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この質問はもはや人ごととして聞き流せるものではありません。最近、コンテナ船で大規模な荷崩れ事故がいくつも発生しているからです。こういった事故は冬場の荒天時に起こりがちですが、今年はもう一つ要因が考えられます。それは、コロナ禍以降の消費財需要の高まりと輸出滞貨に対応するためコンテナ船の満船が続いている点です。

昨年6月にはコンテナ船の荷崩れ事故について代表的な原因と法的な問題を検証しましたが、今回は、コンテナが海上に流出した後の行方について考察したいと思います。コンテナはどのくらいの間浮かんでいられるのでしょうか。実際のところ、水中で「漂っている」という通説には何か根拠があるのでしょうか。

世界海運評議会(WSC)は2020年の報告書の中で、海上に流出するコンテナの数は毎年平均1,382本に上ると推算しています。この数字は、業界全体のコンテナ積載能力の80%を占めるWSCメンバーへの調査を基に算出したものです。分析に際してWSCは、この調査に参加しなかった船社(業界全体のコンテナ積載能力の20%分に相当)でのコンテナ流出数も、回答船社(業界全体のコンテナ積載能力の80%分に相当)から報告された流出数とほぼ同等のレベルであると想定しました。ただし、この報告書が発表されたのは、太平洋上で1,800本以上のコンテナが流出する事態になった、昨年12月のOne Apus号の荷崩れ事故の前のことです。

 

コンテナはどのくらいの間浮かんでいられるのか?

実は、答えはありません。

コンテナは完全な水密性を持たないので、空のコンテナはいずれ沈んでしまうでしょう。もちろん、コンテナが沈むのにどのくらいの時間がかかるのかという質問には簡単に答えられません。変数があまりにも多いからです。貨物の種類、コンテナの種類、コンテナの透水性、耐久性などによっても変わってきます。ただ、その中でも一番の決め手となるのが、海面にぶつかった際の構造の損傷具合です。

すぐに沈んでしまうコンテナもある一方で、漂いながら大西洋を横断したコンテナもあります。カリブ諸島から15か月かけて大西洋を横断しスペインに流れ着いたケースもありました。

海上に落下すれば、やがて換気口やパッキン部分から水が入ってきます。ただ、軽量で密度が小さく、浮きやすい貨物を積んだコンテナであれば、穴が開いたり水浸しになったりしても何年も浮かんでいることができます。コンテナを浮かばせておくだけの力が貨物自体にあると言えます。

 

軽量で密度が小さく、浮きやすい貨物を積んだコンテナであれば何年も浮かんでいられるとはいえ、大型コンテナ船から落下したコンテナは、海面に接するのとほぼ同時に沈んでしまうことがよくあります。

リーファーコンテナはもともと、温度変化に注意を要する貨物を運ぶ際に通気や外気管理を正しく行わなければならないこともあり、水密性が高くなっています。バラバラに壊れない限りは浮かんでいられるため、沈むまでにどのくらいの時間がかかるかは、落下時の損傷具合、海況、波の作用によって変わってきます。

これまでのケースを見ると、高所から落下したコンテナよりも低所から落下したコンテナの方が長い時間浮かんでいられるようです。これはもちろん、低所から落下したコンテナに比べて、高所から落下したコンテナの方が構造が壊れる可能性がはるかに大きいためです。

つまり、小型の内航船やバージから落下したコンテナであれば、沈んでしまう前に回収しやすいということです。一方、大型コンテナ船から落下したコンテナは、海面に接するのとほぼ同時に沈んでしまうことも珍しくありません。

 

「水中に浮かんでいる」という誤った通説

コンテナは水中でも浮かんでいられると言う人もいますが、これはあり得ない話です。

完全に水没したコンテナが海面より少し下で漂っていられるというのは物理的に不可能なことです。理由は、質量と水の排除量の間で成り立つアルキメデスの原理が働くからです。コンテナは、水中に一部が浸かっているか、もしくは海底に沈んでしまっているかのいずれかの状態でしかいられないのです(沈んでいく途中の状態もありますが、これはあくまで一過性のものです)。

浮かんでいる物体に上向きにかかる力は、その物体が押し退けた液体の重さと等しくなります。コンテナとその中の貨物の重さが、押し退けられた水の重さより小さい場合、その物体は浮きます。

一方、コンテナとその中の貨物の重さ(コンテナ内部の水も含む)が、押し退けられた水の重さより大きい場合、コンテナは沈みます。たいていは、沈み始めると圧力が増してコンテナと貨物が押しつぶされ、沈む速度はみるみる増していきます。質量と排除量の比率が大きく変わり、浮力が小さくなってしまうのです。

 

物理学

つまりは、船の場合と同様に、コンテナが押し退けた水の重さがコンテナの重さと等しくなるところまで沈むということです。

これを踏まえると、貨物を満載した20フィートもしくは40フィートのドライコンテナ(最大総重量30トン)は水に浮くことになります。20フィートコンテナの容積は約1,300立方フィートで、これがすべて水に浸かった場合に押し退けられる水の重さは約83,000ポンドとなり、30トン(約66,000ポンド)より大きくなるからです。したがって、貨物を満載した20フィートコンテナ(高さ8フィート6インチ)は、海面から約1フィート6インチ頭を出した状態で浮かぶことになります。

ただ、床やドアパッキンや換気口から大量の水が入り、総重量が83,000ポンドを超えてしまうと、そのコンテナは沈んでしまいます。床の造りが頑丈でしっかり密閉されており、ドアパッキンの状態も良好、そして換気口がないコンテナであれば、何時間も、何日も、場合によっては何か月も浮いていられるかもしれません。

もっと言えば、防水性のある貨物がコンテナ内部のスペースの大半を埋め尽くしているような場合であれば、そのコンテナは永遠に浮いていることもできます。ただ、いずれは、波を受けたり、陸地にぶつかったり、水圧が増したりすることで損傷してしまうと思われます。

海上に流出したコンテナが浮かんでいられる期間は、控えめに見積もって平均で3か月といったところでしょう。

 

コンテナ回収への対応

海上に流出したコンテナは小型船の航行に危険をもたらすうえ、中には危険物が積まれていることもあります。プラスチックペレットなど、国際海上危険物規程(IMDGコード)で危険物に指定されていない貨物であっても汚染を引き起こす場合があります。

ほとんどの業界関係者は、流出したコンテナや貨物の回収が可能な場合には、回収のサポートを行っていくでしょう。Gardでは、サステナビリティの観点からクレームハンドリングを行ってまいります。つまり、船の安全航行や海洋環境を脅かすコンテナの発見・回収にかかる合理的な費用について、それを発見・回収する見込みがある場合には、負担することもやぶさかではないという意味です。常識的な判断を踏まえて、Gardでは、当局と連携しながらそれぞれのケースに見合った対処法を検討しています。海深く沈んでしまったコンテナを回収することは実質的に不可能でしょう。やはり「転ばぬ先の杖」が大切なのであり、荷崩れ等のコンテナ流出に繋がる問題について根本的な原因を究明することが重要なことには変わりありません。Gardは、メンバーの皆さまや業界関係者と協力しながらコンテナの流出・回収にいつでも対応できる態勢を整えています。