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ARPOL条約2020による硫黄分上限規制が施行されるにあたり、多くの予想が立てられましたが、その中で低硫黄重油(VLSFO)への移行が順調に進むとしたものは皆無でした。Gardの経験から見ても、多くの人が予想したより移行は順調に進んでいます。とはいえ、問題がないわけではありません。

こちらは、英文記事「IMO 2020: A review of the transition to VLSFOs」(2020年9月10日付)の和訳です。

はじめに

 

2019年、硫黄分0.5%の燃料油への移行にあたりさまざまな問題が懸念される中、この移行がどれほどうまくいくのかについて海運業界で多くの議論が交わされました。どの予想が合っていたのでしょうか。この問いにお答えするため、Gardでは2020年7月にメンバー向けのウェビナーシリーズを開催し、低硫黄重油の使用に際して、2020年上半期に船主や乗組員、用船者が直面した技術的な問題、適合に関する問題、法的な問題について考察しました。ウェビナーのプレゼンテーション動画と資料はこちらで視聴、ダウンロードできます。

 

ウェビナーの最中や終了後に、技術や契約、保険、法の施行に関する多くの鋭い質問が参加者から寄せられました。本Insightでは、移行に伴いGardが扱ったクレームやメンバーの皆さまから寄せられた問い合わせなどを簡単に取り上げたのち、ウェビナー参加者からの代表的な質問についてより詳しくお答えしていきます。

 

移行に関してGardがこれまでに扱った問題

 

当初遭遇した問題は、低硫黄重油の組成にかなりのばらつきがあった点です。アルミ・シリカ(触媒微粒子)、流動点、酸価など、ISO 8217のさまざまな要素がオフスペックであったことが判明しています。また、燃料油に関してGardが報告を受けた問題の中で特に多かったのが、潜在セジメント(TSP)の多さと硫黄分の上限オーバーです。実際、ボルチック国際海運協議会(BIMCO)、国際海運会議所(ICS)、国際乾貨物船主協会(Intercargo)、そして国際独立タンカー船主協会(Intertanko)が共同で行った業界全体によるサーベイでも同様の結果が出ました。

 

運航中に起きた問題で特に多かったのが、清浄機やフィルターにたまるスラッジ量の増加です。ただし、この問題はこれまでのところ機関の深刻な故障や損傷を頻繁に起こすまでには至っていません。乗組員がこういった燃料油をうまく取り扱うことができているか、デバンカーされているからだと考えられます。この問題も業界全体で行ったサーベイの結果に表れています。

 

燃料油がらみの機関損傷に関するクレームを集計したところ、2020年上半期に寄せられたクレーム数は2018年、2019年の同時期と比べて少なくなっています。この数字は、機関に損傷が起き、修理費用が控除免責金額を上回った事故のみを集計したものであるため、乗組員が直面した単なる運航上の問題は含まれていません。燃料油の契約を巡る係争に関して、今年開始された被告側としての訴訟の数は過去数年と同程度になっています。そのためGardとしては、機関が損傷するかもしれないという多数派の不吉な予測や、船主・用船者間で大量の訴訟が発生するという事態は、少なくとも今年の上半期は現実のものにはなっていないと考えています。しかし、以下に挙げるような質問からもお分かりのとおり、依然として問題が残っています。

 

燃料油の使用前検査

 

質問:船主は燃料油の使用前に検査をする義務はありますか?

 

法律上、船主が燃料油の使用前に検査を行う義務はありませんが、サプライヤー側で燃料油の品質管理をどのように行っているか船主の方では詳しく知りようがないため、専門のラボで検査を行うのが一般的になっています。保険会社の観点から見ると、この質問は「保険に加入していない慎重な船主であれば、こういった状況でどのような行動を取るか?」ということになります。そのため、ラボの分析レポートで品質が適合していることが確認できるまでは新しいロットを使用しないようにするのが賢明です。ただ、もちろん使用前に検査と分析を行えない場合もあるでしょう。

 

これまでの数か月間、船主や管理者と関わってきた結果、ISO 8217表2の要素に従って使用前分析を行うのが一般的になっていることが分かりました。また、一部の船主はこれらの基本検査に加えて、汚染物質を特定してその量を計測する調査試験も行っています。これを行うことで、燃料油がISO 8217第5条の要件に適合しているかどうかを調べることができます。

 

質問:用船者として、これまで船主が不適合油だとしてクレームを入れようとしているところや、検査せずに使用した燃料油によって損傷が発生したと申し立てるところを見てきました。検査を行わなかった場合、こういったクレームにどのような影響がありますか?

