Rate this article:  

 

動画へのリンクはこちら

この数年、ブラジルから中国向けにばら積み輸送された大豆が損傷したという大型クレームが急増しており、船主やP&Iクラブは、船舶の拘留や保証要求を受け、結果的に巨額の保証状を発行する事態に見舞われています。ただ、このようなクレームの原因となった損傷は、貨物の微生物学的不安定性とそれによる自己発熱が原因である場合がほとんどです。3回シリーズでお届けする動画の初回となる今回は、Brookes Bell社のCargo ScientistであるTim Moss博士に微生物学的不安定性の原因とその影響について解説していただきました。

こちらは、英文記事「Microbiological instability in soya bean cargoes」(2021年3月4日付)の和訳です。

Moss博士の解説にもあるように、大豆は他の全ての穀物と同様にカビの胞子を持っており、その胞子は特定の条件下で成長します。大豆を貨物として安全に輸送できる時間は、積み荷役時の大豆の水分量と温度が高いほど短くなります。Proinde社発行の実用ガイドによれば、ブラジルの港から中国の港までの航海日数は35~45日。一方、欧州中部の場合なら14~20日で到着する、とあります。博士の言うように、ともに売買契約で定められた規格を満たしている商品であったとしても、欧州が仕向地であれば損傷なく輸送できますが、中国が仕向地の場合は安全に輸送できる時間を超えてしまうおそれがあるのです。

損傷の原因が微生物学的不安定性の場合、損害は船主が負担するものではありません。その損傷は不可避であり、貨物自体の本来の特性に起因するものだからです。中国はヘーグ・ヴィスビー条約の加盟国ではありませんが、中国海商法でもこれを固有の瑕疵(inherent vice)による免責として確かに認めており、貨物を適切に管理した旨を立証する責任が運送人にあるとするヘーグ・ヴィスビー条約の原則に倣っています。ただ、これまでの中国の裁判所の判例を見る限り、微生物学的不安定性により貨物の損傷は不可避だったとする専門家の証言がある場合でも、換気記録が十分に付けられていない、換気が適切に行われていないといったことを理由に、立証責任を果たしていないとする判決が出されることもあります。一方、英国の裁判所・仲裁委員会では、専門家から同様の証言が得られた場合には、運送人側を支持しています。

次回の動画では、クレームを防ぐために、船舶の汗濡れの原因や換気の手順、換気記録の付け方をテーマにMoss博士に解説していただきます。また最終回となる3回目では、大豆輸送に関するクレームを助長している通商的・法的状況について見ていきます。

その他の情報やロスプリベンションに関するアドバイスについては、Gard Insightブラジルから中国への大豆貨物の輸送に関する専門家の見解」と「大豆貨物の熱損傷 - 検査の重要性」をご参照ください。