バイオ燃料は、長期的観点で見ると、海運業界の脱炭素化を実現するための最適なソリューションにはならないかもしれません。しかし、脱炭素化に向けたプロセスを加速させる重要な役割を果たす可能性があります。DNV GL(ノルウェー・ドイツ船級協会)は最近の記事の中で、船舶がバイオ燃料やバイオ混合燃料を使用する際に直面する規制上の問題、安全性や運用上の問題をまとめました。
15 FEB 2021
こちらは、英文記事「Biodiesel – new fuels, new challenges」(2020年10月22日付)の和訳です。
船舶から排出される温室効果ガス(GHG)削減に関するIMOの戦略に準拠するための方法は多数ありますが、その一つがバイオ燃料やバイオ混合燃料を使用することです。バイオ燃料は硫黄分をほとんど含まず、CO2排出量も少ないため、現在と将来の排気規制の一部に合致する技術的に実行可能な解決策となっています。しかし、バイオ燃料のNOx(窒素酸化物)排出量は石油ディーゼル燃料(軽油)よりも高い可能性があります。また、目の前の課題として、海運業界には、燃料供給におけるバイオ燃料の扱い方・利用の仕方について、十分な知識が蓄積されていないことが挙げられます。
DNV GLは、リスク管理と品質保証を専門とする第三者機関であり、Gardとも頻繁に損失防止プロジェクトや持続可能性プロジェクトに共同で取り組んでいます。燃料油にバイオディーゼルを使用することが増加していることから、今回、DNV GLの最新情報と推奨事項を転載させていただくことになりました。
バイオ燃料の種類
遵守すべきバイオ燃料に関する規制事項
MARPOL 条約附属書 VI 第 18 規則「燃料油の入手可能性と品質」は、石油精製由来の燃料とバイオディーゼルなどの石油精製以外の方法で製造された燃料の両方に適用されます。ここでは、EN 15940に準拠した合成燃料は「石油精製以外の方法で製造された燃料油」に該当するとは見なされませんのでご注意ください。これらの合成燃料としては、水素化バイオディーゼル燃料(HVO)、バイオ液体燃料(BTL)、天然ガス液体燃料(GTL)、石炭液化燃料(CTL)などのサブグループが含まれます。これらは化学的プロセスによって燃料に変換された、それぞれに異なる資源です。
バイオディーゼルの場合は、他の燃料の中でもとりわけ、適用される硫黄含有量を超えることはまずありません。さらに、バイオディーゼルの場合は使用によりエンジンが該当するNOx排出規制値を超えることもないはずです。通常、バイオ燃料は、問題なく硫黄制限値を満たしています。しかし、酸素含有量が高い可能性があることから、NOx排出量は石油ディーゼル燃料よりも高い可能性があります。
MARPOL条約附属書VIの要求事項を満たすには、バイオ燃料を燃焼目的で使用する場合にも、ディーゼルエンジンが該当するNOx 排出規制値(船舶の起工日と運航地域によって異なる)に適合していることを確認できる証拠が必要となります。使用するバイオ燃料によっては、実証して証拠を示すことが困難な場合があります。また、結果をppm濃度だけでなくg/kWhで提示する船上での排出試験を求められる場合があります。DNV GLは、必要とされる試験が複雑なため、固定式試験台での排出試験の実施を推奨しているほか、船舶運航者が旗国の管理当局から必要な免除を得るための支援も行っています。
また、DNV GLは、測定の代わりに、分析または既知の国際規格の参照によって、バイオ燃料の排出特性が従来のディーゼル燃料の排出特性と同等であることが証明できる場合には、この証拠が、バイオ燃料の使用によってエンジンが該当するNOx排出制限を超えないことの証明となる可能性があるとアドバイスしています。
承認されたNOxテクニカルファイルの制限を超える変更が加えられた場合、バイオ燃料を使用するときにエンジンの燃焼を最適化する必要があり、NOxテクニカルファイルを正式に修正する必要があります。
技術的課題と解決策
以下は、バイオ燃料の使用に関する注意事項の要旨と、船舶での損失防止に関するアドバイスです。
料を使用しても問題ないことを確認することが重要です。
本稿の情報はDNV GLの許可の下、転載されたものです。本稿の元記事やDNV GLが提供するサービスの詳細につきましてはDNV GLのウェブサイトでご覧いただけます。