 

仮に通常の検査によって損傷を引き起こした汚染物質が明らかにすることができ、それで損傷を回避・軽減できていたとしたら、検査を行わなかったことで因果連鎖が断ち切られた、あるいは船主による寄与過失であったという論争が生じる可能性があります。しかし、これはその事件の事実関係によって異なってきます。通常の検査で問題が明らかにならなければ、船主に非があると責めるのも難しくなるかもしれません。

 

代表サンプルとバンカーデリバリーノート(BDN

 

質問:燃料油の品質検査は、(a)サプライヤーのサンプル(バンカーバージで採取したサンプル)を使用すべきか、それとも(b)本船のサンプル(本船側のマニホールドで採取したサンプル)を使用すべきでしょうか?

 

どちらのサンプルで検査を行うかについては、Gardが今年対応したクレームの大半で論争が起こっています。用船者もバンカーサプライヤーも通常、サプライヤーのサンプルを検査すべきという立場を取る一方、船主は本船のサンプル、つまりマニホールドで本船が採取したサンプルの検査を望みます。船主にしてみれば、サプライヤーのサンプルが実際に供給される燃料油の標本ではないという懸念が当然あるかもしれません。受け取る側である本船の乗組員がバンカーバージでのサンプル採取の様子を常にチェックしたり監視したりできなければなおさらのことです。サプライヤーのサンプルは規格に適合していたのに、本船側で採取したサンプルはオフスペックだったというように、サンプルによって結果が大きく異なったというケースもいくつかありました。

 

MARPOL条約では商用サンプルについての規則は設けていません。要件はMARPOLサンプルのみに限られており、本船側のマニホールドでサンプルを採取し、密封をして、港湾局や旗国当局が利用できるよう船上に保管することが定められています。とはいえ、やはり商用サンプルとMARPOLサンプルは同じ場所から採取するのが全当事者のためです。法律で定められた要件がないため、次のものに頼る必要があります。

 

  • シンガポールのSS600など補油を行う国独自の要件、または
  • 国際海事機関(IMO)ガイドライン(MEPC.1/Circ.875/Add.1)などの業界規格(ISO 13739)とベストプラクティス、または
  • 契約による合意

 

代表サンプルの採取を本船側のマニホールドで行うようISO 13739 2020年版で求められている点は特筆に値します。以前の版ではサンプルはバンカーホースのいずれの側で採取してもよいということになっていたからです。ISO規格は燃料油供給契約と用船契約に摂取することができます。また、船長も用船者から補油前の適切なサンプル採取について指導を仰ぐとよいでしょう。

 

これに関連する問題として、すべてのサンプルが本船側のマニホールドで採取されたという誤った記載がBDNにあることが分かったものの、本船の乗組員がそれに気付かずに署名をしてしまったというケースもいくつかありました。船長と機関長は、BDNに記載されている情報を必ず確認してから署名をすることが大切です。もし齟齬がある場合には、管理者や用船者にその問題を伝えるべきで、ことによってはそのBDNに対して異議申立書や条項を出すことを検討しましょう。

 

粗悪油による機関損傷に対する責任

 

質問:調査試験を詳しく行わないと見つからないような汚染物質が原因で機関が故障した場合、責任を負うのは船主、用船者のどちらでしょうか?

 

この質問については私たちGardがよく把握しています。私たちは船主に対しては船舶の損害保険を引き受け、用船者に対してはそういった船舶の損害に伴う船主への責任保険を引き受けています。また、てん補されない損失を巡り用船契約に基づいて係争を行う場合の費用についても、船主・用船者の双方をてん補の対象としています。

 

この質問は、機関が故障したのは燃料油に含まれる汚染物質が原因だという前提になっています。しかし、故障の原因を立証するのは難しい場合が多いです。燃料油の中には規格に含まれていない物質も数多く存在し、それを検出するにはGC-MS(ガスクロマトグラフ)分析などの調査試験を行う必要があるからです。また、当該物質と損傷との因果関係の立証という問題もありますが、「ヒューストン地域で供給された燃料油に関する一連のトラブル」からもお分かりのとおり、これを立証するのは簡単なことではありません。

