article-img

INSIGHT

船員のメンタルヘルスと地政学的要因 / Seafarer mental health and geopolitics (Japanese)

今年シカゴで開催された国際海上保険連合(IUMI)の政策フォーラムワークショップでは、ウクライナ戦争と、この戦争が海上・戦争保険に与える影響がテーマとなりました。  GardPeople Claimsチームを率いるLene-Camilla Nordlieはこのワークショップで、船員と、彼らが直面している数々の問題に注目しました。こうした問題は、現在の地政学的状況だけでなく、船員という職業がもたらすストレスや緊張にも総じて原因があります。今回のInsightでは、Nordlieのコメントを一部ご紹介します。

こちらは、英文記事「Seafarer mental health and geopolitics」(2022年10月10日付)の和訳です。

Gardでは2021保険年度に取り扱った人身クレームの割合が、提供しているすべてのサービスを通じて全クレームの24%を占めました。People Claimsチームは、乗客や密航者、船上・陸上にいる人や海上で救助された人に関するクレームも取り扱っていますが、その大半は船員に関するクレームです。コロナ禍によって、船員はこの2年ほど非常に厳しい状況に置かれてきました。一部の地域では今も問題が続いています。しかし今、それ以上に問題となっているのがウクライナ戦争です。この戦争によって船員の健康とメンタルヘルスに直接的なダメージが生じています。ウクライナとロシアはどちらも古くから船員を多数供給している国々であり、現在乗り組んでいる船員はウクライナ人が約10万人、ロシア人が約20万人で、両者が同じ船に乗り合わせることもあります。

 

地政学的状況による悪影響を受ける船員の健康

 

船員のメンタルヘルスと健康に関する問題としては、海上にいて会えないため家族や友人が心配であることや、現在のウクライナの状況で言えば、帰る家があるかどうか分からず不安である、といったことが挙げられます。船員の中には、契約を早めに終了しようとする人もいれば、乗船期間を延ばそうとする人もいます。また、医療アクセスに支障が出る可能性があります。ロシア人船員やロシアの占領・併合地域に住む船員の場合は、制裁によって賃金や障害・死亡給付金の支払いを受けにくくなり、ウクライナに住む船員の場合は解雇されることもあります。

 

一方、国連の黒海穀物イニシアティブのおかげで、足止めされていた多くのばら積み船は既に出港しています。これは船員にとっては朗報で、迫り来る世界的な食糧不足を緩和することにもなるでしょう。国連黒海穀物イニシアティブ共同調整センターによると、8月の初めから9月22日までの間に、トウモロコシ、ヒマワリの種・油・粕、小麦などの農産物を積載した船舶144隻が、チョルノモルスク、オデーサ、ユージヌイ/ピブデンニの各港を出港しています。推定全損を回避できそうという意味では、これは海上保険にとって朗報ではありますが、こうした船舶に乗り組んでいる船員の人権や心と体の健康に対する義務を、私たちは忘れてはなりませんし、なおざりにしてはなりません。

 

これらのコメントは、922日にシカゴで開催された2022IUMI会議でLene-Camilla Nordlieが行ったプレゼンテーションから主に抜粋したものです。

Most read:

Insight articles

Loss prevention material

Member circulars