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過去数週間、私たち全員が目にしてきたとおり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによる影響が世界の商業活動のあらゆる側面に及んでおり、状況も日々変化しています。それに伴い、メンバーの皆様からは、クラブの保険カバーに関して多数の質問が寄せられています。各ケースは具体的な事実を基に判断されますが、本稿では新型コロナウイルス感染症のパンデミックに関係する可能性の高い項目を取り上げ、よくある質問への基本的な考えを示したいと思います。

こちらは、英文記事「Coronavirus (COVID-19) and the Gard Cover – FAQ (HTML / PDF)」(2020年6月2日付)の和訳です。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とGardカバーに関するよくある質問はPDFでもお読みいただけます。

新型コロナウイルス感染症の発生状況に関する最新情報やアドバイスは、Gardのウェブサイトにある新型コロナウイルス感染症ページや同ページに掲載のリソースを参照いただくことをお勧めします。

 

P&Iカバー

 

乗組員について

新型コロナウイルス感染に起因する乗組員の疾病・死亡は、補償されますか?

雇用期間中に乗組員が新型コロナウイルスに感染した場合は、雇用契約および/または適用法の条件に従い、クラブルール第27条に基づき、疾病に関連する費用と、万一乗組員が死亡した場合は死亡に関連する費用がてん補されます。基本的に、新型コロナウイルスへの感染に対する法的責任は、他のてん補対象とされる乗組員の疾病と同様に、離路費用、入院費、医療費、扶養、送還費用などが、クラブルール第27条においててん補されます。

乗組員が陸上にいた際や乗船するために船舶に向かっていた途中、あるいは下船して帰宅する途中に感染した場合は、てん補されますか?

乗組員が加入船での勤務就労中に陸上で感染した場合や、本船に乗船するために本船に向かう途中、下船後の帰宅途中に感染した場合も、法的責任が発生する可能性があり、もしこれらの期間が雇用契約でカバーされている場合は、てん補対象となります。

乗組員に新型コロナウイルス感染の症状が現れ、検査を受けることを余儀なくされた場合にはてん補されますか?

もし乗組員の雇用期間中に新型コロナウイルスの症状が現れた場合には、検査費用は通常クラブルール第27条でてん補される他の医療費や関連費用と同様にてん補されます。しかし、乗組員に何ら感染の症状が現れていないにもかかわらず、予防的措置として検査を実施した場合、例えば船員交代手順として、または現地の規則/方針などによる場合には、検査費用は事実上通常業務における費用と見なされ、てん補対象には該当しません。

乗組員の訓練証明書や医療証明書の期限が切れていたり、期限切れが近かったりするにもかかわらず、必要な乗組員の交替が果たせない場合でも、てん補されますか?

乗船中に乗組員の訓練証明書や医療証明書が失効したとしても、当該乗務員に対するてん補は損なわれません。

新型コロナウイルス感染症は船舶の堪航性に影響しますか?

新型コロナウイルス感染症は、安全配員水準が旗国の要件に従って維持されている限り、保険てん補の観点からは船舶の堪航性に影響しません。

詳細は、Gard Guidance to Rule 27(英文)を参照してください。

 

乗組員や乗船者以外の人について

船上での業務中に新型コロナウイルスに感染した場合、てん補されますか?

乗組員や乗船者以外の人(港湾当局の職員、港湾の係官、第三者のサーベイヤー、港湾作業員など)が、本船上での業務中に新型コロナウイルスに感染した場合は、適用法または契約条件(契約を締結している場合)に基づきメンバーに責任が発生すれば、クラブルール第30条で疾病や死亡に関連する費用に限定しててん補されます。一般的に、適用法に基づく責任を問うには、本船の業務に直接関連して負っている注意義務に違反していることが要件とされます。例えば、船上での作業中に当該作業エリアを消毒するための適切な対策を講じていなかった場合などです。

詳細は、Gard Guidance to Rule 30を参照してください。

 

離路について

船内で新型コロナウイルス感染症が確認された場合、離路費用はてん補されますか?

