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バイオ燃料は、長期的観点で見ると、海運業界の脱炭素化を実現するための最適なソリューションにはならないかもしれません。しかし、脱炭素化に向けたプロセスを加速させる重要な役割を果たす可能性があります。DNV GL(ノルウェー・ドイツ船級協会)は最近の記事の中で、船舶がバイオ燃料やバイオ混合燃料を使用する際に直面する規制上の問題、安全性や運用上の問題をまとめました。

こちらは、英文記事「Biodiesel – new fuels, new challenges」(2020年10月22日付)の和訳です。

船舶から排出される温室効果ガス(GHG)削減に関するIMOの戦略に準拠するための方法は多数ありますが、その一つがバイオ燃料やバイオ混合燃料を使用することです。バイオ燃料は硫黄分をほとんど含まず、CO2排出量も少ないため、現在と将来の排気規制の一部に合致する技術的に実行可能な解決策となっています。しかし、バイオ燃料のNOx(窒素酸化物)排出量は石油ディーゼル燃料(軽油)よりも高い可能性があります。また、目の前の課題として、海運業界には、燃料供給におけるバイオ燃料の扱い方・利用の仕方について、十分な知識が蓄積されていないことが挙げられます。

DNV GLは、リスク管理と品質保証を専門とする第三者機関であり、Gardとも頻繁に損失防止プロジェクトや持続可能性プロジェクトに共同で取り組んでいます。燃料油にバイオディーゼルを使用することが増加していることから、今回、DNV GLの最新情報と推奨事項を転載させていただくことになりました。

 

バイオ燃料の種類

  • FAME(脂肪酸メチルエステル):FAMEは、植物油、動物性油脂、廃食用油などからエステル交換反応によって生成されるもので、様々な油(トリグリセリド類)がメチルエステルに変換されています。FAMEは海運業界で最も広く利用されるタイプのバイオディーゼルであり、大抵、通常の船舶用ディーゼルと混合されます。船舶用燃料油規格(ISO 8217:2017)には、FAMEの最大含有量7.0%以下の船舶留出油に関する追加規格(DFグレード)が含まれています。混合に使用されるFAMEはEN 14214またはASTM D6751の規格要求事項を満たす必要があります。また、バイオディーゼル混合比率30%以下のFAMEと軽油の混合燃料は、自動車用燃料としても使用され、B20またはB30と呼ばれています。(国際規格:EN 14214、ASTM D6751、EN 590)
  • HVO(水素化バイオディーゼル燃料):HVOまたはHDRD(水素化精製再生ディーゼル燃料)は、脂肪または植物油から作られる製品です。単体のまま、あるいは石油と混合されます。脂肪酸から炭化水素への水素化処理として知られる水素化精製法により精製されます。この製法で作られたディーゼルは、FAMEバイオディーゼルと区別するために、再生可能ディーゼルと呼ばれることがあります。水素化製法は、通常、FAMEバイオディーゼルの製法よりコストが高額ですが、HVO/HDRDはドロップイン燃料であり、設備の改修を要せず、既存のディーゼルエンジンや流通・給油施設にそのまま導入できます。(国際規格:ASTM D 975)
  • BTL(バイオ液体燃料):BTLは、熱化学変換によってバイオマスから生成される合成燃料です。最終製品は、ガソリンやディーゼルなどの従来の燃料とは化学的に異なる場合がありますが、ディーゼルエンジンにも使用できます。(国際規格:EN 16709、EN 15940)

 

遵守すべきバイオ燃料に関する規制事項

MARPOL 条約附属書 VI 第 18 規則「燃料油の入手可能性と品質」は、石油精製由来の燃料とバイオディーゼルなどの石油精製以外の方法で製造された燃料の両方に適用されます。ここでは、EN 15940に準拠した合成燃料は「石油精製以外の方法で製造された燃料油」に該当するとは見なされませんのでご注意ください。これらの合成燃料としては、水素化バイオディーゼル燃料(HVO)、バイオ液体燃料(BTL)、天然ガス液体燃料(GTL)、石炭液化燃料(CTL)などのサブグループが含まれます。これらは化学的プロセスによって燃料に変換された、それぞれに異なる資源です。

