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USCGは、定期的に実施する船舶安全検査において、数隻のLNG船に搭載されている固定式ガス検知装置のセンサーがメーカー規定の許容誤差の範囲外にあったことが見つかり、その後の較正チェックでも不合格となったと報告しています。

こちらは、英文記事「Fixed gas detection systems – are you sure the correct gas concentration is displayed?」(2020年4月28日付)の和訳です。

 

はじめに

海運業界では長年にわたり、可燃性ガスや有毒ガスがポンプ室、ボイドスペース、機関室などに漏れ出す事故が数多く発生しています。ガスが一定の濃度レベルを超えて空気中に混じると、乗組員の命に関わる可能性があり、深刻な火災の危険ももたらします。国際液化ガス運搬船規則(IGCコード)では、ガス検知装置を設置して貨物の格納、貨物の取り扱い、補助システムに不備がないことを監視し、広く認められた基準に従って試験を行う必要があると規定されています。固定式ガス検知装置が効果的に作動するようにするには、センサーの較正を適時かつ正確に行うことが重要です。

 
2020年2月3日、米国コースとガード(USCG)は、海上安全警報02-20の中で、外国船舶監督官が数隻のLNG船で見つけた固定式可燃性ガス検知装置に関する問題を取り上げました。海上安全警報には次のように記載されています。「ボストンで3隻の液化天然ガス(LNG)船を検査中に、外国船舶監督官(PSCO)が固定式可燃性ガス検知装置に問題を発見しました。その結果、欠陥報告が発行され、荷役が遅延しました。立会検査の中で、複数のセンサーの数値がメーカー規定の許容誤差の範囲外を示し、その後の較正チェックで不合格となりました」

 

USCGが指摘した問題はいずれも固定式ガス検知センサーの較正に関係するものであり、その主な原因は以下の2つです。

  • 不適切なスパンガスをセンサーに使用していた
  • 適切な較正手順に従っていなかった

 

適切なスパンガスの使用

使用するスパンガスや較正用ガスの種類は、センサーの種類によって異なります。センサーには、主に赤外線センサー、電気工学センサー、触媒センサーの3種類があります。USCGが指摘したPSC欠陥報告は、触媒センサーに関係するものでした。

触媒センサーは、正しく機能するのに酸素が必要な唯一のセンサーです。不活性雰囲気からサンプル採取するシステムで使用する場合、接触酸化を促すには、EC 60079-29-1に従ってそのサンプルを新鮮な空気(酸素は最低10%)で薄める必要があります。酸素濃度が規定制限値を下回る場合、乗組員は触媒ビーズ可燃性ガスセンサーの数値を当てにすることができません。したがって、設備に使用されるセンサーの種類とその制約事項を乗組員が理解することが重要となります。乗組員は、触媒センサーの較正に使用するスパンガスが、(不活性ガスではなく)新鮮な空気とバランスが取れた状態にする必要もあります。乗組員は、使用するスパンガスの種類について製造元の指示を参照するように推奨されています。不適切なスパンガスを使用して検査や較正を行うと、センサーが規定の許容誤差の範囲外で作動し、不正確な数値を示す可能性があります。

あるガスを使ってセンサーの較正を行った場合に、そのガスとは異なる他の可燃性ガスの数値が表示されることがあります。例えば、メタンを使ってセンサーを較正してからそのセンサーをペンタンにさらすと、ペンタンガスの数値は、その空間内に実際に含まれるペンタンの量よりも低くなるでしょう。したがって選択するスパンガスは、乗組員が空間で測定しようとしている標的ガスを考慮したものでなければなりません。

 

 

適切な検査手順の遵守

乗組員は、製造元の検査手順と、固定式ガス検知装置の保守・検査に関する許容差を十分に理解しておくべきです。検査中にセンサーが規定の許容誤差の範囲外の数値を示した場合、この修正に関する製造元の指示に従うべきでしょう。USCGは安全警報の中で、「規定の許容誤差の範囲外で動作するセンサーは、深刻な安全上の脅威となり、出港の延期、荷役の延期、抑留などの船舶管理措置の根拠となる可能性がある」と強調しています。定期的に乗組員向けの講習を実施して、この点を周知することが重要です。また、較正と保守の手順を船舶の保守管理システム(PMS)に組み込み、ガス検知表示パネルの近くに模範例として掲示することをお勧めします。最後に、触媒タイプと可燃タイプのガスセンサーは、通常動作寿命が限られており、寿命が尽きると交換しなければなりません。そのため、センサーの寿命についても留意が必要です。

 

推奨事項

固定式ガス検知装置が安全に動作し続けるようにするために、以下の推奨事項を考慮してください。

  • 乗組員は、使用するセンサーの種類と制約事項を理解すること。
  • センサーの交換時期などの重要な日付を忘れないように、設備自体にラベルを貼っておくようにすること。
  • 最低限下記項目を網羅する手順を用意しておくこと。
    • 不適切な較正のリスク
    • 検査と較正の頻度
    • 使用するスパンガスの種類
    • 検査、較正、保守の手順
    • 設備の使い方だけではなく、検査、較正、保守の方法に関する乗組員の講習
  • 予備のセンサー、スパンガスボトルの在庫を適切に維持すること。
  • 陸上管理者による監査と検査には、ガス検知装置に関する評価(乗組員の認識や較正など)を含めること。