船内の感染した乗組員の治療を確保するために船舶が離路しなければならない場合は、治療を得る目的で発生した場合に限り、クラブルールで定められている燃料などの追加費用がてん補されます。

船内で新型コロナウイルス感染症の発生が疑われる場合、離路費用はてん補されますか?

船内の新型コロナウイルス感染疑いのある乗組員の治療を確保するために船舶が離路しなければならない場合は、治療を得る目的で発生した場合に限り、クラブルールで定められている燃料などの追加費用が、各ケースの具体的事実・状況によりてん補されます。

詳細は、Gard Guidance to Rule 31(英文)を参照してください。

 

検疫について

新型コロナウイルスが船内に存在し、メンバーが、本船が検疫を受ける可能性のある港湾に寄港しないように相当の注意を払っていたことを条件に、本船への検疫指示に従うために直接関連して発生した費用がてん補されます。てん補されない費用として、本船への検疫指示やウイルスの存在に関係なく発生する船舶の運航費用(賃金や燃料など)などがあります。

新型コロナウイルスが船内に存在し、船舶や乗組員の消毒が必要となった場合は、関連する費用(消毒作業実施のために専門業者に依頼した費用など)がてん補されます。

船内に新型コロナウイルスが存在せず、検疫指示が出されていない時に、本船および/または乗組員が自己隔離を実施している場合は、補償されますか?

船内に新型コロナウイルスが存在せず、検疫指示が出されていない場合は、クラブルール第48条に基づく費用のてん補はありません。乗組員が罹患または感染していない場合は、クラブルール第27条に基づく責任も発生しないでしょう。

乗組員の国籍または以前の寄港地に基づいて本船に検疫指示が出されたものの、船内に新型コロナウイルスが存在しない場合、てん補されますか?

船内に新型コロナウイルスが存在しない場合は、隔離指示に関連して発生した費用は、クラブルール第48条に基づくてん補対象に該当しないでしょう。

乗組員は感染していないものの、本船に乗船する前または下船後に現地の規制/方針に従い陸上で検疫を受けた場合は、てん補されますか?

船内に新型コロナウイルスが存在せず、本船が検疫指示を受けていない場合、乗船前または下船後の乗組員の検疫に関連する費用は、事実上通常業務における費用とみなされ、クラブルール第48条のてん補対象に該当しません。ただし、ウイルスが船内に存在していることを理由に下船後に乗組員に検疫が行われた場合、当該検疫に関連する費用はてん補されます。

船内に新型コロナウイルスが存在し、本船が検疫指示を受けている場合、どのような費用がてん補されますか?

本船に対する検疫指示に従うことに直接関連して発生した費用はてん補の対象となります。てん補の対象となるのは費用、すなわち、船舶の通常の運航費を超える費用であり、船内で新型コロナウイルス感染者がいなければ発生しなかったであろう費用です。例えば、本船を検疫エリアに停泊するために移動させたり、必要な検査や専門家による分析を実行したりする際に発生した費用のほか、燻蒸消毒などの方法でウイルスを除去する対策を講じた際に発生した費用がてん補対象となるでしょう。

損失時間や遅延による同様の損失が生じた場合、てん補されますか?

不稼働、機会喪失、遅延による同様の損失はてん補されません。

本船は検疫指示を受けていませんが、新型コロナウイルスが船内に存在し、船舶の消毒が必要になった場合はてん補されますか?

船内に新型コロナウイルスが存在し、本船および/または乗組員の消毒が必要になった場合、消毒作業を行うために発生した費用がてん補されるでしょう。

船内に新型コロナウイルスが存在しない場合、本船の消毒にかかった費用はてん補されますか?

船内に新型コロナウイルスが存在しない場合、船舶の消毒にかかった費用はてん補されません。

詳細は、Gard Guidance to Rule 48を参照してください。

 

ディフェンスについて

どのようなクレームが発生する可能性がありますか?

