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ギニア湾での海賊行為のリスクは高まっていますが、この海域を航行する船舶は船舶自動認識装置(AIS)を常時作動させておくべきです。

こちらは、英文記事「Do not switch off the AIS in Nigerian waters」(2020年10月16日付)の和訳です。

2020年10月5日、ナイジェリア国営石油会社(NNPC)から顧客やその他の関係先宛てに1件の通知が出されました。それは、ナイジェリア海域を航行中に船舶自動認識装置(AIS)を停止している船舶についてナイジェリア海軍が今後取り調べを行う予定であること、また、既に拘束された船舶があることを警告する内容でした。さらにこの通知では、SOLAS条約第V章第19規則で定められた義務に従い航行中や錨泊中は常時AISを作動させておくよう、船長に対して注意喚起も行っています。NNPCの通知についてはこちらでご確認いただけます。

 

安全対策としてのAIS

国際海事機関(IMO)によると、AISの目的は、海上での生命の安全、航行の安全と効率、そして海洋環境の保護を強化することです。この装置を使って自船の情報を他船や沿岸当局に自動で提供することによって、衝突を回避するための判断や、標的の追跡、捜索救助活動などに役立てることができます。一般的には、AISで受信したデータのおかげで、陸側の監視所であれ本船上であれ、当直職員や当直航海士(OOW)が入手できる情報の質が高くなります。

 

海賊防止対策としてのAIS

海賊行為に対しては、AISは功罪相半ばします。AISから情報を伝達することで安全や状況認識は高まる一方、場合によっては、海賊も同じ情報を簡単に収集して、縄張りに入ってくる船舶をその情報を使って見つけることができるからです。しかも、船舶情報からその船が高価な貨物を積んでいるかどうかを確認されるおそれすらあります。このような安全上の懸念があることから、IMOは2003年にAISガイドラインを修正し、海賊やテロリストによる攻撃を受けるおそれが高い特定の海域においては、船長はAISを停止してもよいとしました。ただ、そのような状況でAISを停止するというのは賢明な予防策に見えるかもしれませんが、海賊行為を防ぐベストマネージメントプラクティス(BMP)とは見なされていません。

メンバー、船長、船員向け海賊防止グローバルガイダンス(Global Counter Piracy Guidance for Companies, Masters and Seafarers)」や「ギニア湾を含む西アフリカ沿岸沖での海賊防止および海上安全保障強化のためのベストマネージメントプラクティス(Best Management Practices to Deter Piracy and Enhance Maritime Security off the Coast of West Africa including the Gulf of Guinea)」などの業界で普及しているガイダンスでは、海賊行為の多発地域を航行する際にはAISを作動させておくことを一般的に推奨しています。もっと厳密には、どの危険地域であれAISは常に作動したままにしておく一方、データについては、船の識別情報や位置、針路、速力、航海状態、安全に関する情報など限られたものだけを送信する設定にするよう推奨しています。自主通報海域(VRA)を航行中もAISを常時作動させておけば、情報センターや軍が船舶を追跡でき、不審な船が接近してきたり攻撃を加えられたりするおそれがある場合に、早い段階でサポートすることができます。

 

推奨事項

船舶運航者は上記のことに注意し、ナイジェリア当局が自国のAIS要件に従わない船舶に対して懲罰的な措置を取る可能性があると、各船の船長に確実に周知するべきです。海賊に襲われるリスクのある海域を航行する際にAISを停止するのは賢明な予防策に見えるかもしれませんが、停止することでナイジェリアの法律やSOLAS条約に違反する可能性があります。また、衝突のリスクや、他船に損害を与えるリスク、油濁のリスク、洋上で船員が死亡するリスクも高まるおそれがあります。

Gardでは通常、海賊行為の多発地域を航行する船舶を所有するメンバーの皆様に対して、国際海事局海賊情報センター(IMB Piracy Reporting Centre)のウェブサイトを確認する、現地代理店や地元当局と綿密に連絡を取るなどして、状況をチェックすることをお勧めしています。普及している業界ガイドラインに従って、リスク評価を行い適切な防止対策を講じてください。詳しい推奨内容については、Gardのウェブサイト「海上における海賊・武装強盗(Piracy and armed robbery at sea)」をご覧ください。

また、AIS応答装置を不正に操作している兆候がみられた場合は不法行為の可能性を示す危険信号と見なされる可能性があることを、この機会にメンバーの皆様に改めてお知らせします。監視が強化さ

れた水域で「消灯」した場合は、制裁制度に故意に違反したという疑いを払拭するための正当な裏付けが必要になる場合もあります。詳細については、2019年5月29日付のInsight記事「「消灯」が発する危険信号 – AISによる追跡と制裁遵守」をご覧ください。

今回の記事は、参照したNNPCの通知について国際独立タンカー船主協会(Intertankoから受けた連絡をもとに作成しました。