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最近のGardのウェビナーで、スペシャルゲストのPrashanth Athipar氏(BHPPrincipal for Sustainability and Maritime Supply Chain Excellence)と、GardCharterers & TradersLoss Preventionの両チームのメンバーが、温室効果ガス排出量削減目標に対する規制当局と海運業界の取り組み方について議論しました。本記事では、ウェビナーの中で投げかけられたいくつかの疑問・質問に対して回答します。

こちらは、英文記事「Taking aim: reaching carbon emission reduction targets」(2021年8月12日付)の和訳です。

はじめに

 

国際海事機関(IMO)は、海運業界の温室効果ガス(GHG)排出量削減に関して、2050年までに2008年の水準から50%以上削減することを目指すなど、いくつかの目標を発表しています。

 

これらの基準の順守には困難が伴うでしょう。しかし、BHPのような一部の大手傭船者は、さらに高い目標を目指しています。彼らは、規制上の最低基準を上回ることを選択し、GHG排出量削減に向けた世界的な取り組みの中心的存在になろうとしています。

 

規制環境は変化し続けています。業界関係者がよりグリーンな(環境問題を意識した)成果を求める中で、こうした規制環境の変化は船舶調査にどのように影響するでしょうか、また、船主と傭船者の間にどのような商業的な緊張をもたらすでしょうか。ウェビナーでは、これらの疑問について議論された後、活発な質疑応答のやりとりがありました。質問の多くは高度に技術的なものであるため、GHG レーティング制度に詳しくない方は、ウェビナーの動画をご覧ください。以下の質疑応答がよくご理解いただけるはずです。

 

限られた質疑応答の時間中に解答できなかった質問に対し、Prashanth Athipar氏と共にGard Charterers & Tradersチームの弁護士であるWan Jing TanとGard Asia Loss PreventionチームのマネージャーであるKunal Pathakとがお答えします。質問の多くが格付けに関するものであったことから、RightShip社にも追加情報を求めました。同社の本記事へのご協力に感謝いたします。

 

 

質問:新型コロナウイルス(COVID-19)危機に伴う不況からの脱出のために各国が投じた景気対策資金が化石燃料に向かう結果、今年、CO2排出量は過去2番目の伸び幅で急増すると予想されています。海運業界の予測を作成するにあたり、この点は考慮されていますか?

 

Kunal:おそらくこの質問に最も適切に対応できるのは、IMOの代表の方々でしょう。一クラブでは、世界各国が引き続き化石燃料業界に景気対策資金をつぎ込むのかどうかを予測できません。私たちがコメントできるのは、温室効果ガス(GHG)削減は過去10年以上にわたるIMOの優先課題であり、2018年GHG削減戦略におけるIMOの目標は、国際海運からGHG排出量を削減し、喫緊の課題として、今世紀中のできるだけ早い時期にGHGゼロ排出を目指すことであるということです。IMOがGHGに関する第4次調査報告書でCOVID-19が排出量予測に与える影響を補足する可能性に触れたことは注目すべき点であり、IMOも認めているようにパンデミックはまだ収束しておらず、完全な評価を行うには最新データを使った詳細なモデリングが必要でしょう。

 

現状のIMOのGHG戦略では、単位輸送当たりCO2排出量、すなわち燃費実績を2030年までに少なくとも40%、2050年までに70%削減するとともに、年間GHG総排出量を2050年までに少なくとも50%削減することを目標としています。これらの削減率は、2008年の排出量を基準としています。さらに、2023年に計画されている戦略レビューの後により高い目標が設定される見通しです。要するに、CO2強度とGHG排出量を削減する漸進的アプローチにおいては、設定された目標に対する業界の進捗状況が考慮されると考えられます。

 

 

質問:GHG レーティングはRightShip社が単独で行うのでしょうか。格付けにあたり普遍的ルールはありますか?

