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この2年間、Oliver Baileyさんは航海科学や航海術、消防など、一人前の船員になるために必要な多くの科目の知識を深めてきました。ところが、そんな彼も海上で足止めを食らってしまいました。

こちらは、英文記事「From deck to bridge - training the next generation of seafarers」(2021年1月8日付)の和訳です。

25歳のOliverさんは、順調にいけば、今年の年末までには卒業し、十分な資格を備えた甲板部職員になる予定です。その時点でOliverさんには多くのチャンスが待っているでしょう。Gard奨学金のおかげで、船乗りとしてのキャリアを、借金ゼロで、しかも懐に多少の余裕がある状態でスタートさせることができるのです。これは大半の卒業生が卒業時に置かれる立場とは異なります。

 

若者の皆さんもOliverさんの例にならってみてはいかがでしょうか。

 

海への憧れ

 

Oliverさんの場合、船乗りになる決意をほぼ固めたのは数年前のことだと思います。10代の頃、いつも海を眺め、地元である英国ウェールズのスウォンジーの浜辺に波が押し寄せるのを見ていたOliverさん。心を決めるとすぐに地元のライフセービングクラブに入会し、その後は王立救命艇協会(RNLI)で働き始め、無線通信について学んだりコーストガードと連絡を取り合ったりしながら、海の仕事についての知識を増やしていきました。

 

そして最終的には、英国にあるマンニング会社兼船員養成所であるChiltern Maritimeに出願。入所が認められ、ロンドン船員養成奨学金(Maritime London Officer Cadet Scholarship)(MLOCS)を受けられることになりました。MLOCSは、スポンサーや法人・個人からの寄付(政府の船員養成支援(SMART)基金による補助もあり)によって次世代を担う船員の養成に乗り出しており、Oliverさんは寄付者の1人とパイプを作ることで「Gard練習生」となりました。

 

実地訓練

Chilternで実施しているプログラムは、英国の各種学術機関での専門教育、研修、そして各種商船での乗船実習がセットになっています。Oliverさんはまず、サウサンプトンにあるソレント大学ワーサシュ商船学校で船員業の基礎、救命、消防、復原性、乗船時の基本原則について学び、そこで学んだ理論を基に、実践へと進んでいきました。

最初の乗船実習で乗ったのはArklow Forest号。ノルウェーから南欧へ向かう3,000トンの一般貨物船です。Oliverさんは「船乗りの生活スタイルに慣れるのには少し時間がかかりましたが、楽しいことだらけでした。仕事はハードでしたが」と話してくれました。本船がノルウェーを出航しフランス、スペイン、モロッコへと向かう間、濃霧の中でセメントを剥がすというきついデッキ作業と、それよりは楽なブリッジでの見張り作業を交互にこなしながら、航海の心得を学びました。

その次に乗ったのはBaltic Klipper号。欧州・南米間を航行する13,000トンの貨物船です。船のサイズも1船目のときより大きく、航海距離も長い上に、かの有名なカリブ海の夕日を見ながら航海できるという期待もあり、胸躍る実習でした。Oliverさんは、できるだけ長く、可能ならば5~6か月くらい乗船して海で過ごす時間を増やしたいと強く望んでいました。

 

安全第一: Baltic Klipper号での作業の様子。写真:個人提供

 

試練の時

幸か不幸か、Oliverさんは当初の計画よりも長く本船に乗船することになります。新型コロナウイルス感染症の世界的大流行によって、上陸許可がすべてキャンセルされ、21名の乗組員全員が本船に留まることを強いられたのです。そして残念なことに、当然ながら、ビーチを散歩するのも別の機会までおあずけになってしまいました。

直近で乗船した船でも似たような状況でしたが、違う点もありました。今度は海上よりも港で足止めされた時間が長かったのです。Fred Olsen社のクルーズ船Balmoral号への乗船では、プールや高級レストランに目を奪われるような、素晴らしい体験ができるはずでした。ところが、感染拡大によって、クルーズ観光は当然、完全停止状態に。Balmoral号もOliverさんの乗船期間中ずっと港に停泊

した状態でした。Oliverさんは、世界の海を周遊する代わりに修理やメンテナンス作業を行いながら状況が良くなるのを待ちました。

 

世界中の待望の的

ウイルスの大流行やその第2波・第3波はさておいて、Oliverさんやその同期生たちが卒業するときにはきっとたくさんのチャンスが待っていることでしょう。海運業界は船員不足に長らく悩まされているからです。訓練を積んだ優秀な人材をめぐる競争は熾烈を極めることが多くなっています。ここ数年、新規採用は改善しているものの、BIMCO/ICSが2016年に発行した最新の船員需給調査報告書(Manpower report)では、今後船員の供給不足が深刻になるおそれがあると警鐘を鳴らしています。最新の見通しを収めた新しいレポートは今年後半に発行予定です。

Oliverさんは自信に満ちており準備万端な様子です。多くのことを学び、ベテラン船員を彷彿とさせる典型的な「船員ひげ」も蓄えています。

「これまでの経験から、自分はその気になれば何だってできる人間だということが分かったような気がします。今まで成し遂げたことのないような成果を学校であげてきましたし、選ばれたわずかな人しか味わえないような経験も積んできました。臆さず言ってしまえば、そういう選ばれた人たちが、絶対数百万ポンドはしそうな貨物を積んだ15,600トンの船を操船して港に出入りし、傷ひとつつけることなく着岸させてきたんですから」とOliverさんは話します。

 

近況報告:GardのメンターであるTim Howseとビデオ通話を行うOliver Baileyさん。写真/スクリーンショット:Gard提供

他の若い人たちにも船乗りを目指してもらいたいと思うかとの質問には、「もちろんです。世界中が待っていますから」と答えてくれました。