Rate this article:  

2021年は、船舶の安全管理システムにサイバーリスクへの対応要件が盛り込まれ、海運業界にとって新たなサイバー時代の幕開けとなる年です。しかしこれは今年施行される数々の規制の1つにすぎません。本稿では、2021年に施行される重要な多くの国際規制に加え、船舶リサイクルや大気排出などの環境問題に関する主要な国内規制の変更点をいくつか簡単にご紹介します。

こちらは、英文記事「Charting the 2021 maritime regulatory landscape」(2021年1月7日付)の和訳です。

2020年は、全世界で燃料油の硫黄分の上限を0.5%とする規制や、電子記録簿の使用、2006年海上労働条約の改正など多くの規制が施行されましたが、2021年も同様です。以下に、今後施行予定の規制を施行日別にまとめましたので、メンバーの皆さまにおかれましては、乗組員と陸上職員に対し施行前にこれらの変更点を十分に把握しておくよう徹底することをお勧めいたします。今回は2021年1月から7月までの分を対象としましたが、7月以降に施行予定の規制が出てきた場合には適宜更新してまいります。

 

202111

決議MSC.428(98):海事サイバーリスクマネジメント

海運業界全体を見渡すと、港や船舶、オフショア設備でサイバー空間(インターネット)を利用したシステムに接続することが増え、それに対する依存度がますます高まってきています。サイバーインシデントを見据えた備えをしていないと、船舶やオフショア設備は深刻な影響を受けかねません。国際海事機関(IMO)は主管庁に対し、2021年1月1日以降に行われる船社の適合証書(DOC)の初回年次審査までに、現行の安全管理システム(SMS)でサイバーリスクへの適切な対処を徹底するよう求めています。米国コーストガード(USCG)発行の船舶サイバーリスク管理作業手引書(Vessel Cyber Risk Management Work Instruction)(CVC-WI-027(1))は、ポートステートコントロール(PSC)が船舶のサイバー衛生検査時に確認する可能性の高い重要なポイントに関する有益なガイダンスとなっています。

 

IMOサーキュラー

 

サイバーセキュリティに関するGard発行の資料

 

決議MEPC.315(74):MARPOL条約附属書IIの改正

貨物残渣とタンク洗浄の定義に新たに「残留性浮遊物質」が追加されました。また、特定の条件下で凝固する可能性のある高粘度・高融点の残留性浮遊物質を含む貨物残渣ならびにタンク洗浄水の排出要件が、一部の海域で強化されました。船舶は、予備洗浄を行い、予備洗浄中に発生した残渣を揚地の陸上受け入れ施設に陸揚げしなければなりません。該当となる海域は、北西ヨーロッパ海域、バルト海域、西ヨーロッパ海域、ノルウェー海域です。船主と管理者は「方法および設備の手引書」の見直しを行い、当該変更点を取り入れる必要があります。

 

決議MEPC.318(74)および決議MSC.460(101)IBCコードの改正

危険化学薬品のばら積み運送のための船舶構造および設備に関する国際規則(IBCコード)が大幅に変更されました。一部の章は改正され、一部の章は差し替えになっています。硫化水素(H2S)を発生しやすい液体をばら積み輸送する船舶は、H2S検知器を備えなければなりません。第21章では、IBCコードの対象となる物質の運送要件の指定基準が見直されました。多くの船で、今回の変更点を反映させるために有害液体物質(NLS)証書や適合証書の更新が必要になる可能性があります。危険化学薬品のばら積み運送のための船舶構造および設備に関する規則(BCHコード)でも同様の変更が行われました。この規則は、決議MEPC.319(74)に基づくものであり、1986年6月30日以前に建造されたケミカルタンカーに適用されます。国際独立タンカー船主協会(Intertanko)ではガイダンスとなる実施ツールを公開しています。ツールにはこちらからアクセスできます(注:Intertanko会員に限りアクセス可能です

 

決議MSC.462(101)IMSBCコードの改正

国際海上固体ばら積み貨物規則(IMSBCコード)の改正(05-19)で以下のような変更が何点か行われました。これによって、一部の船舶では適合証書の更新が必要になる場合があります。変更点は以下のとおりです。

 

