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補償状(LOI)は、印刷・署名せずとも有効に当事者を拘束することができます。取引によっては、傭船者がEメールでLOIを発動できることとする条項を傭船契約に含めることが一般的になっています。こうすることで時間と事務処理の手間を省くことができますが、こういった条項やそれに基づくLOIの発動については、相応の配慮と注意が必要です。

こちらは、英文記事「Careful drafting of LOI invocation clauses in charterparties avoids later surprises

2020年11月19日付)の和訳です。

補償状(LOI)は海運業界において一般的なもので、傭船者が傭船契約の条項が許容していない行為を行いたい場合に、それを円滑に進めるためによく使われます。船主は、それを受け入れた場合に生じる追加のリスク(P&Iカバーが損なわれるリスクを含む)を傭船者がカバーすることに異議がなければ、傭船者の要求を拒むことはないでしょう。最も頻繁に利用されているLOIは、オリジナルB/Lの提示なしに貨物の引き渡しを求めるためのもので、国際P&Iグループ(IG)ではこのLOIに関する推奨雛形を作成しています。

 

有効なLOIは法的な拘束力を持ち、(一般的には)傭船契約とは完全に別個の契約となります。LOIに基づいて重大な責任が発生する可能性があるため、傭船者も船主もその取り扱いは慎重に行わなければなりません。B/Lの提示なしに貨物を引き渡したことに伴うクレームはP&Iカバーの対象外となるため、後で誤った引渡についてクレームを受けた場合には、船主はLOIをたよりに求償をすることとなります。

 

傭船者からのLOIは多くの場合、公式のレターヘッドの付いた紙に印刷され、権限が与えられた代理人が署名をして差し入れられます。ただ、全てのLOIが印刷・署名されるわけではなく、取引によっては、傭船契約の条項(例:Shelltime4書式の第13条(b)を参照)に摂取されている、合意済みの具体的なLOIの文言を傭船者が発動する形でLOIを発行することが一般的です。

 

発動条項に基づくLOIは、印刷・署名されたLOIとまったく同等の効力を持つため、両当事者の時間と事務処理の手間を省けるという利点があります。ただ、常に想像するほどに簡単にいくわけではありません。LOI発動条項を作成するときも、実際にLOIを発動するときも、船主と傭船者が考慮すべきポイントがいくつもあります。

 

傭船契約のLOI発動条項の作成について

  • LOIの発動により要求できることは何か。要求内容として最も多いのは、オリジナルB/Lの提示なしでの貨物引き渡し、またはB/Lに記載されていない港での貨物引き渡しですが、その他にも貨物を複数に分けての引き渡し(スプリット)などが求められることがあります。LOI発動条項は、LOIの文言による契約と引き換えに船主が(LOIに沿った内容の)要求に従うことに同意するものですので、内容を明確にしておく必要があります。
  • LOIの文言を必ず明確にしておく。最大限明確にするため、LOIには、条項そのものの形であれ、別紙の形であれ、合意事項の全文を規定しておくのが最善の策です。国際P&IグループのLOI推奨雛形や「船主のP&Iクラブの文言」による、と定める方法もあります。国際P&Iグループでは、オリジナルB/Lの提示なしでの貨物引き渡しと、B/Lに記載されていない港での貨物引き渡しに関するLOIの雛形は提供していますが、B/Lのスプリットやスイッチといったその他の対応に関する雛形は提供していません。そのため、LOI発動条項で上記2つの雛形以外の状況にも幅広く対応しようとする場合は、この雛形に修正を加える必要があります。また、そのLOIの文言が要求の性質に適しているかも確認しましょう。
  • 傭船者がLOIを発動できるタイミングに明示的な制限を加えるべきかを考える。合理的な理由がある場合に、船主はLOIの発動要求を拒否できる明確な権利を持つこととしておくべきでしょうか。傭船者の信頼度が大きく下がるような出来事があった場合や、傭船者の要求に関して既に係争が起こっている場合などがこれに当てはまる場合があります。
  • LOIを発動する際に傭船者が踏むべき手順を考える。LOI条項によっては、LOI発動時にLOIの何条に基づくかを言及するよう傭船者に具体的に求めているものもあります。言及が正しく行われれば確実性が高まりますが、何らかの理由でこの要件が見落とされてしまうと後で問題になるおそれがあります。そのため、傭船者がLOIを発動するための要件が定められている場合は、船主が、それらの要件の遵守を求める権利を放棄できる権利を具体的に規定することを検討しましょう。
  • LOIを発動する際に提示すべき情報は何か。通常、LOIには印刷・署名する前に記入しなければならない空欄がいくつかありますが、LOIを発動する際に傭船者はどの項目を記入すべきでしょうか。そのとき従事している航海からすぐに記入できる情報もあるかもしれませんが、いつもそうとは限りません。
  • LOIが発行されたとみなされるのはいつか。通常は、傭船者が船主に要求を出したときに発行されたとみなされますが、条項に別の条件が定められている場合もあるため、明確な記載があるか確認しましょう。
  • 署名入りの正式なLOIをいつ発行すべきか。発行の必要がないと判断される場合もありますが、後日、時間に多少余裕ができたときに署名入りの正式なLOIを発行するよう船主が求める場合もあります。
  • 傭船契約の他の条項はLOIの文言に影響を与えるのか。通常、LOIは別の契約と見なされ、LOI自体の条件に基づいて扱われますが、その文言を傭船契約の他の条項と関連づけて解釈すべきだという主張がなされることもあります。

