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現在26歳のボイヤン・スラット氏は、まだティーンエイジャーの頃に世界中の海洋プラスチックゴミを除去するアイデアを売り込み、非営利財団「オーシャン・クリーンアップ」を立ち上げました。今ではCEOとして90人を超える組織を束ねています。本稿の筆者アリス・アムンゼンとスラット氏の出会いは2016年、Gardがサマーセミナーに彼を講演者として招いたことがきっかけでした。以来、Gardはオーシャン・クリーンアップを支援し、その活動に注目しています。

こちらは、英文記事「From trash to treasure: The Ocean Cleanup story continues」(2021年1月20日付)の和訳です。

太平洋ゴミベルトは世界最大のゴミの集積地です。今ではフランスの国土の3倍にもなった公海上のこの場所は、一番近い海岸線からでも1,000海里離れており、所有者のいないグレーゾーンになっています。誰もが我が事として捉えてこなかったため、このゴミ問題は長年にわたって悪化の一途を辿ってきました。

 

オーシャン・クリーンアップと太平洋ゴミベルト

しかし8年前、あるオランダ人の若者がこの問題に立ち向かう決意をします。2012年、弱冠18歳のボイヤン・スラット氏がTEDトークで自らの構想を初めて発表したところ、それがたちまち反響を呼び、実現に必要な資金をクラウドファンディングで集めることに成功しました。科学者たちとチームを組んだスラット氏は、問題への対応策を練るため30隻のボートを使ってこのゴミベルトへの遠征を行い、その後は飛行機による空からの調査も実施。調査後は、数百回にわたるスケールモデル試験と北海での試作品試験が行われ、数年にわたる試行錯誤を経て、2018年9月に世界初となる海洋清掃装置の実証実験がサンフランシスコから始まりました。詳しくは過去のGard Insightをご覧ください。

 

波や潮流によってプラスチックゴミを海上のフェンスに集め、十分に集まったところで船に回収しようというのがこの装置の基本的な仕組みです。長く困難な取り組みを続けてきたスラット氏とオーシャン・クリーンアップにとっては、その成果が実を結ぼうとしているところでした。

 

「ウィルソン」とも呼ばれたその初号機には高い期待が寄せられました。実際、実験開始から最初の2か月で約2,000キログラムのプラスチックゴミを回収し、うまくいったようにも見えました。しかし、その一方で多くのゴミが流れ出るという問題があったうえ、2018年12月には最大の試練が訪れます。装置が真っ二つに割れ、修理のため陸まで曳航しなければならなくなったのです。

 

オーシャン・クリーンアップ

201910月、001/Bシステムで回収したプラスチックゴミ

 

一同は最初から計画を練り直すことになりましたが、半年の間に新しい装置を投入し、程なくして前回を上回る性能であることを確認できました。マイクロプラスチックの破片から巨大な漁網まで様々なゴミを回収することができたのです。解決すべき問題もいくつか残ってはいましたが、次の開発段階に進めたという意味では大進歩でした。

しかし、集めたゴミの山はまた別の問題を生み出します。それは、処理方法です。

 

 

オーシャン・クリーンアップ

太平洋ゴミベルトから回収されて大袋に保管されている運搬前のプラスチックゴミ

 

装置の開発から数年後、オーシャン・クリーンアップはゴミだったものを今後の清掃活動に役立てる方法を編み出します。回収したプラスチックゴミをリサイクルしてエコ商品として販売し、その売上金すべてを今後の海洋清掃の資金に充てようというものです。

しかし、このようなプラスチックのリサイクルというのは前例がありませんでした。海の上を長い距離移動し、何年間も漂い、日光や風や波にさらされてバラバラになってしまったプラスチックです。激しく風化して構造が複雑になってしまったものを果たしてリサイクルできるのだろうか、という懸念も当然ながらありました。そのため、回収に使用した装置の時と同様、このプラスチックゴミについても多くの実験を要しました。その結果、新たに生まれたのが粒状素材です

 

オーシャン・クリーンアップ

太平洋ゴミベルトから回収したゴミで作られた粒状素材。同財団で販売するサングラスの原料と
なっている

 

