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燃料油の品質に関する紛争はよくあることです。当事者は、供給された燃料油が規格に適合したものであるかどうかを判断するために共同でサンプル検査を行うことに合意していることが多く、その検査の結果は当事者を拘束することになります。たとえ合意がない場合でも、燃料油サンプルは紛争の解決に役立つ可能性のある適切な証拠となるでしょう。そこで問題となるのが、検査に使用するサンプルは、バンカーバージで採取したサンプルか、それとも本船側のマニホールドで採取したサンプルかという点です。

こちらは、英文記事「Take your own bunker samples - they are a vital piece of evidence」(2021年5月13日付)の和訳です。

 

船主がマニホールドサンプルの使用を希望していたとしても、そうしたサンプルが採取されていなかったり、採取されていたとしてもバンカーデリバリーノート(BDN)にシール番号が記載されていなかったりすることがあります。シール番号の記載がない場合はサンプルの有効性が争われる原因となります。

 

問題点

サンプル採取

MARPOLサンプルをその他のサンプル(すなわち、商用サンプル)と区別することが重要です。MARPOLサンプルの採取箇所については規則がありますが、商用サンプルにはそのような規則がありません。そのため、商用サンプルの採取箇所は当事者の決定に委ねられています。

 

バンカーサプライヤーはおそらくバージからサンプルを採取することを望むでしょう。一方で船主は一般的には本船のマニホールドからサンプルを採取することを望むでしょう。船主にしてみれば、バンカーバージで採取されたサンプルが実際に供給される燃料油の標本ではないという懸念があるのでしょう。Gardでもバージサンプルが同一性の検査で不合格となったケース、すなわち、バージサンプルが実際に供給された燃料の標本ではなかったケースをいくつか取り扱っています。現在、Covid-19の流行により、多くの港で制限が設けられており、バンカーサプライヤーは本船でのサンプル採取プロセスに立ち会えません。このため、バンカーサプライヤーはこれまで以上にバンカーでのサンプル採取を強く求めるようになっており、サンプル採取に関する問題を難しくしています。また、定期傭船者も、本船のサンプルを使用することについて同意することを避けたいと考える可能性があります。これは、バンカーサプライヤーに本船のサンプルを使用するよう説得することが難しいためです。

 

バンカーデリバリーノート(BDN

 

BDNに記録されたサンプルの意義は、どこで採取したものかということよりも、採取されたものが何かを記録したものであることです。そして、契約では、BDNに記録されたものだけが適切なサンプルと見なされる可能性があります。

 

IMO規則には、BDNにシール番号を記載することを義務付ける規定はありませんが、推奨事項として、MEPC.182(59)とMEPC.1 / Circ.875 /Add.1に記載があります。ただし、MEPC.182(59)がMARPOLサンプルのみを対象とし、「シールの詳細を相互に参照しやすくするために、識別情報をBDNに記録することもできる」としているのに対し、MEPC.1 / Circ.875 /Add.1は、すべてのサンプルを対象とし、より強い表現で「サンプルシールの詳細をBDNに記録するべきである」としています。

 

商用サンプルに関するガイダンスと国際規格

 

IMO(国際海事機関)は、サプライヤーが従うべきベストプラクティスに関するガイドラインを発行しています。同ガイドラインでは、サンプルは本船側のマニホールドで採取するよう定められています。また、規格としてはISO 13739もありますが、この規格には複数のバージョンがあり、サンプルの採取箇所に関する要求事項が異なります。どのバージョンが適用されるかは、使用しているISO 8217規格のバージョンにより異なります

 

  • ISO 8217 2005年版はISO 13739 1998年版を適用しており10.4.3項で次のように記載しています。「実務上の理由から、サンプルを採取する箇所は、バンカータンカーのデリバリーホースの端が望ましい。(中略)契約当事者間で相互に合意している場合は、本船のデリバリーホースの端など、他のサンプル採取箇所を適用できる」
  • ISO 8217 2010年版はISO 13739 2010年版を適用しており、採取位置が若干異なります。9.2.2項で次のように記載されています。「自動サンプリング装置または連続ドリップサンプリング装置を用いて、バンカーホースのいずれかの端から、補給中に単一のサンプルを連続的に採取するものとする。MARPOL 73/78条約附属書VIの遵守を判定するための燃料油試料採取に関するガイドラインでは、サンプルは燃料油を受領する本船のインレットバンカーマニホールドで、サンプリング装置を用いて採取することになっている」
  • ISO 8217 2017年版が適用するISO 13939は、年号の記載がありません。このような場合は、ISO 13739 2020年版(またはそれ以降のバージョン[新たに発行された場合])が適用されます。ISO 13739 2020年版では、入港国側がこれとは逆の要求事項を定めていない場合は、代表サンプルの採取を本船側のマニホールドで行うよう求めています。

 

推奨事項

 

  • 契約:ISO 13739には複数のバージョンがあります。これらの違いを把握し、自分のニーズに合ったものを適用することが重要です。そのためには、船主と傭船者が十分に話し合うことが必要です。Gardでは、ISO 13739 2020年版の適用を推奨しています。
  • バンカリング前の打ち合わせ:毎度バンカリング作業の前に、傭船者やサプライヤー(バンカーバージ)と、サンプルの採取方法を明確化してください。意見の齟齬がある場合は、指示を仰ぐようにしてください。Intertanko(国際独立タンカー船主協会)が、サンプル採取箇所について言及した「バンカーサプライヤーの責任に関するチェックリスト(要ログイン)」を作成していますので、こちらをバンカー調達指示書に盛り込むこともご検討ください。また、船主は、現地代理店を通じて、その港での燃料油サンプル採取に関連する規制・慣行について情報を入手しておくようにしてください。
  • 補油作業中と補油作業終了後:

 

    • バンカーバージが代表サンプルの採取に関するベストプラクティスに従っていない場合は、傭船者に直ちに通知する必要があります。これとは別に、本船の乗組員は自らサンプルを採取し、封印する必要があります。
    • BDNにシール番号を記載するよう努めてください。また、IMOがMEPC.1/Circ.875で指摘しているように、本船がベストプラクティスに従ったことを示す証拠として、写真やビデオを証拠として保持するようにしてください。これらについては、必要に応じて傭船者と共有してください。
    • 本船の乗組員による抗議:本船が事前に合意した契約内容にそぐわないBDNに署名するよう求められている場合は、指示を求めてください。バージ側のマニホールドでサンプルを採取する以外に選択肢がまったくない場合、または本船の乗組員が本船のサンプルのシール番号をBDNに記載できない場合は、抗議文書を発行することで、後々の証拠にできます。また、船主は、船主がバージサンプルに法的に拘束されることを受け入れない旨、傭船者に通知する必要があります。
    • 当局に通知する:MARPOLサンプルが本船側のマニホールドから採取されていないなど、定められた要件を満たしていない場合、船主はその事実を旗国や入港国に報告することが推奨されます。報告を受けた当局は、IMO GISIS(国際総合海運情報システム)プラットフォームにその情報をアップロードすることになっています。

 

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