 

RightShip:現状においては、RightshipのGHG レーティングは、分かっている限り、傭船者と船主向けの唯一のGHG船舶格付け制度です。しかし、世界的にGHG排出量削減が注目されていることから、特定の国や港に寄港する船舶について国ごとの格付け制度が採用されると予想しています。既に一部で実施されており、GHG排出量削減を証明できる船舶に対し入港税の減免を行っている港があります。例えば、バンクーバー港は最も高効率な船舶に対し、最大50%の入港税減免を与えています。また、RightShipは現在IMOのMEPC 76の結果を精査しているところであり、弊社のアプローチをIMOの燃費実績(CII)アプローチと連携させる方法をいまだ検討中であることをお伝えすべきと考えます。弊社のレビューと今後の方針については、近いうちに明確な形にする予定です。

 

 

質問:船舶の格付けはどのような頻度で行われますか?

 

Kunal:IMOがMEPC 76で決定したように、CII関連規則は2023年1月1日に発効します。毎年、船舶ごとにCIIの達成度が計算され、「A」から「E」までの格付けが付与されます。2023年の排出量データを提出すると、2024年に「基準CII」と「達成CII」の比較に基づき最初の格付けが船舶に付与されます。「基準CII」は2023年から2026年まで年ごとに引き下げられます。2026年から2030年までの引き下げ率については、IMOが後日検討します。旗国への報告は年1回ですが、船舶が規制を順守し続けるためには、船主は絶えず運航中の燃費実績をモニタリングし、予測も行う必要があると考えられます。

 

ウェビナーでも述べましたが、RightShipの鐘形曲線(ベルカーブ)のような船舶格付けシステムについても触れておくべきでしょう。この格付けシステムは、現在、運航実績ではなく船舶の設計と技術パラメーターに基づいています。格付けは「A」から「G」までの7段階で、「A」は最も高効率な船舶、「G」は最も低効率な船舶であることを表します。よりグリーンな新造船が市場に投入されると、既存の船舶の格付けは低下する可能性があります。例えば、現在「B」に格付けされている船舶が、より新しく燃費の優れた船舶の投入によって、将来は「C」や「D」に格付けされるかもしれません。詳細については、RightShipにお問い合わせください。

 

 

質問:船舶のさまざまなGHG排出量計算基準についてパネルはどのような見解を持っていますか? BHPや他の傭船者はIMOCIIを船舶の燃費実績の基準として採用しますか、それとも独自の格付け制度を使いますか?

 

Kunal:現在、IMOのCII格付け制度のほかにも、RightShip、海上貨物憲章(Sea Cargo Charter)、ポセイドン原則(Poseidon Principles)、環境船舶指数(Environmental Ship Index[ESI])、SBT(Science Based Targets)イニシアチブ、GLEC(Global Logistics Emissions Council)フレームワークをはじめ、船舶の格付け、排出量目標や排出量報告基準の設定に関する多数の取り組みがあります。これらの異なるシステムの間では燃費実績の計算方法も異なり、例えば、年間効率化比率(Annual Efficiency Ratio[AER])を使うところもあれば、エネルギー効率運航指標(Energy Efficiency Operational Index[EEOI])を使うところもあります。AERとEEOIに使われる簡易式を以下に示します。船舶格付けの基準も同じではなく、基準年(IMOは2019年、ポセイドン原則は2012年など)も分布形状(IMOは滑らかな曲線、ポセイドン原則は階段状など)も異なります。IMOのCII格付け制度はAERまたはcgDISTに基づきます。cgDISTは、自動車運搬船、RORO船、クルーズ船では分母の「載貨重量」の代わりに「総トン数」を使うものです。また、船舶の種類によっては、例えば積荷の保温など推進関連以外の船舶運用に使われる燃料について、補正係数が使われる予定で、これについてIMOはまだ最終決定に至っていません。

 

 

 

 

複数の格付け基準があることで、船舶運航者に混乱が生じることも考えられます。そこで、私たちは、船舶の運航効率だけでなく設計も組み込み、統一された格付け制度をサポートしています。上記のIMO以外の取り組みはすべてIMOが2021年6月にCII格付け制度を採用する前に導入されたものであり、業界の他の取り組みがどこまでIMOの制度と足並みを揃えてくるか、まだ不明であることはお伝えしておくべきでしょう。

 

