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Gard2021年リレハンメルエネルギークレーム会議(LECC)において、The Renewables Consulting GroupRCG)でアソシエイトディレクターを務めるマイケル・スティーブンソン氏に講演を行っていただきました。LECCは、1996年の発足以降、Offshore Energy Claims(オフショアエネルギークレーム)のバイスプレジデントであるヤン・ヒューゴ・
マーティンセン氏が議長を務めています。

こちらは、英文記事「The present and future of offshore wind: An Interview with Michael Stephenson
(2021年3月11日付)の和訳です。

 

毎年開催されるLECCは、元々エネルギー関連の主要保険会社とその損害査定人が非公式に議論する場として始まったものですが、今では世界規模の石油・ガス会社、クレームブローカー、各専門サービスプロバイダーの代表者が参加するまでに成長しています。今年は初めて完全オンライン形式で会議が開催されました。

 

初日のテーマは「エネルギー大転換」でした。パネルディスカッションには、マイケル氏のほかに、Jarand Rystad氏(Rystad Energy)、Marie Bysveen氏(SINTEF)、Lamberto Eldering氏(Equinor)、Tim Fillingham氏(McGill & Partners)が参加しました。マイケル氏は、再生可能エネルギー産業の代弁者としてパネルディスカッションに参加し、自身の見解を明確に示しました。今回、「エネルギー大転換」のセッションで同氏が言及したトピックの一部についてご本人からお話を伺うことができました。

 

マイケルさん、講演のご成功、おめでとうございます。LECCでお話しされた「今後10年における洋上風力発電の展望」について、読者の方々に簡単にお話しいただけますか。

 

モニカ(本稿執筆者)さん、ありがとうございます。「今後10年における洋上風力発電の展望」は、一言で言えば「成長」です。これまでの10年は、洋上風力発電産業がエネルギー供給源としての地位を確立することが中心でした。しかし、洋上風力発電は今後10年で将来の「エネルギーミックス」の柱の一つに成長していくでしょう。私が講演で特に強調した点は、中国以外のアジアでも、10年間でほぼゼロから30 GWを超える成長が見込まれる点と、こうした成長に石油・ガス産業がどのような役割を果たすかという点です。

 

ちなみに、GWはギガワットの略で、1GWで約30万世帯分の電力を賄えます。ですから、マイケルさんがお話しされている発電量は本当に相当な量です。陸上発電所と洋上風力発電所の違いを教えていただけますか。また、着床式風力発電と浮体式風力発電の違いを教えていただけますか。

 

洋上風力発電所は、海上に設置された多数の風力タービンで構成されており、海岸近くに設置されることもあれば、海岸から100km以上離れた海上に設置されることもあります。一般的に洋上風力発電は、タービンの数とタービンのサイズの両方の点で、陸上風力発電所よりも大規模なものとなっています。また、海上では風の流れを妨げる要素が少ないため、洋上風力発電には風速が強いという利点があります。海洋石油・ガス生産では、通常、大型の鉄鋼構造物を海底に打ち込んで固定を行いますが、着床式洋上風力発電も同様の基礎を使い、海底に固定します。浮体式洋上風力発電所も海底に固定されますが、それは、着床式の基礎が設置できないようなはるかに深い水深で使用されます。浮体式洋上風力発電所は、係留索やアンカーで海底につなぎとめられた浮力を持つプラットフォームを使用していることから、着床式洋上風力発電所よりも動揺が大きくなります。

 

先ほど、鳥が10羽いたら9羽は、洋上風力発電よりも洋上石油プラットフォームに賛成票を入れるだろうという記事を読んだばかりなのですが、洋上風力発電所は本当に環境に配慮しているのでしょうか。

 

環境面で言いますと、洋上風力発電所の場合、海鳥やその他の海洋生物への影響に関し、厳格な基準が設けられています。ここ英国では、洋上風力発電所に対し、何年もかけて大規模な環境影響評価や科学的検証が行われ、そうした影響を最小限に抑えています。最終的に、気候変動が環境に及ぼす影響がさらに大きくなる10年後、20年後には、洋上風力発電は海鳥にもたらす脅威を軽減できるようになっていると考えられます。洋上風力発電は、地球温暖化防止のための大規模でクリーンなエネルギー供給源として大きな役割を担うことになるでしょう。

 