 

質問が暗に示しているように、機関が故障したのは供給された燃料油に含まれる汚染物質が原因である、という見解を化学者や技術者などの専門家が述べたと仮定しましょう。その場合、誰に責任があるかは、用船者が機関の故障に対する責任を負うとする用船契約の義務に違反したか否か、という契約上の問題になります。

 

用船契約の内容は契約ごとに異なりますが、通常は、用船契約で定められた規格に適合した燃料油を定期用船者が本船に供給する義務を負っています。供給は、ISO 8217のいずれかの版に照らして行われるのが通常です。ISO 8217には、燃料油の中に「人に有害で、船舶の安全を脅かし、機関の性能に悪影響を及ぼす」ような凝縮された物質が一切含まれていないことを求める包括条項が含まれています。

 

したがって、機関が故障したのは特定の汚染物質が原因だとする主張を裏付ける証拠があるとした場合、理論上、船主は用船者から損害賠償を受けられることになります。通常、損害賠償には修理費用、用船料、調査/訴訟費用が含まれます。こういった係争では、より専門的な検査を行ったり、専門家に出席してもらったりする費用が発生することが多いため、調査や立証・抗弁はコスト高になる可能性があります。

 

質問:用船者がデバンカーを拒否し、船主もその燃料油を使うのを拒否した場合、本船は航行できなくなってしまいます。こういった場合のリスクはどこにありますか?

 

VLSFOは混合させると取り扱いが難しくなる場合があり、使用に適しているか否かで争いが起きた場合、その争いが解決されるまで船主も用船者も金銭的なリスクを負うことになります。当該燃料油がオフスペックで安全に使用できないという船主の主張が正しい場合、本船はオンハイヤーのままとなり、停船中も用船者は用船料を支払わなければなりません。一方、当該燃料油が使用に適しているという用船者の主張が正しい場合、船主は用船料を受け取れなくなるおそれがあります。大切なのは、双方が迅速に行動し、その燃料油がオフスペックであるのか、そして、オフスペックの点がある場合にはどうすれば安全に使用できるかを確認することです。いずれの場合でも、おそらく専門家からのアドバイスが必要になるでしょう。また、本船からのデバンカーが必要な場合には、バンカーサプライヤーを速やかに巻き込むことが欠かせません。燃料油供給契約では、通知条項やクレーム期限が短く設定されているものが多くあります。信頼できるサプライヤーであれば、燃料油販売契約に基づき、オフスペックであることが判明した燃料油の陸揚げに協力してくれるでしょう。

 

定期用船者の代わりに燃料油を調達する船主

 

質問:これまでに何度か、私たち船主がVLFSOを調達してその費用を後で請求してほしいと定期用船者から頼まれたことがあります。これを行うとリスク状況は変わりますか?また、船主としてどんな点に気をつければよいでしょうか?

 

私たちもこういったケースを目にすることがあります。例えば、船主が自らの都合で補油を行おうとしており、時間とコスト節約のため、用船者が同じサプライヤーを利用したいというような場合です。また、用船者が供給した燃料油が立て続けにオフスペックとなり、デバンカーを余儀なくされたことを受けて、次回の供給については船主側で手配してほしいと用船者が要求する事例が今年は少なくとも1件ありました。

 

そのような取り決めをした場合、燃料油を調達するにあたり、船主には以下のような点に相当の注意を尽くす負担が生じることになります。

 

  • バンカーサプライヤーの選定
  • バンカーサプライヤーが仲介業者や実際の供給業者と取引をしているかの確認
  • クレーム期限、サンプル採取条項、免責条項(燃料油の適合性に関する保証を除く)など、売買条件が妥当な内容であるかの確認
  • 必要となる燃料油の説明、および、最低粘度、流動点、求められるISO規格などの問題についての対応。指定するISO規格については、一般に見かけることの多いISO 8217:2010よりもISO 8217:2017を推奨
  • 品質証明書(COQ)の要求と内容の確認。あまりにも日付の古いCOQは実際に供給する燃料油との関連がない可能性がある
  • 業界では燃料油を混合しないよう推奨しているが、どうしても混合しなければいけない場合は、補油前に融和性があるかを確認する必要がある

 