Prashanth:RightShipは長い間、利害関係者が船舶の環境格付けを評価するために利用できる唯一のプラットフォームでありツールでした。既存船の燃費性能指数(Energy Efficiency Design Index[EEXI])とCIIは、IMOが最近採用した新しい概念であることを確認しておく必要があります。私たちの理解では、RightShipは、IMOの格付け制度を自らの船舶格付け基準に組み込む最適な方法を検討中です。GHG レーティングの分野はさらに進化が予想されるため、BHPは今後の推移を注視し、RightShipの格付け制度を補足するため他のプラットフォームや格付け制度を利用することにも前向きです。私たちは傭船者として、市場に複数の格付け制度が混在することは複雑な状況を招くため、もちろん望ましいとは考えていません。とはいえ、どの格付け制度もCIIのように船舶の運航実績のみに基づくべきではなく、傭船者やその他の利害関係者が、船舶が全体としてどの程度効率的かを知ることができるよう、設計や技術的要素も考慮に入れなければなりません。

 

Wan Jing:複数の格付け基準が業界のすべての関係者に混乱を与えるという点には同意します。格付け制度が統一されなければ、運航者は自分たちが規制に関しどのような状況にあるのか、順守するにはどのような措置を取ればよいのかを知ることも難しく、傭船者が船舶の比較や評価を行うことも難しいかもしれません。

 

ウェビナーで説明されたように、傭船者の指示書が船舶の国際法上の義務に違反する原因となる場合に、運航者はその指示を拒否することができるのか、あるいは運航者は拒否することを義務づけられるのかを運航者が事前に確認することは、事実上困難だと思われます。複数の格付け基準がある場合はなおさらです。格付け基準が不確かな場合、関係者にとって、事前に計画することも、長期的な傭船契約でそのような規制に対応することも難しくなります。統一された一つの格付け基準があることによって、船舶の性能と規制の順守状況を評価する方法を関係者が確実に把握し、運航者と傭船者が同じ目標に向け計画手順を踏むことができれば、業界の利益につながります。

 

 

質問:傭船契約の締結にあたって、デュアルフューエルという選択肢は傭船者にとってどのような意味を持ちますか?

 

Prashanth:この代替燃料と各利害関係者にとっての主な検討事項については、ウェビナーで詳しくお話ししました。BHPは傭船者として、デュアルフューエル船の長期傭船契約には喜んでサインします。誰もが認めるように、ここで本当のジレンマとなるのは、未来の燃料がLNGになるのか、アンモニアになるのか、まったく違う何かになるのか誰にも予測できないことです。私たちにとって重要なことは、デュアルフューエル船の機関は未来を保証されているのか、例えば、アンモニアも使えるのか、LNGしか使えないのかを知ることです。それはそれとして、現在の市場においてデュアルフューエル船の傭船契約について検討する際にBHPが考慮すべき主な点を以下に挙げます。

 

  • 定期傭船契約か航海傭船契約か、および航行ルート。
  • 船の性能(速力、燃費)、オフハイヤーなどの傭船契約条項と、これらがBHPの商業上の負託内容にどのように適合するか。
  • バンカリングのインフラと、バンカリングにかかる時間も含めた離路の可能性。そのために特定の期間内の航海距離が通常より短くなった場合、離路費用と扱い高の減少という形で商業的損失につながる可能性があります。
  • LNG燃料の仕様。
  • 乗組員の能力が大きな問題となります。ほとんどの乗組員にとって機関と燃料が従来と異なるため、乗組員の訓練不足はBHPにとってリスクとなります。

 

Wan Jing:傭船者にとっての検討事項は、傭船契約の内容や傭船者が扱う業種によって異なります。さらに、航海傭船契約ではデュアルフューエル船の航行制限の可能性についても検討する必要があります——いずれにせよ、航路はバンカリングに利用できるインフラに大きく左右される可能性があります。デュアルフューエル船は、航路が決まっていて、船がどこに回航され、固定された航路上のどこで必要な燃料を補給できるかが確実な連続航海傭船契約(CVC)に適していると考えられます。

 

定期傭船者の視点に立つと、バンカリングのインフラが限られること以外にも検討すべき問題があります。これがすべてとは言えませんが、関係者は以下の問題について詳しく検討すべきです。