同財団は、この粒状素材を使った第1弾商品としてサングラスを売り出しました。「プラスチック自体は悪ではない。とにかく責任を持って使うことが大事である」ということを訴えることで、この動きに追随するところが出てくればと期待を寄せています。

 

 

オーシャン・クリーンアップ

再生プラスチックで作られたオーシャン・クリーンアップのサングラス。太平洋ゴミベルトから回収されたプラスチックが原料であることを示すタグ付き

 

「製品を作るのは初めての試みだったので、今後も各ラインでの改良を予定しています。とはいえ、このようなサングラスを作れたことがエコ商品というもののレベルを押し上げてくれるのではと期待しています」とスラット氏は話します。このサングラス1本の売上だけで、フットボールの競技場24個分相当のゴミをきれいにできる見通しです。

 

その先の取り組みとして同財団では、最初の試験時に得られた知見を応用して装置の改良を行い、新たな試作品の試験を既に北海で始めています。目標は、今年後半に太平洋ゴミベルトで002システムの運用を始めることです。計画どおりに進み、資金集めもうまくいった場合には、他の4つのゴミベルトでも清掃作業を始められるよう、太平洋で稼働している試作品のフリートを最大限まで拡充する予定です。2040年までに5つの海洋渦でプラスチックゴミを90%回収することを目指しています。

 

 

オーシャン・クリーンアップ

5つの海洋渦。海流が集まって渦を作り出し、プラスチックゴミが環流している

 

この目標を達成するには、いわゆる「レガシーポリューション(汚染の遺産)」を取り除くだけでは事足りないことは分かっているため、河川を経由してプラスチックゴミが新たに海に流入するのを防ぐ取り組みも行われています。同財団によれば、海洋プラスチックゴミの80パーセントは、世界の河川の約1パーセントにあたる僅か1,000の河川から流入したものだそうです。それを解消するために作られたのが、バージに太陽電池を搭載した清掃装置「インターセプター」です。この装置の詳細については過去のInsightをご覧ください。同財団では、各国政府や民間企業と提携し、世界でも特に汚染が深刻な1,000の河川でプラスチックゴミ問題に取り組むことを、フリート拡充から5年以内の達成目標として掲げています。

 

 

オーシャン・クリーンアップ

フェンスに集まったゴミをインターセプターの開口部に流し込むと、装置内に取り込まれる

 

川岸との間に広げたフェンスに沿って流されてきたプラスチックゴミをベルトコンベアで装置内に運び、そのゴミをシャトルに集め、台船の上にある6つの大型容器に自動的に流し込む、というのがインターセプターの仕組みです。現在は、インドネシア・ジャカルタにあるチェンカレン放水路、マレーシアのクラン川、ドミニカ共和国・サントドミンゴのオサマ川の3か所で3台のインターセプターが稼働しており、4台目も完成次第ベトナムで運用を開始することになっています。また同財団は2020年12月、マレーシアで稼働中の第3世代インターセプターの連続生産についてKonecranes社と提携を結びました。詳細についてはオーシャン・クリーンアップのWebサイトをご覧ください。

 

オーシャン・クリーンアップの掲げる目標は、主要関係者が一丸となって持続可能な海洋開発を実現するというGardの事業目標とまさに合致するものです。Gardは、あるべき姿や目標を定める際の骨格として国連の持続可能な開発目標(SDGs)を採用することで、持続可能な事業運営を目指しています。プラスチックゴミの削減というのは、目標13(気候変動)や目標14(海洋資源)といったSDGsの目標を達成する上で欠かせません。2016年のサマーセミナーでスラット氏が講演を行って以来、Gardはオーシャン・クリーンアップの事業を支援し、同財団の装置やインターセプターに対してP&I保険を提供しています。

20166月、アーレンダールにあるGard本部で開かれたサマーセミナーのトークイベントで、自らの海洋清掃計画について話したボイヤン・スラット氏

 

 

 

オーシャン・クリーンアップのサングラスをかけたマリアンネ・ブルーン・マックリル(同財団船舶担当のアンダーライター)とアリス・アムンゼン(筆者)

 

持続可能な事業に対するGardの取り組みを詳しく知りたい方は、サステナビリティレポート(英文のみ)をご覧ください。