 

合意済みの条項に基づいてLOIが発動される場面でのチェック事項

  • 発動通知がLOIの条項に従っているか。LOI発動条項が、LOIを発動する側の当事者に、発動の通知に特定の情報を含むことを義務付けている場合は、その情報が提示されているかを確認しましょう。例えば、「発動通知で第何条の発動条項によるか言及するよう定められている場合にそれが行われているか」、「発動条項により発行されたとみなされるLOIに記入されるべき必要な詳細情報はすべて提示されているか」、「要求された作業は発動条項でカバーされているか」、といったことです。
  • 要求内容は十分明確になっているか。傭船者は貨物の引き渡し先として希望する者のフルネームを伝えているでしょうか。LOIの条件を限定しようとする要求ではないでしょうか。不明な点がある場合は、詳細を確認してから進めましょう。
  • LOIの条項を遵守するためにすべきことは何か。これは非常に重要なポイントで、これを実行できないと、船主はLOIの効果を享受できなくなってしまいます。ある特定の者に貨物を引き渡すことが求められている場合は、引き取りに来た人物が本当にその指定された者かを確認しましょう。不明な点がある場合は、確認してから進めましょう。
  • 船主はLOIの条項を遵守したことの証拠を保持しておくべきか。LOIに基づくクレームが起こることは比較的少ないですが、船主によっては、通常の対応として、後で必要になったときのために、貨物を引き取りに来た者に関する一定の情報を記録しておくこともあります。
  • LOIを差し入れた側は記録を残しているか。LOIは保証状と同様のものとみなされ、とても大きなリスクにさらされる状況につながる可能性があります。そのため、LOIを差し入れた

 

  • 側(受け取った側も)は、LOIの発行日や、それが解除・無効になった日を記録に残しておきたいと考えるでしょう。その場合には、法的にはまったく同じ効力であるとしても、発動条項に基づくLOIが、印刷された署名入りの正式なLOIとは別の方法で管理され、同じ形で記録されないことによるリスクがあります。
  • 発動条項はback to backか。傭船チェーンに組み込まれている傭船者にとっては、発動条項に基づくLOIがback to backであるかを把握することはより困難になるかもしれません。発動条項に基づくLOIの文言が仮にback to backであったとしても、発動の方法はそうでない場合があり、さらなる係争を引き起こすおそれがあります。

 

お伝えしておきたいのは、LOIは、当事者をヘーグ・ヴィスビー・ルールやそれに基づく防衛手段の枠外に置く行為について、P&Iカバーの代わりの役割を果たすことが多いということです。そのため、LOIが必要な場合には、有効かつ拘束力を持つものとすることが極めて重要です。発動条項に基づくLOIは効果的な方法であり、印刷・署名したLOIとまったく変わらない効力・拘束力を持ちます。ただ、発動の過程で厄介な問題が生じることがあるため、発動手順に関する条項の作成には十分な注意を払う必要があります。