ちなみに付け加えておきますと、タービンを効率性の高い大型タービンに変えることで、海鳥を傷つけるリスクの高いブレード部分の割合が減り、海鳥の死亡事故が減るという研究結果が出ています。タービンが大型になるほど、ブレード部分の割合が小さくなり、海鳥の死亡事故を減らせます。

 

現在の設備容量(定格出力)はGWでいうとどの位ですか。洋上風力発電はエネルギーミックスの中で大きな割合を占めるようになるのでしょうか。

 

設備容量は常に増加し続けています。2020年末時点で、世界では34GWの洋上風力が設置されています。私たちは洋上風力発電の容量は2030年までに200 GWを超えると予測しています。その頃にはエネルギーミックスの重要な柱の一つになっているでしょう。世界的には陸上の風力発電や太陽光発電と同等の容量に達することはないかもしれません。しかし、特に国土に比べて海岸線が長い国など、将来的に電力の大半を洋上風力発電で賄う国が出てくると考えられます。

 

着床式に適した地域で洋上風力発電が急速に発展しているため、今後、業界はより設置が難しい水深の深い場所で運用するための技術を開発する必要があると思われます。浮体式洋上風力発電の商業化はいつ頃になると予想されますか。

 

そうですね、浮体式風力発電の開発にはもうしばらく時間がかかるかもしれません。とは言え、RCGは2020年代の終わりまでに最初の本格的な商業の浮体式洋上風力発電プロジェクトが稼働し、2030年代には浮体式の普及が進み、着床式とコスト面で競い合うようになると予想しています。

 

洋上風力発電のパイオニアと言えばどの国ですか。また、現在先頭に立つ国はどこですか。

 

洋上風力発電のパイオニアと言えば、デンマークと英国です。デンマークは、1991年に最初の洋上風力発電所「Vindeby(ビネビュ)」を設置した記録を持ち、それ以降も、半国営のØrsted社(旧DONG Energy社)が、これまで行われてきた中でも特に大規模なグリーンエネルギーへの方針転換を行うなど、優れた実績を残しています。英国は、洋上風力発電の設備容量で現在トップ(10 GW)に立つと同時に、商業規模の洋上風力発電におけるパイオニアでもあります。英国は商業用洋上風力発電のコストを化石燃料と同レベルにすることに成功しています。

 

多くの石油・ガス大手が再生可能エネルギーへの投資を拡大させています。エネルギー大転換における従来の石油・ガス会社の役割とはどのようなものでしょうか。

 

石油・ガス会社、その従業員の方々は、洋上風力発電業界に提供できるノウハウを非常に多くお持ちです。彼らの海洋環境での経験、産業資産の運用経験、海上での大規模なエンジニアリング管理の経験は、非常に貴重です。石油・ガス会社は、エクイノール社やシェル社のようなデベロッパーやオー

 

ナーとしての役割のほか、エンジニアリング、設置、検査、メンテナンスを行ったり、将来、資産耐用年数の長期化を担うなど、サプライチェーン全体で役割があります。なお、石油・ガス会社にとって浮体式風力発電は、浮体式の石油・ガスプラットフォームでの経験を生かし、多角化を進められる大きな商機であると私は考えています。

 

今回の会議で話し合われていたように、石油・ガス会社が二酸化炭素排出量を削減する方法には、再生可能エネルギーへの投資を含めて複数の方法があります。Gard Energyのポートフォリオにおける保険料の25%以上が洋上風力発電に関連しています。この数字はGardが基本理念として掲げる「Together we enable sustainable maritime development(海運業界の持続可能な発展を共に実現する)」を証明するものとなっています。再生可能エネルギーは昨今、ポジティブな商機と捉えられていますか。

 

はい、確実にそうなっています。洋上風力発電を始めとする再生可能エネルギーは、確実な収益が期待でき、投資家にとって魅力的なアセットクラスであることが判明しています。エネルギー貯蔵技術や水素技術などの発展により、エネルギーシステム全体が大規模な変革を迎えています。そして、その最前線にあるのが再生可能エネルギーです。RCGは再生可能エネルギーに特化する形で、再生可能エネルギー産業を成長の機会として、また、洋上風力発電を将来の一セクターとして全面的に支持しています。

 

インタビューに応じていただいたマイケル氏と、今年のリレハンメルエネルギーカンファレンスにご参加いただいた皆様に御礼申し上げます。多くの皆様と直接お会いできることを願っております。