イエメン諸港の状況に最近変化はありません。ただし、現在、港湾当局が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止に向けた厳格な検疫措置と規制措置を実施しています。

こちらは、英文記事「Yemen - port situation」(2020年4月17日付)の和訳です。

世界で最も残酷な争いと最悪の人道危機を終わらせるために、フーシ派とイエメン政府とが国連による調停のもとスウェーデンにおいて協議をしてから一年以上が過ぎました。しかしその結果であるストックホルム協定の実行の進捗は遅れています。武力衝突を解決するために2019年11月5日にイエメン政府と南部暫定評議会との間で署名されたリヤド協定についても同様のことが言え、実行は計画通りには進んでいないと報告されています。

直近では、サウジアラビア主導の連合国が新型コロナウイルスの感染拡大を阻止するために一方的に2週間の停戦を発表し、2020年4月9日に停戦が発効しています。しかし、停戦にもかかわらず戦闘が続いていることが報告されています。イエメンで新型コロナウイルスの初症例が確認されたとの報告を受けて、国連は、5年間にわたる戦闘で保健インフラが劣化し、人々の免疫システムも疲弊し、脆弱な状態が一層悪化している同国においては、新型コロナウイルス感染症が「他の多くの国々と比べ、より急速に広範囲に広がり、より多くの死者を出す可能性がある」と警告しています

本稿の執筆時点では、イエメン諸港の状況に変化はありません。ただし、現在継続中の紛争に伴う既存の入港条件に加え、イエメンの港湾当局は現在、新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けた厳格な検疫措置と規制措置を実施しています。したがって、運航者と船長は継続的に状況を調査し、イエメン海域を通航する際は事前に関連リスクの評価を実施するようにしてください。港湾当局が実施する規制措置の順守と船舶・船員の安全確保のために、必要なすべての事前対策を講じるようにしてください。

 

港湾状況

GardのコレスポンデントGulf Agency Co. (Yemen) Ltd. (GAC) からの情報によりますと、2020417現在のイエメンにおける港湾状況は以下のとおりです。

  • 稼働中の港: アデン(Aden)、リュードゥム(Rudhum)石油ターミナル、ムッカラー(Mukalla)、アシュ・シール(Ash Shihr)石油ターミナル、ニシュトゥン(Nishtun)、
    サリーフ(Saleef)、フダイダ(Hodeidah)
  • 閉鎖中の港: モカ(Mokha)、ラス・イサ(Ras Isa)のマリンターミナル(Safer)、
    ラス・イサ(Ras Isa)の石油製品受け入れ施設、バルハフ(Balhaf)のLNGターミナル

稼働中の港でも、燃料供給やその他の基本サービスが不十分なことがあり、港としての対応能力は限定的である可能性があるため注意が必要とのことです。同コレスポンデントは、イエメン諸港で数量不足や損傷から生じる貨物クレームの可能性もあると指摘しています。イエメン諸港に入港を計画している場合には、特別な入港条件が導入されたり、サウジアラビア主導の連合国により各種検査が実施されたりするなどの理由で、入港の延期や遅延が生じる可能性も考慮しておく必要があります。

同コレスポンデンツからはイエメン国内でのデング熱とチクングンヤ熱感染ケースの増加も報告されており、本船船員はイエメンに寄港の際には蚊に刺されないよう対策を実施してください。最近のSave the Childrenのプレスリリースによるとデング熱感染ケースはイエメン国内のほぼ全域で記録されておりフダイダ(Hodeidah)とアデン(Aden)が最も多いとのことです。蚊が生息する地域に寄港する船舶に対する推奨される予防措置の概要は2019年10月7日付Alert「警戒すべきデング熱症例数の急増」をご覧ください。

 

新型コロナウイルス感染症に伴う入港条件

本稿執筆時点で、イエメンの諸港に寄港する船舶は、入港してバースに進む前に、最大14日間係留地に留まることを指示される可能性があると、GardのコレスポンデントであるGACが伝えています。そのほか、港湾当局が求める予防措置としては、停泊前に特定の船内区域を消毒すること、乗組員の体温検査、上陸許可の禁止、乗組員の交替禁止などがあります。GACによる最新のアドバイスは、GACの「Hot Port News Updates on COVID-19」を参照してください。

新型コロナウイルス感染症については、状況が急速に変化する可能性があり、感染地域や施行されている港湾制限、渡航制限を常時完全に把握することが難しくなっています。したがって、運航者と船長には港湾に到着する前に十分な余裕を見て、現地の港湾当局、船舶代理店から実施中の規制、予防措置に関するアドバイスを求めることを強くお勧めします。なお、国際P&Iグループは、船主、傭船者、運航者、その他の海運セクターの関係者が世界中の国や港湾のアドバイスを把握するのに役立つCOVID-19オンライン追跡ツールを立ち上げています。

その他の関連ウェブサイトやガイドラインへのリンク、Gard の資料はこちらにまとめられていますので、運航者、船長、船員は、新型コロナウイルス流行への引き続きの警戒、備え、対策にお役立てください。

 

継続中の紛争に伴う入港条件

イエメン政府の直接的支配下にない港に、国連機関または公認の国際的人道支援組織を経由しない相互支援目的の物資を含め、商用の物品・サービスを輸送する船会社や船主は、UN Verification and Inspection Mechanism [UNVIM](国連照合検査機構)から事前に入港許可を取得する必要があります。 入港許可の申請は船舶の書類の入手状況に応じ、遅くともイエメンの仕向港に到着する5日前までに、できれば船舶が貨物の仕出港から出港する前に、提出する必要があります。この期間を過ぎて受領された申請は許可までに遅延が生じます。UNVIMの標準実施要領、必要書類リスト、入港許可申請フォームなどの詳細は、UNVIMのウェブサイト(https://www.vimye.org)をご覧ください。

