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指定錨地外での錨泊によるサンゴ礁の破壊 / Damage to coral reefs caused by anchoring outside designated anchorage (JP)

こちらは、英文記事「Damage to coral reefs caused by anchoring outside designated anchorage」(2023年7月10日付)の和訳です。

 

サンゴ礁があることで知られている海域では、サンゴ礁を破壊して当局から罰金を科されることのないよう、指定錨地外での錨泊をしないでください。

ケーススタディ:錨地の船混み

 

エバーグレーズ港に入港予定だったある船舶は、指定された錨地で錨泊するつもりでしたが、錨地内には既に多くの船舶がいました。そこで船長は、他船と十分な距離を保つため、錨地の南の境界線のすぐ外側で錨泊することにしました。本船の電子海図では、その場所の海底は「砂地」となっていました(下図参照)。「サンゴ礁」と記されている海域もありましたが、錨泊予定地からは少し離れていたため、船長は錨泊位置をパイロットステーションに伝えたのち、錨泊しました。

 

 

指定錨地外での錨泊に関する現地法

 

米国では2008年、沿岸法に新たな条項(エバーグレーズ港に関して『U.S. Coast Pilot』第2章で公開されているCFRタイトル33チャプター110.186の航行規則)が設けられ、同港付近の大西洋を運航する商船は、緊急事態または当局から事前に承認を得た場合を除き、必ず指定錨地内で錨泊するよう定められました。規則に違反した場合、船舶やその船主はサンゴ礁の破壊に関する損害賠償請求に加え、制裁金を別途請求されるおそれがあります。

 

地元当局による調査

 

フロリダ環境保護局サンゴ礁保護プログラム(FDEP CRCP)のサンゴ礁破壊防止対策プログラム(RIPR)の技術者は、当該本船が指定錨地から外れた、サンゴ礁が生息すると思われる場所で錨泊していたことをオンラインで確認しました。本船のAIS位置情報を入手し、航跡と正確な錨泊位置、振れ回りパターンを突き止めました。続いて、サンゴ礁資源が破壊されていないか確認するため、水中調査を実施しました。

 

錨泊したと思われる位置でダイバーがサンゴ礁の破壊を目視で確認し、その状況をデジタル写真で記録に残しました。さらに、全ての船舶とそれぞれの航跡を調べた結果、対象時期に事件現場で錨泊をしていたのが当該船舶だけであったことが判明しました。

 

サンゴ礁の損傷

 

FDEP CRCPは、サンゴ礁の損傷について、有機体が回復するまでの想定時間と被害の程度に基づき、以下の4段階に分類しています。

 

  • クラス1の損傷とは、砂や瓦礫の移動による損傷など、被害の程度が最も小さく、自然回復までの想定時間が最も短い損傷です。
  • クラス2の損傷とは、有機体や基質がこすり取られる、有機体がはぎ取られることによる損傷といった軽度の損傷です。
  • クラス3の損傷とは、有機体が取り除かれる、船底塗料が付着する、基質に傷が残るといった中程度の損傷です。
  • クラス4の損傷とは、イシサンゴの破壊、硬質基質の破壊、サンゴ礁資源の埋没による損傷など、被害の程度が最も深刻で、自然回復までの想定時間が最も長い損傷です。

 

現場で確認された損傷は、サンゴ礁一帯で錨鎖が大きく振れ回った状況と矛盾が見られませんでした。フロリダ環境保護局は、本船がサンゴ礁に対してクラス2~4に該当する回復不能な損傷を与えたと結論づけ、その結果、本船の船主は、多額の損害賠償請求と制裁金を要求されることとなりました。

 

損傷の性質上、回復措置を講じても、有機体がもたらす生態系サービスの損失を大きく食い止められる見込みがなかったため、FDEP CRCPは、本件においては現場の第一次修復を要求しませんでした。

 

本船のAIS上の航跡付近で、10平方メートルにわたって損傷したサンゴ礁(出典: FDEP CRCP調査報告書)

 

推奨事項

 

サンゴ礁を破壊したと申し立てられれば一大事です。その後に待ち受けるであろう事態に鑑みて、Gardは以下の点を推奨します。

 

  • サンゴ礁/海洋保護区など、海洋動植物の生息地付近で錨泊する場合は、指定錨地外では絶対に錨泊しないでください。米国(カリフォルニア州、フロリダ州)とオーストラリアでは特に注意が必要です。
  • 錨地に空きがない、もしくは安全に錨泊できるだけのスペースがない場合は、ドリフティングをすることを強く推奨します。管制に対して他に錨泊できる場所を本船に指示するよう毎回要求してください。また、錨泊位置とその付近の海底を必ず確認することもお勧めします。
  • 船主および管理会社は、航海計画や錨泊に関する自社の安全管理手順に上記の内容が含まれているか確認してください。

 

 

アンカーや錨泊の仕組み、手順は船舶を安全に運航する上で欠かせない要素です。Gardは、アンカー意識向上キャンペーンと称して、アンカーや錨泊作業に関する事件に伴う技術・作業面でよくある問題を割り出し、無料でダウンロード・共有できる資料として公開しています。

 

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