域の位置/境界は海賊行為のHRAとは一致していません。

 

Gardのウェブページ「Piracy and armed robbery at sea(海賊行為と海上武装強盗)」には、運航者、船長、船員が海賊行為や武装強盗の攻撃に対して警戒、準備、対応するのに役立つ関連ウェブサイト、ガイドライン、Gard資料へのリンクを記載しています。イエメンの港湾および適用される出港手続きについての情報は、当社ウェブサイトの「イエメン港湾の状況について」をご覧ください。