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国連の世界糖尿病デーに関連する形で、Gardは、糖尿病のリスクについて、また新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴うリスクの高まりについて、読者の皆様、特に船員の皆様に理解を深めていただく取り組みに参加しています。ここでは、リスクを極力抑え、命を守り、海上での安全を確保するためにできることをご紹介します。

糖尿病は命に関わる病気です。世界では死因のトップ10に入っており、8秒に1人がこの病気で亡くなっています。2019年に糖尿病で亡くなった人の数は420万人で、その半数近くが60歳未満でした。

 

昨年の段階で、世界には糖尿病患者が4億6,300万人いました。つまり、成人の11人に1人が糖尿病患者ということです。

 

この数字は、2030年には成人の10人に1人にあたる5億7,800万人に増加すると見込まれており、2045年には、成人の9人に1人にあたる7億人が罹患すると考えられています。

 

糖尿病について

 

糖尿病は、膵臓がインスリンを作れなくなったり、膵臓で作られるインスリンが体内で効果を発揮できなくなったりした場合に発生する慢性疾患です。

 

1型糖尿病患者の場合、インスリンが殆どまたは完全に産生されなくなります。1型糖尿病は通常、小児または若年成人が発症します。1型糖尿病患者は、血中のブドウ糖濃度をコントロールするために、毎日インスリンを注射する必要があります。1型糖尿病を完治させる薬はなく、生きるためにはインスリンの補充が必要不可欠です。

 

2型糖尿病は世界の糖尿病患者の90%を占めており、その数はますます増えています。2型糖尿病の特徴はインスリン抵抗性とインスリンの相対的不足です。この病気に年齢は関係なく、いくつであってもその診断を下される可能性がありますが、一般的には40歳以上の人が多くなっています。また、常にではありませんが、多くの場合は肥満が関係しており、肥満が原因でインスリン抵抗性が引き起こされています。2型糖尿病患者は、大抵、初期段階は運動と食事で症状を管理できます。しかし、時間の経過と共に大半の患者が飲み薬やインスリン注射を必要とするようになります。それでもやはり、健康的な生活習慣が糖尿病管理計画の核であることに変わりはありません。

 

2型糖尿病は重症化すると失明や足の切断のほか、心臓病、腎不全、死に至る病気を引き起こします。幸い、2型糖尿病のケースの50%以上は予防可能で、患者は上手に管理やケアを行えば、合併症の発症を避けることができます。世界の240を超える糖尿病関連団体が参加する組織、国際糖尿病連合(IDF)が、2型糖尿病に罹患するリスクを調べることを目的とした個人向けのオンライン糖尿病リスクテストを提供しています。詳細については、以前のInsight記事をご参照ください。

 

 

フィリピンでは5番目の死因

 

船員の最大の供給国であるフィリピンでは、『2018 Philippine Health Statistics(2018年フィリピン保健統計)』によると、糖尿病が5番目の死因となっています。

 

肥満は糖尿病に罹る重大なリスク要因となっています。また、過度な喫煙や運動不足も船員にとってリスクを招く一因です。

 

 

 

出典:https://www.ifsma.org/resources/Good-Health-for-Seafarers-Guide-MtS.pdf

 

パンデミックにより船員交代の危機が発生していることから、多くの船員が契約期間を過ぎても乗船を余儀なくされ、ますます苦しい状況に置かれています。

 

とはいえ幸い、糖尿病に罹るリスクを大幅に減らすことは可能です。IDFによれば、「研究の結果、生活習慣を改善する(健康的な体重になり、適度な運動を行う)ことにより2型糖尿病の発症を避けられるという決定的な証拠がある」ことが分かっています。

 

運動量を増やすことに加え、食事内容の調整も非常に重要です。国際船員福祉支援ネットワーク(ISWAN)の商船における健康によい食品ガイドラインには、船上での健康的な食生活に関するヒントが記載されています。

 

船上での安全に対する影響

 