 

  • 傭船契約において、燃料をいつ切り替えるのか、速力への影響、それに対応する保証に関する仕組み。代替燃料は時間経過や供給源によってばらつきがあり、その発熱量も異なるため、船舶の速度や燃料消費率に影響が及ぶと考えられます。適切なレベルまで詳細に燃費保証を策定するには、かなりの労力を要する可能性があります。技術的に現実的な船舶の能力表示と、傭船者が船舶の価値を評価し、傭船後にその船の売り込みが行えるぐらい確実性のある保証のバランスを取る必要があります。
  • 複数の燃料の選択肢は、オフハイヤーの計算にも影響を与えることがあります。オフハイヤー期間中はどの燃料を使うべきか。選択権は傭船者にあるのか、船主にあるのか。オフハイヤー中に安価な燃料を使ったために、それ以外の航海中の燃費が上昇した場合、誰が超過コストに責任を負うのか。
  • それぞれの燃料の価格は時間と共に変化しますが、必ずしも正の相関関係にあるとは限りません。そのため、傭船契約中に傭船者がどの種類の燃料を供給する義務があり、引き渡し時と返船時にどの種類の燃料を積載し、返船時の不足分をどのように計算するのかを検討することも重要です。利用可能なインフラにより、引き渡しまたは返船の際には契約範囲内の燃料を積載していなければならないと規定する必要があるかもしれません。
  • 代替燃料の使用(さらにおそらくは運搬)を禁止するような規制変更について、船主と傭船者のどちらがリスクを負うのか。船主は、傭船者が指示した場合、いつでもどちらの燃料も消費できると保証するのか。
  • 炭素税が導入された場合、燃料が異なると炭素税への影響も異なる可能性があります。税に関する条項で必要事項をカバーしているか?

 

燃料費(税関連の費用を含む)の問題は、運賃に燃料調整係数が含まれるCVCやCOAでも発生する可能性があります。傭船者は、価格リスクをヘッジ可能なメカニズムをもって燃料費を調整したいと考えるかもしれません――しかし、その燃料が(まだ)バンカー燃料として一般的に使われていない場合は、そうしたことは難しいかもしれません。

 

 

質問:貨物輸送量が船舶のCII格付けに影響を与えると理解しています。船主が特定の航海について貨物の受入量を最小限に抑えた場合、違反行為になりますか?

 

Kunal:CII規制が発効すると、船舶運航者は、環境コンプライアンス、契約上の責務、船舶の商業的可能性のバランスを取っていく必要があります。CII格付けでは、上記のように分母の貨物輸送量の代わりに船の容積(総トン数または載貨重量トン数)を使用します。理論上は、貨物輸送量を制限すれば、浅い喫水で航行し、比較的燃料消費量が少なくなるため、CII格付けを上げる(または下落を防ぐ)ことが可能かもしれません。実際にそうすることでどれほどのメリットがあるかは不明ですが、船舶の商業面に大きな打撃を与えることは確かです。私たちは、貨物の受入量を削減するだけでは、希望する格付けは達成できないと理解しています。さらに、CII格付けには2023年から2026年まで毎年削減率が適用されるため、船主が船舶の貨物受入量を削減するだけで最低でも「C」の格付けを維持するには、はるかに大きな負担が必要になります。貨物輸送量を排出量計算の要素とするEEOIを指標として使う場合、容積利用率を最大化することが船舶にとって有利です。

 

Wan Jing:運用上は、船主が航海で実際の排出量を削減するために速力または貨物受入量を削減するのは自由です。船主の計算を基に、その両方を組み合わせてもよいでしょう。船主が貨物受入量の削減を選択した場合、定期傭船契約に基づき船舶の全区画を提供する責務に違反し、あるいは航海傭船契約に基づき輸送すべき貨物量を満たせない可能性があります。船主は、何よりも規制を順守する必要があるため、最大容積まで積載するというこれらの指示書に従う義務はないと主張することもできるでしょう。船舶が航行速度を落とし、それが船主側の違反となる場合にも、同様の主張が船主の抗弁となります。

 

