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この数週間、Gardに加入している複数の船舶が、当局から必要な許可を受けずに東ジョホール沖の領海で錨泊していたとして、マレーシア海上法令執行庁(MMEA)によって拘束され、罰金を科される事件が発生しています

こちらは、英文記事「Reminder - Anchoring in Malaysian Waters off East Johor」(2021年4月27日付)の
和訳です。

情報筋によれば、このところマレーシア当局は「Jangkar Haram(不法錨泊)」という名の特別作戦を実施中であり、マレーシア海事局長から事前に書面での許可を得ずに東ジョホール沖の領海で錨泊していた船舶が拘束の標的にされているとのことです。

 

東ジョホール沖のマレーシア領海の範囲

 

Gardが取り扱ったほぼ全ての事件において、船員が錨泊中の場所をマレーシア領海の外だと誤解していました。GardのコレスポンデントであるSpica社が先日発行したサーキュラーでも報告されていますが、この海域はシンガポールの東側港外錨地(OPL)とされることもあれば、時には公海とされることさえあります。

 

 マレーシア領海の範囲を定めているのは2012年領海法(TSA)と呼ばれる法律です。そして、船舶がマレーシア領海へ入域したかを判断する際にMMEAとマレーシア海事局が用いているのが、「1979年領海・大陸棚地図」です。本件については2012年にGard Alertで度々取り上げており、そのうちの1つにこの地図を掲載しています。あくまで船舶が拘束された海域を紹介するのが目的ですが、ここにその地図を再掲します。地図上の青く塗られた部分がその海域です。この海域は商船で通常使われている海図には記されていないため、船員の間でもはっきり認識されていません。つきましては、この「1979年領海・大陸棚地図」の複写を現地代理店から入手しておくことをお勧めします。

 

1952年商船令と1953年連邦灯台税法

MMEAによる最近の拘束はいずれも、1952年マレーシア商船令(Malaysian Merchant Shipping Ordinance 1952)(MSO)の第491B(1)項を根拠に行われています。同項では、船舶は「マレーシア領海内で各種活動を行う際には、その活動について海事局長に必ず通知しなければならない」と定められています。また、同項の関連条項である491(1)(l)項はスウィープアップ条項(網羅規定)となっており、「海事局長が定めた以外のいかなる活動」にも活動の承認を得なければならないと定めています。文言の意味するところが広く、異議を唱えるのが難しい条項です。

 

この「その他のいかなる活動」の定義を明確にする目的で、マレーシア海事通知05/2014号が公布されており、「係船」、「溶接およびその他の高温作業」、「錨泊地でない区域での錨泊」、「あらゆる水中作業」が含まれることになりました。この通知があることから、船舶が拘束されても、船主は「錨泊に際して許可が必要だとは知らなかった」と主張しづらくなっています。

 

またこれまでには、灯台税(light dues)を支払っていないとしてMMEAに拘束された船舶もありました。1953年連邦灯台税法(Federation Light Dues Act 1953)の第3(1)項は、マレーシア半島内の港や場所を訪れるすべての船舶の船主や代理店、船長に対して、灯台税を支払うよう求めています。

 

拘束および船員への事情聴取

船舶が拘束されると、次のような流れでMMEAによる調査が行われることが予想されます。

  1. 事情聴取のため、船長および一等航海士/機関長がMMEAの事務所に連行される。
  2. それぞれの資格や経験、航海の詳細、その場所で錨泊した理由などについての質問を受ける。
  3. 船員のパスポートや船の書類も差し押さえられる。

解放に向けた対応には、マレーシアの現地代理店の起用が必要となるでしょう。MMEAの調査官が事情聴取を行う際には、代理人(現地代理店、コレスポンデント、弁護士)を船員に同伴させることをお勧めします。代理人が現地の人であれば、調査官の質問を英語に翻訳してもらえますし、当局への対応も代わりに行ってくれるでしょう。

調査にはどんな場合でもだいたい1~3日はかかり、時にはそれより長くなることもあるので、代理店を介して船長らの宿泊場所の手配が必要になることもあるかもしれません。

 

船舶の解放

事情聴取が終わると事件はMMEAから海事局に引き渡され、船舶の解放のため、おそらく治安判事の前での審問日程が組まれることになります。審問には通常、弁護士を代理人に立てます。船舶の解放には、刑事訴訟法(CPC)の第413項に基づき保釈金の支払いを求められるでしょう。保釈金

は、船舶の解放を求める船主が支払い、これが後日決定される罰金や示談金の担保となります。裁判所が指名した保釈保証人(通常は現地代理店)を名義人として開設した口座から定期預金の形で支払います。

保釈金が支払われ船舶書類が船に戻ってきたら、船舶は解放されます。責任を認めて示談金を支払う、つまり、起訴内容の責任を認める代わりに減額された罰金を支払うか、または起訴内容について争うかの決断はその後でかまいません。1つの犯罪に対する罰金の最高額は10万リンギット(約24,000米ドル)です。

解放までには全部で数日から数週間かかります。

 

推奨事項

  • 現地代理店を通じて「1979年領海・大陸棚地図」の複写を本船に用意しておきましょう。
  • 「1979年領海・大陸棚地図」で領海とされている場所で錨泊する場合、マレーシアの現地代理店を起用しましょう。
  • 錨泊する旨の連絡を事前に海事局長に行い書面での許可をもらっているか、船員から現地代理店に必ず確認してください。
  • この種の罰金はGardのクラブルール第47条ではてん補されず、P&Iカバーの対象外となるおそれがあります。ですが、このような拘束・拘留の場合にもGardがサポートいたしますので、ぜひご連絡ください。

 

本Alertは、Joseph & Partners法律事務所のJeremy Joseph氏およびMatthew Van Huizen氏からの情報に基づいて作成したものです。