Rate this article:  

米国連邦控訴裁判所が下した最近の判決により、ニューヨーク仲裁条約に従い包括的仲裁条項を強制できる可能性と、米国の付随的禁反言の法理に基づき、一定の状況下において合意の当事者でない者にその仲裁条項を適用できる可能性が補強されました。この判決は、商業契約内の外国の準拠法の選択と仲裁条項の強制をさらに後押しするものです。

こちらは、英文記事「Broad foreign arbitration clauses are enforceable in the US」(2021年4月22日付)の 和訳です。

第11巡回区連邦控訴裁判所(米国のいくつかある地域連邦控訴裁判所のうちの1つ)は、メガヨットの売買契約に従って行われた手数料請求に関する最近の判決において、ニューヨーク仲裁条約に従い国際契約の包括的仲裁条項を強制できる可能性と、米国の付随的禁反言の法理(doctrine of collateral estoppel)に基づき、一定の状況下において合意の当事者でない者に当該仲裁条項を適用できる可能性を補強しました。同裁判所は、原告が自身の請求を契約上の請求ではなく不法行為上の請求であるとすることにより仲裁条項を回避しようとする試みを却下しました。仲裁に関する問題をめぐる米国連邦裁判所と州裁判所の違いを十分に踏まえると、そうした請求が最初に州の裁判所に提起された場合には、可能であれば移送することが望ましいことになります。この判決は、ニューヨーク条約に基づく請求の移送可能性を認容しています。判決は、Northrop and Johnson Yacht-Ships Inc. v. Royal Van Lent Shipyard BV and Feadship America Inc.事件と称され、2021 U.S. App. LEXIS 8797で報告されています。

 

手続きの経緯と基礎をなす請求

 

請求はもともと、ヨットのブローカーであるNorthrop and Johnson Yacht-Ships Inc.(以下、「N社」)が、オランダのヨットメーカーであるRoyal Van Lent Shipyard BV(以下、「R社」)とその米国販売代理店であるFeadship America Inc.(以下、「F社」)を相手取って、フロリダ州で提起したものです。R社とF社は、外国仲裁判断の承認及び執行に関する国連条約(ニューヨーク条約)の適用可能性を主張して、請求をマイアミの連邦裁判所に移送しました。両者は、主張されているすべての請求(契約上および不法行為上の申立てを含む)には、ブローカーとヨットメーカーとの間の代理店手数料契約に盛り込まれているオランダの仲裁条項が適用されるとも主張しました。連邦下級裁判所は、これに同意して、訴え却下の申立てを認め、仲裁を行うよう求めました。これを受けて、原告は第11巡回区連邦控訴裁判所に控訴し、同裁判所が下級審判決をあらためて最初から見直しました。

 

控訴裁判所の判決

 

控訴裁判所は、2021年3月26日に出された全員一致の意見において、下級審の判決を支持しました。その意見は、まず、基礎となる代理店手数料契約に「本契約に起因または関連する紛争は、オランダ仲裁協会(NAI)の仲裁規則に従って最終的に解決されるものとする」という仲裁条項が含まれていることに注目しました。その意見では、「ニューヨーク条約を解釈した米国裁判所の判決はおおむね、同条約は、締約国の裁判所に対し、私的な仲裁合意を有効とし、かつ他の締約国で出された仲裁判断を執行するよう求めていること」、そして、「そのような請求は州裁判所から連邦裁判所に移送することができること」が改めて示され、さらに、米国とオランダはいずれも同条約の締約国であることを指摘しています。

 

控訴審での争点

 

ブローカーのN社は、控訴審では、仲裁合意があったか否かを再び争い、この争点が控訴裁判所による分析の焦点となりました。N社は、代理店手数料契約は最初のヨット1艇の販売に関してN社に支払われる手数料のみを定めたものであって、2艇目のヨットの建造に関して支払われる手数料についてのものではなく、また、訴訟の基礎をなすのは後者であり、したがって請求は仲裁条項の範囲外で発生したと主張しました。N社はまた、F社は代理店手数料契約の署名当事者ではないので仲裁条項を援用することができないと主張しました。

 

ニューヨーク条約を適用するための管轄要件

 