船主が用船者の代わりに供給手配をする場合、以下の3つの点に注意する必要があります。

 

  • 購入は必ず用船者の代理人として行い、個別の売買契約として行わないこと。後者では、個別の売買契約に基づいて船主が売主から燃料油を購入し、それを用船者に売ることになる。代理人として振る舞わなかった場合、売買契約で定められた用船者の義務を船主が負う可能性が高くなる
  • 手続きを進める前に、用船者が購入価格と売買条件に満足しているか確認すること
  • 手配について売主に注意を促し、自分はあくまでも用船者の代理人であり、当事者ではない旨を忠告しておくこと

 

船体保険(H&M)のてん補範囲

 

ウェビナー中に寄せられた保険のてん補範囲に関する質問は、その大半が、以下の2つのケースにおいて本船の機関損傷に対するクレームが船体保険(H&M)のてん補対象になるか否かということに関するものでした。

 

  • サンプル分析の結果が出る前に、該当する燃料油を使用しなければならないケース
  • 乗組員の過失が関係しているケース

 

おそらくケースごとにそれぞれ事実関係が異なるため、すべての状況に当てはまる回答をすることはできません。ただ一般的に、船体保険のてん補範囲はあえて広く設定してあるため、船主が常識的な方法で問題解決をするような状況についてはほとんどてん補されるでしょう。Gardは船体保険会社として、サンプルの検査は必ずしもスムーズにいくものではなく、さまざまな理由で遅れが発生することもあると承知しています。品質証明書を用いるといったような事実に基づいた方法で船主が燃料油の品質確認を行い、それに基づいて当該燃料油がおそらく規格に準拠しており使用目的を満たしていると判断した場合は、仮に何らかの損傷が発生しても船体保険でてん補されるものと思われます。

 

乗組員の過失についてですが、船体保険では、乗組員や船主の陸上職員による過失に起因する事故もてん補対象となっています。何をもって乗組員の過失とするかは、してはいけないことをした、または本来すべきであったことをしなかったという常識的な基準で判断します。乗組員や陸上職員が自分の行動によって何が起こるかをある程度予見できた場合は、船体保険のてん補対象とならない場合もありますが、見落としやその後の誤った手続きが原因である場合は、引き続きてん補対象となる可能性が非常に高いでしょう。

 

規格適合油補給のための離路費用

 

質問:検査の結果、燃料油がオフスペックであることが分かり、船主がデバンカーと規格適合油の補給のために航路を変更することにした場合、これにかかる費用は保険でてん補されますか?

 

デバンカーと規格適合油補給のための離路費用が仮に発生した場合、これは船体保険契約、P&I保険契約のいずれでもてん補されません。FD&D保険であれば、サプライヤーに対するクレーム(船主が燃料油を購入した場合)や用船者に対するクレーム(用船者が燃料油を購入した場合)を起こす際の裁判費用や専門家への依頼費用がてん補されるでしょう。粗悪油とその代わりに補給した燃料油の費用の差額に加え、離路費用が発生した場合も請求対象となるほか、何らかの遅延が発生した場合も請求対象となります。

 

専門家の役割

 

質問:機関が故障したり損傷を受けたりした際、燃料油の品質が事故の直接の原因であったかどうかを立証するのが難しい場合があります。こういったときは専門家を起用すべきでしょうか?

 

技術専門家や化学者の起用が必要、起用しないまでも相談が必要、といったケースは今年かなり発生しています。特に、燃料油がISO 8271表2の要素に適合しているにもかかわらず乗組員が取り扱いに苦戦しているような場合がそうです。質問の中でも強調されていますが、原因の立証は複雑な問題となることがあり、時間も費用もかかります。今年の話ですが、調査試験の費用だけで2万米ドルかかったケースも1件ありました。

 

ポートステートコントロール(PSC

 

質問:ポートステートコントロールの検査はGardにどのような事態を引き起こしていますか?