前述のように、総排出量を予測し、船舶の航行パターンと輸送貨物が総排出量にどのように影響するかをモニタリングすることは難しいと予想されるため、船主は実際には困難に直面する可能性があります。総排出量は年末に計算され、年間の船舶の排出量合計を貨物輸送量および運航距離と比較します。どの航海または指示書によって排出量が増加したかを正確に判定することは難しく、特定の指示書または航海によって将来計算される総排出量が急増すると主張することはさらに困難です。

 

さらに、CII格付けが下落したからといって、たとえ船主が是正措置を講じる必要があるとしても、必ずしも船主が規制を順守していないということにはなりません。したがって、因果関係を立証すること、すなわち、航海指示書が原因で船主が国際法に基づく義務に違反することになるため船主にはこれに従わない権利がある、と立証することはかなり難しいと考えられます

 

可能であれば、契約の時点で、船舶にはどのような制限があるか、それは速度か受入量か、どのような期間にわたるものかを当事者間で明確にしておくことをお勧めします。

 

 

質問:GHG排出量の多い船舶を淘汰するのは良いことですが、BHPのような大手トレーダーは、長距離のバラスト航海を削減(それによって直ちにトンマイル当たりCO2排出量を削減)するために、どのような計画を持って三国間貿易の発展を促進しようとしているのですか?

 

Prashanth:BHPにとってこれはまだ初期段階で、他の多くの組織にとっても同じだと思われます。これは船舶ソーシング戦略の根本に関わることです。現在は商業面から決定されます。傭船契約を結ぶには弊社の商品に対する需要がなければなりません。航海傭船契約の船舶について、バラスト航海を長距離行うか、それよりも、近くの港へ向かって次の貨物を積み込むかを決めるのは船主です。

 

 

質問:船の機関のディレーティングや出力制限を行っている場合、アンダーパフォーマンスのクレームはどのように提起されますか?

 

Wan Jing:機関のディレーティングは、機関に恒久的な変更を加えて、EEXIの要件に合致するように機関出力を恒久的に低減するものです。一方、出力制限は通常スロットルレンジに解除可能な制限を加えることを指し、したがって、一時的な措置です。機関のディレーティングであれ出力制限であれ、船舶の最大航行速度にしか影響しません。規制を順守するには、船舶の運航によってCIIの要件を満たす必要があり、そのためには、例えば減速運航などが考えられます。

 

ここでの答えは、契約条項によって異なります。

 

減速運航は、必ずしもアンダーパフォーマンスのクレームの対象になるわけではありません。減速運航でも最低保証速度に達している可能性はあります。しかし、CII格付けを達成するために最低保証速度を下回る速度で航行する必要がある場合、アンダーパフォーマンスのクレームが生じる可能性があります。例えば、船が傭船契約に基づき13ノット以上で航行することが保証されている場合、その速度で航行しないと、傭船契約で規定された保証条項に対する違反となります。

 

船主は、船は回転数(RPM)を落として航海しており、RPMを落とした場合に適用される速度保証はないことから、落としたRPMに照らして傭船者が船舶の性能を測定する必要があると主張するかもしれません。保証は一切適用されないという主張がある場合、アンダーパフォーマンスのクレームには航海ごとの技術評価または専門家の評価が必要となる場合があります。

 

傭船者による過去の命令の結果として、規制を順守するために減速が必要だと仮定すると、そのアンダーパフォーマンスは過去に行われた航海の直接の結果であるのでクレームは不可能だと、船主が主張する可能性があります。このことから、問題は長期傭船契約と短期傭船契約でまったく異なると考えられます。長期傭船契約の場合、傭船者は、再傭船契約の保証条項に含めることができるよう、性能制限に関する確かな情報を船主から提供してもらう必要があります。長期傭船契約の性能保証では、過去の傭船者の命令の結果として必要になる運航速度の調整についても規定する必要があるかもしれません。性能保証、そして傭船契約の構成も、将来的には大幅に改訂する必要があると考えられます。

 

 

質問:BHPは「ジャストインタイム(JIT)」条項(荷揚港が混み合っている場合に傭船者に減速航行を命じる権利を与える条項)の導入を検討していますか? 検討していないとしたら、その理由は、現在は着船まで荷揚港で順番待ちの列に加わることができないからですか?