インスリンやその他の糖尿病用の薬を使用している船員は、低血糖に陥るリスクがあります。血糖値が通常範囲を下回って低血糖症になると、船の安全に極めて重要な作業などのパフォーマンスに影響を及ぼすおそれがあります。低血糖症になると反応が鈍くなり、リスクに対する判断力が低下する、イライラが高まり危ない行動を取るようになる、また、最悪の場合は意識障害や意識消失に陥る場合もあります。そのため、症状をうまく管理することが極めて重要になってきます。規則正しく食事を摂って運動を行い、観察することが大切です。船上では勤務時間が不規則なため、インスリンの投与と食事の摂取のバランスをうまく取ることがいっそう難しくなるうえ、船酔いなどで食事ができない場合もあるかもしれません。このようなときはインスリンの投与量の調整が必要になることもあります。

 

残念なことに、糖尿病のコントロールができずに海上で医療緊急事態に陥った例もあります。亡くなってしまったケースや、病院への医療搬送が必要となるケースが多々ありました。この病気とうまく付き合う上では血糖値測定器が重要な役割を果たします。糖尿病患者は常にこの血糖値測定器を携帯すべきであると専門家は推奨しています。理想を言えば、本船上にこれを備えておくべきでしょう。そうすれば、医学上必要なときに血糖値を測ることができます。糖尿病の診断を受けていない人でも、場合によっては血糖値を検査して、糖尿病の可能性を排除したり、適切な処置を施したりすることが重要になることがあります。

 

糖尿病の診断を受けている人、または糖尿病の疑いがあるかそのリスクが高まっている人は全員、糖化ヘモグロビン(HbA1c)値とも呼ばれる平均血糖値を検査で調べるべきです。この値は6パーセント未満でなければなりません。この検査では、通常の血糖値検査で分かる一時的な値ではなく、過去6週間の平均血糖値が分かります。平均血糖値が安定しており一定の水準であれば、船員が糖尿病をうまくコントロールできているという有力なバロメーターになります。このような検査は、船員の雇用前健康診断の項目に含めておくことをお勧めします。

 

コロナ禍でのリスクを抑える4つのヒント

 

新型コロナウイルス感染症の大流行は、船員を含めすべての糖尿病患者に新たな問題や恐怖、不安をもたらしています。糖尿病患者が普通の人たちと比べてこの感染症に罹りやすいというわけではありませんが、1型・2型のどちらの患者も、深刻な合併症を発症したり、さらにはこのウイルスが原因で亡くなってしまったりするリスクが他の人より高いと考えられています。

 

幸いなことに、糖尿病患者全員が同じリスクを抱えているわけではありません。病気をうまくコントロールしていれば見通しはもっと明るくなります。つまり、糖尿病を患った船員は自らの症状を正しく管理することがいっそう重要になるわけです。

 

このコロナ禍で糖尿病を患っている人たちの最も適切な管理方法については、多くの議論が交わされています。IDFは新型コロナウイルス感染症と糖尿病に関するアドバイスを発表し、糖尿病患者向けに以下のことを推奨しています。

 

  1. 血糖値のコントロールに十分注意すること。定期的に観察することで合併症を防ぐことができる。
  2. インフルエンザのような症状(発熱、咳、呼吸困難)が見られる場合には、医者に相談することが重要である。痰が出る場合は感染している可能性があるため、すぐに医療支援と治療を受けること。
  3. 感染している場合は血糖値が上がるため、水分を十分に摂ること。
  4. 規則正しい生活を保つこと。働きすぎないようにし、夜は十分な睡眠時間を確保すること。

 

何よりもまず、軽くても何らかの症状が見られる場合には、それを速やかに報告するよう船主が推奨すべきです。注視が必要な糖尿病持ちの船員については特にそうです。

 

国際海運会議所からは、このコロナウイルスに関連して、非常に便利な「Coronavirus (COVID-19) Guidance for Ship Operators for the Protection of the Health of Seafarers v3(船員の健康保護に関する船舶運航者向けのコロナウイルスガイダンス」が発行されていますので、船主の皆様はぜひこちらに従うことをお勧めします。