バイオディーゼルの場合は、他の燃料の中でもとりわけ、適用される硫黄含有量を超えることはまずありません。さらに、バイオディーゼルの場合は使用によりエンジンが該当するNOx排出規制値を超えることもないはずです。通常、バイオ燃料は、問題なく硫黄制限値を満たしています。しかし、酸素含有量が高い可能性があることから、NOx排出量は石油ディーゼル燃料よりも高い可能性があります。

MARPOL条約附属書VIの要求事項を満たすには、バイオ燃料を燃焼目的で使用する場合にも、ディーゼルエンジンが該当するNOx 排出規制値(船舶の起工日と運航地域によって異なる)に適合していることを確認できる証拠が必要となります。使用するバイオ燃料によっては、実証して証拠を示すことが困難な場合があります。また、結果をppm濃度だけでなくg/kWhで提示する船上での排出試験を求められる場合があります。DNV GLは、必要とされる試験が複雑なため、固定式試験台での排出試験の実施を推奨しているほか、船舶運航者が旗国の管理当局から必要な免除を得るための支援も行っています。

また、DNV GLは、測定の代わりに、分析または既知の国際規格の参照によって、バイオ燃料の排出特性が従来のディーゼル燃料の排出特性と同等であることが証明できる場合には、この証拠が、バイオ燃料の使用によってエンジンが該当するNOx排出制限を超えないことの証明となる可能性があるとアドバイスしています。

承認されたNOxテクニカルファイルの制限を超える変更が加えられた場合、バイオ燃料を使用するときにエンジンの燃焼を最適化する必要があり、NOxテクニカルファイルを正式に修正する必要があります。

 

技術的課題と解決策

以下は、バイオ燃料の使用に関する注意事項の要旨と、船舶での損失防止に関するアドバイスです。

  • 微生物の増殖:凝縮水がバイオディーゼル燃料に蓄積すると、バクテリアやカビが増殖する可能性があります。微生物の増殖は、スラッジの過剰形成、フィルターや配管の目詰まりにつながります。タンクの排水を頻繁に行い、燃料に殺生物剤を投入することで微生物の増殖の抑制・軽減が可能です。
  • 低温:原料により異なりますが、通常、高濃度のバイオディーゼルはディーゼルよりも曇点が高いため、低温になると流動特性が低下し、フィルターの目詰まりが発生します。したがって、使用する燃料油の低温流れ特性を把握し、貯蔵温度と移送温度を曇点よりも高く保つことが重要です。
  • 腐食:高濃度のバイオディーゼル(B80~B100)を使用する場合の最も重大な課題です。ホースやガスケットの種類によっては劣化が生じ、銅、真鍮、鉛、スズ、亜鉛などの金属材料との相互作用や質の劣化につながる可能性があります。また、堆積物の形成が増加する可能性もあります。したがって、燃料装置のホースやガスケットなどが耐久性を有し、バイオ燃
  • 酸化劣化:バイオディーゼルは時間の経過とともに劣化し、ポリマーや不溶性物質などの汚染物を形成する可能性があります。配管やエンジンに堆積物が形成され、操作性能が低下する可能性があります。蓄積が進行すると,燃料の酸性度が上昇し,燃料装置が腐食したり、ポンプやインジェクタにデポジットが付着したりする可能性があります。したがって、使用前に燃料を長期間保管したりせずに、生鮮品のように扱い、比較的短期間で使用することが推奨されます。酸化防止剤を早い段階でバイオ燃料に添加することで、劣化を抑え、保管期間を延長できる可能性があります。

 

料を使用しても問題ないことを確認することが重要です。

  • ゴム製シーリング、ガスケット、ホースの劣化の可能性:燃料装置内のこれらのコンポーネントが耐久性を有し、バイオ燃料を使用しても問題ないことを確認することが重要です。
  • 切り替え:バイオディーゼルは溶媒特性を持っていることが判明しています。そのため、ディーゼルからバイオ燃料に切り替えた場合、燃料装置内の堆積物が洗い流され、燃料フィルターを目詰まりさせることが予想されます。燃料切り替え時は、燃料装置を洗浄したり、フィルターをチェックしたりすることが推奨されます。

本稿の情報はDNV GLの許可の下、転載されたものです。本稿の元記事やDNV GLが提供するサービスの詳細につきましてはDNV GLのウェブサイトでご覧いただけます。