 

Prashanth:確かに、船が着桟待ちの間、錨地で長時間過ごすことは環境に良いとはいえません。船のオペレーショナルリスクも高まりますし、利害関係者にとってコストがかかることも確かです。ここ数年で、BHPは傭船の錨地における平均滞留時間を数日削減することができています。JIT条項に関して、不都合な事実、あるいはBHPのような傭船者にとっての難題は、港湾の運営者ではないため、船舶の順番待ちに対してあまり影響力がないことです。BHPは既にこのプロセスを合理化するために港湾やターミナルと連携しており、クライアントや船主とも同様の話し合いができたらと考えています。

 

 

質問:ある船主は、EEXIを順守するため、解決策として機関出力制限(EPL)の選択を考えています。しかし、RightShipはこのようにGHG評価のために機関出力を大幅に低減することを認めていません。このような場合、船主がEEXIGHG レーティングの両方をクリアする(F格付けを上回る)にはどうしたらよいでしょうか。

 

RightShip:RightShipにはEPLの容認基準があり、こちらに掲載されています。現在も容認基準は有効ですが、私たちがEPLを制限する理由は、船主と運航者が基本的にEEXIの前提条件であるEPLだけに頼るのではなく、市場のイノベーションを促進するためです。RightShipの目標は、EPLが「唯一の仕組み」と見られるのではなく、市場と協力してCO2を削減する革新的な手段を開発することにあります。私たちがEPL基準を導入して以来、風力、Mewis Duct、PBCFなど、EPLだけでなく他の種類の省エネ装置に向かう大きな動きが起きています。これは、私たちのプロセスと仕組みが機能し、市場をより革新的な成果へと向かわせている証拠です。

 

 

質問:温室効果ガス排出量に関する要求を守るために、BHPの事業費は増加すると予想していますか?

 

Prashanth:BHPは、脱炭素の推進によって事業費が増加するとは考えていません。LNG燃料船を例にとると、CAPEX(設備投資)が増加することは間違いありませんが、OPEX(事業費)の削減によって相殺され、さらに高圧機関であれば燃費と共にGHG排出量が大幅に減少します。また、詳しくは述べませんが、市場にはコスト増を吸収するメカニズムが組み込まれています。事業費だけに着目することは正しいアプローチではないとお話ししておきます。企業は、評判への影響、株主の考え方、規制の変化、利用可能な市場ベースの指標なども考慮すべきです。

 

 

質問:BHPのスコープ3の排出量目標は、主に技術の進歩によるものか、それともカーボンオフセットと新造船の設計・運航面の技術の進歩の組み合わせによるものか関心があります。

 

Prashanth:スコープ3の排出量は、弊社の運用資産の外で発生するものであり、私たちが運用統制できない排出量ですが、そのうちいくつかの要素に影響を与えることはできます。弊社のスコープ3排出量の大部分は、製品の加工と使用、特に製鋼によるもので、製品を輸送する船舶による排出量はごくわずかな部分です。BHPのような傭船者にとって、カーボンオフセットの使用は確かに一つの選択肢ですが、BHPは、それは最後に検討すべき選択肢の一つだと考えています。BHPは、サプライチェーン全体で実際の排出量を削減するべく努めており、傭船については、航海の最適化と併せて船舶の設計と機械装置に注目しています。したがって、気候目標を達成するためのソリューションの組み合わせに目を向けるつもりです。また、BHPは船主と協力してバイオ燃料やLNGなどの代替燃料を試験する措置も講じており、さらに炭素削減を達成するソリューションを探求するため、MPAなどの組織と共にシンガポールにおける海事脱炭素センターの設立にも積極的に参加しています。

 

 

質問:BHPは、アップグレードの費用を補うため船主に支払われる価格を引き上げることに賛成ですか?