下級審判決を認容するにあたり、控訴裁判所はまず、管轄に係る4つの前提条件が満たされていれば仲裁合意は条約の適用対象であるという一般原則を改めて示しました。


 

 

  1. 条約の意義の範囲内で書面による合意があること。
  2. 合意は、条約の締約国の領域内での仲裁を定めていること。
  3. 合意は、契約に基づくものであるかどうかを問わず、商事と認められる法律関係から生じたものであること。
  4. 合意の当事者が米国民でないこと、または商取引関係には、1もしくは複数の外国と何らかの合理的な関わりがあること。

 

仲裁を支持する強い推定

 

その上で、控訴裁判所は、ニューヨーク条約と、ニューヨーク条約を適用した最高裁判所と第11巡回区裁判所の先例によると、自由な交渉が行われた契約上の準拠法の選択と法廷地の選択に関する条項を支持する強い推定が働き、この推定は、特別な効力をもって国際通商の分野において適用されると指摘しました。控訴裁判所は、これに続けて、米国の裁判所は本事案のように「合意に起因または関連して生じるすべての紛争」を対象とする条項は広義に解釈すべきであると一貫して判示していると述べています。そして、同裁判所は、問題の仲裁条項はN社のすべての請求を対象としており、提供役務相当金額の請求、不法な妨害、不当利得という不法行為上の請求でさえ、当事者間の合意の本質であって、まさに仲裁条項の範囲に該当すると結論づけました。同裁判所は、N社は契約違反の請求ではなく衡平法上の不法行為の請求を提起することによって自身が署名した契約の明示の条件を回避しようとすることはできないと判示しました。

 

付随的禁反言による当事者でない者への適用可能性

 

控訴裁判所はまた、F社は代理店手数料契約の当事者でなかったことから、下級審がF社による仲裁条項の援用を認めたのは誤りであったというN社の主張を認めませんでした。裁判所は、米国法上は、原告たる当事者がその請求を主張するにあたり書面による合意の条件に依拠しなければならない場合、または原告たる当事者が、当事者および当事者でない者による実質的に互いに依存し協調する違法行為を主張しており、そのような違法行為が、基礎となる合意の義務に基づくものであるか、またはかかる義務と密接に関係している場合には、仲裁合意の当事者でない者でも、衡平法上の禁反言の法理(doctrine of equitable estoppel)により、仲裁を強制することができる旨を改めて示しました。控訴裁判所は、米国最高裁判所がこの2020年にGE Energy Power Conversion France SAS Corp. v. Outokumpu Stainless USA LLC事件において、ニューヨーク条約は国内の衡平法上の禁反言の法理の適用を禁じていないと指摘しました。その上で、控訴裁判所は、互いに依存し協調する違法行為であって、代理店手数料契約の明示の義務に違反するとされるものがR社とF社 の間で行われたとブローカーが主張していることを考慮して、F社は、衡平法上の禁反言という2つ目の理論により、代理店手数料契約の仲裁条項を援用することができると判示しました。

 

まとめ

 

控訴裁判所の判決は、重要な意味を持つと私たちは考えます。なぜなら、この判決は、包括的に書かれた仲裁条項の強制可能性を補強するものであるとともに、当事者は申立てを契約上のものではなく不法行為上のものとして行うことによりそのような包括的に書かれた仲裁条項の回避を図ることはできないことを改めて示したものであるからです。

 

この判決は、「ニューヨーク仲裁条約は、基礎をなす合意の当事者でない者について、一定の状況下で仲裁を強制するために、米国の裁判所が衡平法上の禁反言の法理を適用することを妨げるものではない」と判断した最近の米国最高裁判所判決を適用した点においても重要です。

 

この判決は、ニューヨーク条約に従い、訴状送達から30日以内に、訴訟を州裁判所から連邦裁判所に移送し、連邦裁判所に仲裁の強制を申し立てることが望ましいという助言を裏付けるものでもあります。

 

本記事は、海事法を専門とする法律事務所De Leo & Kuylenstierna(フロリダ州マイアミ)のCharles De Leo弁護士とRyon Little弁護士からの情報に基づいて作成したものです。