  • ボーキサイト粉の運送許容水分値(TML)を決定するためのテスト手順の追加
  • グループB貨物の再分類
  • 「貨物の性状」表の改正
  • 附録1への新規スケジュールの追加。注目点は、ボーキサイト粉のグループAの追加、およびシードケーキのグループBへの追加

 

決議MEPC.248(66):オイルタンカーへの承認された復原性計算機の搭載

2016年1月1日より前に建造されたオイルタンカーは、復原性計算機に関する承認証明書を本船上に保持する必要があります。また、それに従って国際海水汚濁防止証書(IOPP)も更新する必要があります。本船に復原性計算機が既に搭載されており、非損傷時復原性要件および損傷時復原性要件が主管庁の定める要件に適合していることを証明できる場合には、当該計算機を載せ替える必要はありません。

 

決議MSC.377(93):ガスキャリアへの承認された復原性計算機の搭載

液化ガスのばら積み輸送のための船舶構造および設備に関する規則(GCコード)が適用されるガスキャリアは、復原性計算機に関する承認証明書を本船上に保持する必要があり、その内容を適合証書に反映させる必要があります。本船に復原性計算機が既に搭載されており、非損傷時復原性要件および損傷時復原性要件が主管庁の定める要件に適合していることを証明できる場合には、当該計算機を載せ替える必要はありません。

 

 

決議MEPC.250(66)およびMSC.369(93):ケミカルタンカーへの承認された復原性計算機の搭載

1986年7月1日から2015年12月31日の間に建造されたケミカルタンカーは、復原性計算機に関する承認証明書を本船上に保持する必要があり、その内容を適合証書に反映させる必要があります。本船に復原性計算機が既に搭載されており、非損傷時復原性要件および損傷時復原性要件が主管庁の定める要件に適合していることを証明できる場合には、当該計算機を載せ替える必要はありません。1986年6月30日以前に建造されたケミカルタンカーについても要件は同じです。MEPC.249(66)およびMSC.376(93)を参照してください。

 

 

決議MEPC.286(71):バルト海海域および北海海域のNOx3次規制適用排出規制海域への指定

NOx3次規制が適用される現行の排出規制海域(米国・カリブ海海域および北米海域)に、新たにバルト海海域および北海海域が追加されます。対象となるのは2021年1月1日以降に建造される船舶、または既に建造されており、エンジンの新たな設置または異なるエンジンへの交換を行う船舶です。バルト海海域および北海海域の境界についてはMARPOL条約附属書Iの規則1.11.2を参照してください。

 

決議MSC.461(101)2011年ばら積み貨物船およびオイルタンカーの検査の際の検査強化プログラムに関する国際規則(2011 ESPコード)の改正

採択された改正事項は以下のとおりです。

 

  • 本文に強制的な意味合いを持たせるため、強制力を伴わない単語「should」を強制力を伴う単語「shall」に置換
  • 「エッジ腐食(edge corrosion)」、「主管庁(Administration)」、「溝状腐食(grooving corrosion)」などの用語を新たに定義
  • 総合検査および精密検査に関する新たな要件の設定
  • 共通構造規則(CSR)に基づく単船側構造ばら積み貨物船および二重船側構造ばら積み貨物船の板厚計測の推奨手順に関する附属書の新設
  • コード内で使用されている図の修正
  • 腐食の判定基準要件の新設
  • 救助・緊急対応装置の要件の新設

 

決議MSC.434(98)GMDSSの性能基準

全世界的な海洋遭難安全システム(GMDSS)の一部であり、2021年1月1日以降に承認された移動衛星通信サービスの一環として機能するよう設計されている各船舶地球局は、決議A.1001(25)の該当要件に従わなければなりません。または、船舶地球局が2021年1月1日より前に承認された移動衛星通信サービスで機能するよう設計されている場合は決議A.1001(25)の該当要件に、1999年2月1日以降に設置されている場合は決議MSC.130(75)の附属書で定められた要件と遜色がない性能基準に、1996年11月23日以降から1999年2月1日より前に設置されている場合は決議A.808(19)の附属書で定められた要件と遜色がない性能基準に、1996年11月23日より前に設置されている場合は決議A.698(17)の附属書で定められた要件と遜色がない性能基準にそれぞれ従わなければなりません。

 

