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IMSBCコードに未記載の液状化するおそれのある貨物に注意 / Beware cargoes which may liquefy not listed in the IMSBC Code (JP)

こちらは、英文記事「Beware cargoes which may liquefy not listed in the IMSBC Code」(2023711日付)の和訳です。

 

液状化するおそれがあるにもかかわらず、国際海上固体ばら積み貨物(IMSBC)コードでグループA貨物として記載されていないために、荷送人からその危険性の申告がないまま貨物が積まれてしまう事件が多発しています。

グループA貨物とは、含水量が運送許容水分値(TML)を超える状態で船積みされると液状化するおそれのある貨物をいいます。多発する事件の内2件では、貨物が液状化して乗組員の命が危険にさらされる事態となりました。幸い全員助かりましたが、内1件では、船が沈没し、海洋汚染危機をもたらしました。

 

IMSBCコード附録3第2条は、「粒状貨物の多くは、相当高いと思われる水分を含有していると、水分の移動を起こしやすい。このように粒状貨物であって、過度に湿っているような場合には注意して取り扱わなければならない。さらに、必要に応じ、船積みに先立って流動特性について試験をしなければならない」と定めています。そのため、船主の皆さまにおかれましては、自社の船員に対して本条項を周知徹底するようお願いいたします。

 

グループA貨物として記載されていない貨物

 

上記の対応は、IMSBCコードにグループA貨物として記載されていない貨物についても当てはまります。IMSBCコードは、船舶で輸送される物品全てを網羅したデータベースというわけではありません。ばら積み貨物の輸送契約を締結する際は、コードに記載されていない貨物に対処するためにも同コードの条項を把握しておく必要があります。

 

また、同コードには、通常は乾いているとの理由からグループAに分類されていない貨物もあります。「乾いている」や「埃っぽい」といった記載があっても、含水量が高くなるとグループA貨物の特性が生じる場合があるため、そのような貨物についても上記と同じような対応が必要です。

 

グループA貨物に関して液状化の懸念が生じる事件も後を絶ちません。最近も複数の加入船で、グループAに分類されている微粉鉄鉱石や蛍石などを船積みしている最中に、貨物の流動化の危険性が発覚して陸に揚げ戻すということがありました。 

 

埋立土の輸送

 

ある船舶は、埋立地から運んできた1,900トン超の土(IMSBCコードに記載なし)を輸送していましたが、航海中に風と波を受けたことで貨物が流動化して船体が傾き、5人の乗組員が救出されたあと沈没してしまいました。  当局は船骸から油を抜き取るよう命令を出しましたが、その点を除き船骸が船舶の航行に危険を及ぼす心配はないと判断されました。この事故は、ノルウェー安全調査局(NSIA)の調査対象となり、調査の結果、岸壁で野積みされていた土の一部が水分を含んでいたため、本船に積み込まれた土も水分を含んでいた可能性があるとされました。

 

英語による調査概要と動画(字幕付き)をこちらでご覧いただけます。

 

 

炭酸カルシウムの輸送

 

別の船は、積地出港後すぐに傾いてしまいましたが、幸い、避泊錨地に移動して事なきを得ました。ホールドを調べてみると、山状に積まれた貨物がほぼ平らになっており、上に水が溜まっていたため、救助業者にこの自由水を取り除いてもらってから近くの港に曳航してもらい、そこで荷揚げをしました。

 

このとき積まれていたのは炭酸カルシウムです。この貨物はIMSBCコードには明確に記載されていません。一方、同じ炭酸カルシウムでも、石灰石はグループC貨物として記載されています。また、フッ化カルシウム・硫酸カルシウム・炭酸カルシウムの混合物も、同コードの2022年版の493ページにグループA貨物として分類されています。

 

 

 

このときの貨物は岸壁で野積みされており、荷役前と荷役中にはにわか雪が降っていました。一等航海士が岸壁で貨物の状態をチェックすると、粘度は土と砂の中間くらいで、一部が凍っていました。また、IMSBCコードを確認したところ炭酸カルシウムが記載されていなかったため、船長が詳しい情報を提供するよう傭船者に求めました。すると、特に危険性はないとの返答があったため、船積み前の缶テストは特に行いませんでした。しかし、事件後(貨物の上に溜まった自由水の除去後)に缶テストを行ったところ、IMSBCコード第8節に記載されている「流動の可能性」があるという結果が出たのです。