イエメン政府の直接的支配下にない(稼働中の)港は、フダイダとサリーフです。

イエメン政府の支配下にある港(すなわち、フダイダとサリーフ以外の稼働中の全港)に寄港する船舶については、引き続きEntry permission for commercial and relief ships to Yemeni portsの申請書を用いてイエメン運輸省に入国許可の申請を行う必要があります。この申請書は、入港または到着の少なくとも1週間前までに記入して、Operations Unit of the Supreme Relief Committee宛にメール(yemen.transport@gmail.com)で送付しなければなりません。

イエメン領海への入域は、サウジアラビア主導の連合海軍による検査を通過した場合のみ認められます。イエメン領海からおよそ3海里の地点にあるバブ・エル・マンデブ海峡(Bab el-Mandeb)の入口周辺に到着後に、船長はVHF(チャンネル16)で到着を通知しなければなりません。その後、サウジアラビア主導の連合海軍から、検査が終了し入港許可が下りるまでの間の錨泊場所が指示されます。入港許可が下りた後、船長はVHF(チャンネル14または16)で港湾当局に船舶の到着を登録しなければなりません。その後、港長から、接岸時刻までの係留地が割り当てられます。

 

推奨事項

イエメンに寄港する際には、上記の入港許可手続きに注意するとともに、クレーン、燃料、労働力などが不足している可能性がありますので、入港前に十分余裕を持って安全状況と港湾サービスの状況を確認するようにしてください。

新型コロナウイルス感染症と保安状況は急変する可能性がありますので、船員らに注意喚起し、イエメン海域を通航する際には事前に関連リスクの評価を実施するようにしてください。船舶代理店、Gardのコレスポンデントなどに頻繁に問い合わせして、新型コロナウイルス感染症と保安状況に関して現地の最新かつ信頼性の高い情報を入手することが重要です。情報はGulf Agency Co. Ltd(GAC)のウェブサイトの“Hot Port News”からも入手可能です。

イエメン内戦によって、紅海南部とバブ・エル・マンデブ海峡では、海賊以外にも安全上の脅威が生じています。当事者間の紛争による巻き添えにあったり、商船がターゲットにされて被害が生じる可能性もあります。したがって、紅海とアデン湾地域を運航する際には、紅海南部とバブ・エル・マンデブ海峡の海上安全に関する暫定ガイダンス(Interim Guidance on Maritime Security in the Southern Red Sea and Bab al-Mandeb)とBMP5のガイダンスに厳密に従うことが重要です。各船は、同地域を航行する際は、そのことに軍隊に気づいてもらえるように、アフリカの角海事安全センター(Maritime Security Center Horn of Africa [MSCHOA])に登録するとともに、英国海軍商船隊司令部(United Kingdom Maritime Trade Operations [UKMTO])に報告するようにしてください。また、海軍が監視対象としている海上保安航路帯(Maritime Security Transit Corridor [MSTC])を利用するようにしてください。

本アラートは、GardのコレスポンデントであるGulf Agency Co. (Yemen) Ltd.からの情報に基づいて作成したものです。

 

その他のGard刊行物

新しく発行されたBMP5とGlobal Counter Piracy Guidanceはもう入手されましたか?

(2018年9月20日付)

イエメン - 脅威の評価に関する新ガイドライン」(2018年1月25日付)

紅海/アデン湾航行に関する新ガイダンス」(2017年7月25日付)

Piracy - Robbery or Illegal Violence at Sea(英文)

Sanctions(英文)

 

米国の国際港湾保安プログラム(International Port Security Program

2019年5月16日付の最新のPort Security Advisory (2-19)によると、米国コーストガード(USCG)は、イエメンの諸港(バルハフのLNGターミナルを除く)では有効なテロ対策措置が実施されていないと判断しています。コーストガードは、バルハフから米国に到着する船舶について、より厳格な安全保障上の手続きを別途適用しています。バルハフから米国に到着する予定の船舶は、管轄のコーストガードの港長に事前に十分な余裕をもって連絡をとるべきです。ただし、本稿の執筆時点では、バルハフのターミナルは閉鎖されているとの報告があります。

米国海事保安法(Maritime Transportation Security Act [MTSA])に基づき、コーストガードは、米国向け船舶(米国登録船舶や外国船)の国外出航港と、国際海上貿易に安全上のリスクをもたらすと判断されるその他の国外の港において実施されているテロ対策措置の有効性を評価することを義務付けられています。有効なテロ対策措置が講じられていないと判断された場合には、その港の情報が連邦

公報で発表されます。コーストガードは、直近5箇所の寄港地の中にそうした港が含まれる船舶に対して、米国への入港時に特定の入港条件を課す予定です。入港条件に基づき、該当する船舶は以下を行わなければなりません。

  • イエメンの港に寄港中は、船舶保安計画のセキュリティレベル2に相当する措置を実施すること。
  • イエメンの港に寄港中は、船舶の各アクセスポイントを確実に警備し、かつ、船舶外部(陸上および海上の両方)に警備の死角が生じないようにすること。
  • イエメンの港に寄港中は、保安宣言(Declaration of Security)の実施に努めること。
  • 船舶保安記録にすべての保安活動を記録すること。
  • 米国海域に入域する前に、管轄のコーストガードのキャプテン(大佐)に実施した活動を報告すること。

こうした条件を順守しないと、米国への入港を拒否される可能性があります。

有効なテロ対策措置を実施していないと判断されている港のリストと、入港条件については、米国コーストガードのウェブサイト(International Port Security Programs)に掲載されています。