 

Prashanth:ウェビナーのまとめで述べたように、社会的に責任があり、商業的に実現可能なビジネスモデルでなければ、持続可能ではありません。炭素やその他の温室効果ガスを削減するために新しい技術や燃料への投資を検討していない船主は、今後数年のうちに間違いなくビジネスの機会を逸するでしょう。BHPは、持続可能性と商業的な取り組みは一体で行うべきだと考えています。現在はグリーンな船舶はプレミアム商品として扱われていますが、数年以内にそうではなくなるでしょう。

 

 

まとめ

 

GHG削減は、海運業界が直面する、ここ数十年で最大の課題となる可能性があります。ウェビナーでは、船主と傭船者が直面する技術的、法律的、商業的問題のごく一部に触れましたが、まだ道のりは始まったばかりです。

 

GHG削減要件を順守することは、技術資源の観点からも、必要となる設備投資の点からも簡単ではありません。当面は、船主は既存のフリートをIMOおよび傭船者の環境調査要件に適合させることに集中する必要があります。EEXIの要件を順守するには、事業運営の変更や装置の更新が必要になる可能性があります。6月中旬のMEPC 76で、CII格付け制度の一部が明らかになりましたが、規制が発効した後のCIIの適用とモニタリングについては問題点があります。船主と傭船者は、どの戦略が長期的に利益をもたらすと見込まれるかを判断しようと、既に新しい燃料や技術に注目しています。これらは簡単な決定ではなく、これらの燃料と技術を搭載した新しいグリーンな船を建造するために多額の設備投資が必要になります。コンプライアンスの技術的、財務的なニーズは、中小の事業者に大きな負担となる可能性が高く、企業統合の動きが広がると見る向きもあります。

 

既存の標準傭船契約が適切かどうかについても問題があります。少なくとも、GHGコンプライアンスに関するいくつかの商業的問題に対応するため、修正と詳細な条項が必要となります。しかし、業界には、船主に「速く航行し早く到着する」ことを奨励する既存の標準傭船契約が、GHG排出量削減が最優先という環境において目的に適合するのか疑問を呈する向きもあります。

 

最後に、規制環境は不変のものではありません。船舶に対し、排出特性に基づき追加的な税を課す地域炭素税制度が次々に現れています。これらに伴う追加コストは大きく、船主の業界団体から強い反発が起きています。今後は、これらのコストに商業的に対処する方法について、船主と傭船者の間で協議されることも予想されます。Gardは、これらの動向について最新の情報を積極的に収集し、メンバーの皆さまに継続的に情報提供を行ってまいります。

 

 

BHPPrashanth Athipar氏には、ウェビナーへの参加と記事へのご協力を感謝いたします。

 

また、英国造船学会(RINAIMO委員会委員長のEdwin Pang氏とRightShipKris Fumberger氏には、貴重な情報をいただいたことに感謝いたします。

ほかにもGardの各部署から多くの方に協力いただきましたが、特にGard Asia Loss PreventionエグゼクティブのSiddharth Mahajanには、ウェビナーと本インサイトの内容への多大な貢献に感謝いたします。

 

 

ウェビナーへのリンク

 

アジア、ヨーロッパ、中東、アフリカを対象とした最初のウェビナーへのリンクはこちらです。スペシャルゲストのBHPのPrashanth Athipar氏に、Gard SingaporeのスピーカーとしてGard Charterers & Tradersチームの弁護士Wan Jing Tan、Gard Asia Loss PreventionチームのマネージャーKunal Pathakが加わりました。Gard SingaporeマネージングディレクターのJohn Martinが導入部を、Charterers & Tradersクレーム担当バイスプレジデントのCraig Johnstonが司会を担当しました。

 

南北アメリカを対象とした第2回ウェビナーへのリンクはこちらです。Prashanth Athipar氏にはシンガポールとの時差にもかかわらずご参加いただきき、Gard North AmericaのスピーカーとしてCharterers & Tradersチームの弁護士でシニアクレームアドバイザーのKunbi Sowunmi、Gard New Yorkクレーム担当弁護士でシニアクレームアドバイザーのFrank Gonynorが加わりました。Gard North AmericaマネージングディレクターのPatrick Michael Leahyが導入部を、アーレンダールのGard本社Charterers & Traders引受担当バイスプレジデントのTerri Jayが司会を担当しました。

 

 

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