 

荷送人に確認すると、貨物の流動特性を調べていなかったことが分かりました。そして、貨物の試料をラボで検査したところ、当該貨物はグループAに分類され、輸送するには危険であるという結果が出ます。含水量は30%超と、TML(24%)と流動水分値(FMP)(26.7%)のいずれもオーバーしていました。液状化するおそれのある貨物のTMLはFMPの90%に設定されています。TMLは輸送に問題がないとされる最大水分値で、IMSBCコード附録2のパラグラフ1に記載のように、主管庁の承認を受けた試験手順によって決定されます。この貨物については、粒径分布(PSD)の分析も行ったところ、2mm未満の粒子のみで構成されていることが分かりました。

 

IMSBCコードに記載されていない貨物に対する条件

 

IMSBCコード第1.3節では、同コードに記載されていない貨物の取り扱いに関する指示として、まず荷送人が積地の主管庁からの承認を得る必要があるとしています。国際海事機関(IMO)が、穀物や固体ばら積み貨物の安全輸送を管轄する各国の指定主管庁の連絡先と住所一覧を管理しています。

 

「1.3.1 本コードの附録1に記載されていない固体貨物をばら積みで運送しようとする場合、荷送人は荷積みの前に、本コードの第4節に従って、その貨物の特性と性質を荷積み港の主管庁に提出しなければならない。受け取った情報をもとに、主管庁がその貨物が安全に運送されるかどうか妥当性を査定することとなる。

 

1.3.1.1 運送予定の固体ばら積み貨物が、本コードの1.7で定義するグループAおよびB貨物と同等の危険性を示す可能性があると査定されたときは、荷揚げ港の主管庁および旗国に助言を求めるべきである。3か国の主管庁はその貨物の適切な仮運送条件を設定することとなる」

 

しかし、これまでの経験上、この条件を実行するのは容易ではありません。これは、いわゆる3か国協定の改善を目的に出されている提案だというのが私たちの理解です。

 

営利上やむなく、コードに未記載の貨物を主管庁の承認なく積まなければならない場合は、事前にクラブに相談することをお勧めします。

 

荷送人はばら積み貨物運送品目名(BCSN)を使用しなければならない

 

IMSBCコード第4.2.2節では、輸送する貨物が同コードに記載されている場合、書類に記載する貨物名にBCSNを使用するよう荷送人に求めています。BCSNではなく取引上の名称が使用されているときもありますが、これでは貨物がコードに記載されていないとの誤解を与えてしまいかねません。まず記載すべきはBCSNで、取引上の名称はあくまで第2の名前として使用すべきです。こうすることで船長にもはっきり伝わり、コードに記載されているそのBCSNの特性が船積み予定の貨物と合致しているか確認することができます。貨物の性状がコード上の説明と合致しない場合は、速やかにクラブにご相談ください。コードの附録4は対象貨物が一覧になっており、個別スケジュールの確認に役立つでしょう。

 

荷送人が提出してきた固体ばら積み貨物の書類にBCSNが記載されていない場合は、正しいBCSNを記載するか、第1.3節に基づき主管庁の承認を得るよう求めることをお勧めします。毎回のお願いですが、輸送予定の貨物の安全性について不審な点がある、判断がつかない、懸念があるなどの場合は、クラブへご連絡ください。

 

輸送する貨物のことを知る

 

輸送予定の貨物のことを知り、その特性やリスクを船積み前に余裕を持って把握しておくことは、安全を確保する上で欠かせません。馴染みのない貨物であればなおさらです。今回ご紹介した事件の1つでは、船長はベテランでしたが、船長としてグループA貨物を以前に運んだことがあるか思い出せませんでした。いずれの事件も、全員が無事で済んだのは運がよかったとしか言いようがありません。

 

 

 

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