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海上労働条約では、船員が雇用主によって遺棄された場合でも賃金、保護、送還が保証されるよう定めています。ただ、Eide Trader号のケースから、遺棄された船員を実際に送還するのはハードルが高いことも分かりました。

こちらは、英文記事「MLC support for abandoned seafarers – theory and practice」(2021年6月23日付)の和訳です。

2006年海上労働条約(MLC)では、条約批准国の船籍を持つ船舶で働く全ての船員に対する最低限の労働・居住条件を定めているほか、船員が船主に遺棄された場合の保護も求めています。同条約では、雇用主である船主が船員の送還費用を負担しない場合、必要な扶助および支援なしに船員を放置した場合、または、契約上の賃金を2か月以上支払わないなど当該船員との関係を一方的に断絶した場合に、船員が遺棄されたとみなしています。船員遺棄が起きるのは、船主が破産して賃金を支払えなくなった場合がほとんどで、ひどいときには、船やそこで働く船員に対する一切の責任から逃れようとするケースもあります。

 

保険対象となっている船舶の船員が遺棄された場合、Gardには船員に対して金銭的な保証を直接行う責任があります。船内への必要十分な食料の提供、船員の送還、4か月分を上限とする未払い賃金の支払いを行い、船員を積極的に支援します。これまで実際に発生したケースでも、状況の取りまとめを行ったり、船員に対する責任をきちんと果たすよう船主への働きかけを行ってきたりしました。

 

 

ようやく帰国できることになったEIDE TRADER号の船長と船員たち

船舶と船員が遺棄されるケースは増加の一途をたどっており、なかには、何の支援もないまま船員たちが何か月や何年も船に取り残されるケースもあります。Eide Trader号の場合は、2020年にアラブ首長国連邦のシャルジャ港で乗組員14名が遺棄されました。同年10月には9名を送還することに成功しましたが、船長を含む残りの5名については、船を無人にすることは認められないとして港長の許可が下りなかったため、船内に留まらざるをえませんでした。

 

こうした状況は精神的な負担を強いるもので、非人道的です。Gardは船員と密接な関係を築き、燃料油や物資など引き続きの船内生活に必要なものがきちんと提供されるようにするだけでなく、健康管理をサポートし、一人一人の要望に応えられるようにもしました。必要なものが買えるようポケットマネーを渡したり、クリスマスにチョコレートを支給したり、船長に定期的に電話をして連絡を絶やさないなど方法は色々ありますが、大切なのは援助と連絡を続けることです。業務時間外の対応が必要なこともよくあります。

 

Gardは、残りの船員が下船できるよう当局へ圧力をかけ続ける役割も担い、組合やコンサルタント、代理店などの関係各所と綿密に連携しながら下船に向けた活動を進めました。そして、2021年2月11日に全員が下船、帰国することができました。

 

MLCの遺棄条項は、船員が港で長期間身動きが取れなくなることを防ぐために盛り込まれたものです。ただ残念ながら、Eide Trader号のようにうまくいくケースばかりではありません。Gardとしては、実際に事件が起きてから対処するだけでなく、問題が起きないよう根本から解決することが必要だと考えており、国際P&Iグループと協力しながら問題解決に取り組んでいます。

 

MLCの証書の詳細については、Gardトピックページをご覧ください。また、国連グローバルコンパクトに関する取り組みの一環として、船員に代わってGardが行っている活動の詳細については、Gard2021年版サステナビリティレポートをご覧ください。