新型コロナウイルス感染症関連で発生すると考えられるクレームの大半は、数量輸送契約、用船契約、船荷証券、その他の運送契約に関係するものであり、船舶の遅延、 物的損害、人身傷害、人命の損失に関するものになるでしょう。

 

船主によるクレーム

安全港担保義務違反

未払い賃金

デマレージ/拘留

乗組員の疾病または死亡に関するクレームへの求償

損失や第三者から船主への賠償請求に対する用船者への求償

本船が感染地域外でバンカーや補給品を積み込まなければならなくなったことで発生した損失

新型コロナウイルス感染地域に寄港後に、他の港湾または当局から、本船の入港を禁止されたり、本船をブラックリストに登録されたりしたことで生じた損失

本船が検疫において費やした消毒費用・時間に対する補償

 

用船者によるクレーム

用船契約違反(港が安全であるとの主張)

過払い傭船料の回収

乗組員の疾病に起因する検疫/拘留期間中のオフハイヤー

第三者からのクレームに対する求償

契約上の責任を一時停止/回避するための不可抗力や目的達成不能の申告

停泊期間/デマレージの除外

 

第三者によるクレーム

予定より遅れた貨物の受け取り/受け取り拒否に関する受取人からのクレーム

遅延に起因する貨物の損傷

新型コロナウイルスの感染拡大が用船者や船主の責任であると主張する、今回の予期せぬ感染拡大とはまったく無関係の第三者からのクレーム。

詳細は、Gard Guidance to Rule 65を参照してください。

 

本船が新型コロナウイルス感染地域の港に向かうことが分かっていながら本船を仕向けた場合、てん補されますか?

 一般的に、GardのFDD保険では、新型コロナウイルスの感染地域に本船が仕向けられた場合でも、そのこと自体が船主と用船者の双方に対するFDD保険のてん補に影響することはありません。とは言え、Gardでは船主や用船者は慎重な無保険者として行動すべきであると考えています。メンバーは無謀な行動を取るべきでなく、その港または後に向かう港への到着時に拘留/検疫される可能性が高いことを知りながらその港に向かうことが賢明かどうか、慎重に検討する必要があります。

予見可能な損失・損害は保険の対象外であり、予見できない損失・損害が保険の対象となります(契約条件によります)。したがって、本船が到着時に検疫され、その検疫期間が損失・損害を引き起こすことが分かっている場合は、そのような損失がてん補される可能性は低くなります。とは言え、損失・損害の回収可能性の問題は、各ケースの具体的事実によって異なり、クラブルールで定められているカバーに関するクラブの裁量の指標となっています。

カバー関連の考慮事項には、メンバーの活動が違法または過度に危険な航行ではなかったか、あるいは保険加入時に申告され、その後クラブに告知する義務のあったリスクの変化などが含まれる場合があります。

FDD保険で紛争に対応するかどうかは、主としてメンバーの訴訟におけるメリットに左右されます。クラブは、裁量を行使して対応するかどうかを決定する際に、争われている金額を紛争の継続費用や回収が成功する可能性と比較するなど、複数の要因を考慮します。この点はケースバイケースで決定される必要があります。

 

新型コロナウイルス感染症は、用船契約や訴訟における私の契約上の権利や義務にどのように影響しますか?

この質問は複雑なため、簡単には返答できません。と言うのも、大部分は適用される契約条項にかかっているからです。契約条項には契約で明示的に規定されているものと、法律上暗黙的に規定されているものがあります。

Gardでは当事者が直面する可能性のあるシナリオの一部と法的立場に関する以下の記事を公開しています。

新型コロナウイルス感染症〔COVID-19〕 - 公衆衛生上の緊急事態がもたらす用船契約条件への影響
COVID-19 と英国法における不可抗力条項について

 

メンバー各位には、新型コロナウイルス感染症関連で申し立てが発生する可能性がある場合は、早い段階でGardに連絡いただくことを強く推奨します。Gardは、こうした特定の状況における当事者の権利と法的責任に関する助言を提供し、必要であればさらなる法的助言と支援に向けて、適切な弁護士を選任または推薦します。Gardは今後も、新型コロナウイルスの発生に関し、WHO(世界保健機関)などの専門機関が発表した見解と勧告を指針とし、メンバー各位に引き続き警戒いただくことを推奨します。

新型コロナウイルス感染症の発生状況に関する最新情報やアドバイスは、Gardのウェブサイト にある新型コロナウイルス感染症ページや同ページに掲載のリソースを参照いただくことをお勧めします。