燃料油の品質に関する紛争はよくあることです。当事者は、供給された燃料油が規格に適合したものであるかどうかを判断するために共同でサンプル検査を行うことに合意していることが多く、その検査の結果は当事者を拘束することになります。たとえ合意がない場合でも、燃料油サンプルは紛争の解決に役立つ可能性のある適切な証拠となるでしょう。そこで問題となるのが、検査に使用するサンプルは、バンカーバージで採取したサンプルか、それとも本船側のマニホールドで採取したサンプルかという点です。
25 MAY 2021
こちらは、英文記事「Take your own bunker samples - they are a vital piece of evidence」(2021年5月13日付)の和訳です。
船主がマニホールドサンプルの使用を希望していたとしても、そうしたサンプルが採取されていなかったり、採取されていたとしてもバンカーデリバリーノート(BDN)にシール番号が記載されていなかったりすることがあります。シール番号の記載がない場合はサンプルの有効性が争われる原因となります。
問題点
サンプル採取
MARPOLサンプルをその他のサンプル(すなわち、商用サンプル)と区別することが重要です。MARPOLサンプルの採取箇所については規則がありますが、商用サンプルにはそのような規則がありません。そのため、商用サンプルの採取箇所は当事者の決定に委ねられています。
バンカーサプライヤーはおそらくバージからサンプルを採取することを望むでしょう。一方で船主は一般的には本船のマニホールドからサンプルを採取することを望むでしょう。船主にしてみれば、バンカーバージで採取されたサンプルが実際に供給される燃料油の標本ではないという懸念があるのでしょう。Gardでもバージサンプルが同一性の検査で不合格となったケース、すなわち、バージサンプルが実際に供給された燃料の標本ではなかったケースをいくつか取り扱っています。現在、Covid-19の流行により、多くの港で制限が設けられており、バンカーサプライヤーは本船でのサンプル採取プロセスに立ち会えません。このため、バンカーサプライヤーはこれまで以上にバンカーでのサンプル採取を強く求めるようになっており、サンプル採取に関する問題を難しくしています。また、定期傭船者も、本船のサンプルを使用することについて同意することを避けたいと考える可能性があります。これは、バンカーサプライヤーに本船のサンプルを使用するよう説得することが難しいためです。
バンカーデリバリーノート(BDN)
BDNに記録されたサンプルの意義は、どこで採取したものかということよりも、採取されたものが何かを記録したものであることです。そして、契約では、BDNに記録されたものだけが適切なサンプルと見なされる可能性があります。
IMO規則には、BDNにシール番号を記載することを義務付ける規定はありませんが、推奨事項として、MEPC.182(59)とMEPC.1 / Circ.875 /Add.1に記載があります。ただし、MEPC.182(59)がMARPOLサンプルのみを対象とし、「シールの詳細を相互に参照しやすくするために、識別情報をBDNに記録することもできる」としているのに対し、MEPC.1 / Circ.875 /Add.1は、すべてのサンプルを対象とし、より強い表現で「サンプルシールの詳細をBDNに記録するべきである」としています。
商用サンプルに関するガイダンスと国際規格
IMO(国際海事機関)は、サプライヤーが従うべきベストプラクティスに関するガイドラインを発行しています。同ガイドラインでは、サンプルは本船側のマニホールドで採取するよう定められています。また、規格としてはISO 13739もありますが、この規格には複数のバージョンがあり、サンプルの採取箇所に関する要求事項が異なります。どのバージョンが適用されるかは、使用しているISO 8217規格のバージョンにより異なります
推奨事項
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