EU規則1257/2013:シップリサイクル規則

2020年12月31日より、EU加盟国に寄港・停泊する際は、非EU籍船であろうが EU籍現存船であろうが、承認された有害物質インベントリ(IHM)を本船上に保持しなければなりません。2021年1月1日以降、英国籍船は英国海事沿岸警備庁(MCA)発行のMarine Information Note 645にあるとおり外国籍船として分類されます。EUでは船主・管理者・船長のために、シップリサイクルに関するEU規則1257/2013に基づく寄港国による検船についてのガイダンス文書を作成しています。文書にはこちらからアクセスできます。

 

欧州委員会(EC)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う制限により検船および認証済みIHMの作成が極めて難しくなっているとの報告を業界関係者から受けています。これを受けてECはガイドライン(2020/C 349/01)を発行し、2021年6月20日までの期間限定で、PSC当局に対し調和のとれたアプローチを取るよう提案しています。ただし、船舶がIHMを保持していない場合、業務への着手および必要な証書の取得のためにあらゆる限りの措置を講じた証拠(サービスコントラクトなど)を提示する証明責任が船主・船長にあるという点には注意が必要です。

 

カリフォルニア州:「Marine Invasive Species Program Annual Vessel Reporting Form」の提出要件

「Marine Invasive Species Program Annual Vessel Reporting Form(AVRF)」の提出にはWebベースのプラットフォームMISP.IOが使用される予定です。この新しい要件においても提出のタイミングに変更はなく、これまでどおり、船舶がその年(暦年)初めてカリフォルニア州の港に寄港する少なくとも24時間前までに提出しなければなりません。

 

カリフォルニア州:油流出関連の違反に対する刑罰の強化

2021年1月1日より、カリフォルニア州水域での船舶による油濁損害に対して、同州のレンパート・キーン・シーストランド油濁防止・対応法に基づく新たな罰金が適用されます。適用内容は以下のとおりです。

 

  • 1つの違反ごとに、現行の罰金が最高100万米ドルに倍増(違反が終日にわたるか否かにかかわらず、その日ごとに別の違反とみなされる)
  • 1,000ガロンを超える流出油について、1ガロン当たり最高1,000米ドルの追加罰金を新たに科す権限が裁判所に与えられる

 

いずれの場合も、違反者がカリフォルニア州水域で油流出を故意に引き起こしたか、または自らの行為が油流出につながるものだと合理的に知り得た場合に、罰金が科される可能性があります。本件に関するGardのサーキュラーはこちらからご確認いただけます。

 

中国:クルーズ船を対象とした着岸中の陸上電源使用要件

排出規制海域にある港で陸上電源設備のあるバースにクルーズ船が3時間を超えて停泊する場合は、陸上電源を使用しなければなりません。GardのコレスポンデントであるHuatai社発行の排出規制海域の現地要件に関するサーキュラーはこちらからご確認いただけます。

 

2021412

アルゼンチン:アジア型マイマイガに関するSENASA決議764/2020

規定001/2021により、アルゼンチン国家農畜産品衛生管理機構(SENASA)は、マイマイガの侵入規制の施行を2021年1月12日から2021年4月12日に延期しました。この日以降、過去2年以内の5月から9月の間にアジア太平洋地域の特定の港へ寄港した船舶は、アルゼンチン寄港前に、検査証明書およびアジア型マイマイガ不在証明書を提出しなければなりません。本件に関するGardのAlertはこちらからご確認いただけます。

 

202161

決議MEPC.274(69):旅客船からの汚水による汚染防止のための規則

旅客船の建造契約や建造日にもよりますが、今回新たに特別海域に加わったバルト海では汚水の排出が禁止されます。ただし、MEPC.227(64)に従って型式承認された汚水処理プラント(STP)を搭載している船舶は、汚水排出禁止の除外対象となります。

 

202171

決議MSC.370(93):ガスキャリアへの承認された復原性計算機の搭載

1986年1月1日から2016年6月30日の間に建造されたガスキャリアは、復原性計算機に関する承認証明書を本船上に保持する必要があり、その内容を適合証書に反映させる必要があります。本船に復原性計算機が既に搭載されており、非損傷時復原性要件および損傷時復原性要件が主管庁の定める要件に適合していることを証明できる場合には、当該計算機を載せ替える必要はありません。