 

2020年上半期に行われたPSCの検査数は、新型コロナウイルス感染症の大流行が原因で約40%減少しました。それにもかかわらず、MARPOL条約附属書VIのSOx規制に伴う拘留数は東京MoUで2桁になっており、その大半が燃料油の硫黄分濃度が高いことを理由とするものでした。

 

Gardはそういった拘留事件の一部に対応しましたが、PSC検査官は基本的にIMOのMARPOL条約附属書VIに基づいたポートステートコントロール向け2019年ガイドラインIMO決議MEPC.320(74)のガイドラインを把握し、それに従っていることが分かっています。ただ、PSC検査ガイドラインへの認識を高めるため、乗組員に加えて陸側の管理者にもさらなる研修が必要と思われるケースもいくつか見られました。特に強調したいのは次の2つの点です。

 

  • 携帯型の機器で硫黄分濃度を計測して0.53%を上回る結果が出た場合、これがより詳細なPSC検査を行う明確な根拠と見なされる場合はありますが、違反の証拠として扱われるべきではありません。この計測結果はあくまで目安にすぎません。
  • 詳細な検査の一環として、「使用中サンプル」または「船上サンプル」を陸側の公認ラボで検査する必要があります。これらのサンプルを同じラボで2回検査した際の硫黄分の平均濃度が0.53%以下であることが判明した場合、その本船は規則に準拠していると見なされるべきです。

 

しかしながら、「MARPOL」サンプル(MARPOL条約附属書VI第18.8.1規則に従って提供されたサンプル)を検査する場合は、IMOガイドラインに基づき、同じラボで2回検査した際の平均濃度が0.50%以下でなければならないという厳密な上限が適用されることを、船主・管理者・乗組員は把握しておく必要があります。私たちの知る限り、これまでのところ当局による硫黄分の検査対象は「使用中サンプル」もしくは「船上サンプル」に限られており、MARPOLサンプルまでには及んでいません。検査手順、および使用中サンプル・船上サンプルとMARPOLサンプルとの違いの詳しい説明については、GardのInsight記事「使用中のVLSFO(0.5%硫黄分の船舶燃料油)が規格に合致し、MARPOL条約の規制に準拠していることを95%確信していますか?」を参照してください。

 

また、一部の国では陸側でのサンプルの検査に少額の手数料を徴収する可能性があるという報告も受けています。各国の国内法で定められている場合があるため、船主と管理者はこの件について現地の代理店と確認すべきでしょう。

 

一般的な推奨事項

 

燃料油の混合物にばらつきがあることや、燃料油供給のエコシステムに対する当局の取締り不足などを主な理由に、乗組員や船主、用船者には今後も問題が山積しています。Gardでは、一般的な推奨事項として次のことを提唱いたします。

 

  • 調達段階でリスクを軽減する:用船者であれ船主であれ、燃料油の購入者がまず優先すべきは粗悪油の補給を避けることです。サプライヤーを選ぶ際は、燃料油のサプライチェーンにおけるその業者の統制力、市場での評判、加入保険での粗悪油問題に対するてん補の有無、そして供給契約の条件を見極めましょう。買主が考慮すべき重要なポイントを取り上げたGard Insightの記事もご参照ください。可能であれば、最新のISO規格を摂取してください。GardではISO 8217: 2017の使用を推奨しています。
  • 不適合油について当局に通知する:燃料油がMARPOL条約附属書VI第14または18規則で定められた要件を満たしていなかった場合、船主がその事実を報告することが重要です。報告を受けた当局は、IMOを通じてIMO GISIS(国際総合海運情報システム)プラットフォームにその情報をアップロードすることになっています。今年上半期には、このプラットフォ

 

ームで旗国各国から152件の事例がアップロードされており、船主、管理者、用船者にとって優れた情報源となっています。

  • 用船契約条項を正しく理解する:普及している用船契約の中にはしっかりとした内容のバンカー条項もありますが、合意する前には、それらの条項の果たす役割を理解できているかチェックし、その内容が自分のニーズにあったものであるかを必ず確認しましょう(ニーズは時間とともに変わる可能性もあります)。
  • 係争に備える:問題が起きる前から情報や証拠の収集を始めましょう。問題が起きてからでは遅すぎるかもしれないからです。BDNに記載されている情報が正しいかを署名前に確認してください。一般的に正しいとされる方法にバンカーサプライヤーが従っていない場合は指示を求め、補油、保管、使用プロセスのすべての手順をしっかりと記録しておきましょう。
  • 船主と用船者で協力する:現在は係争の部分にばかり目が行きがちで、各当事者がそれぞれの役割を果たす中で直面しているさまざまな問題に、どう一緒になって対応していくかということはあまり重視されていません。しかし、船主と用船者がお互いの利益のために協力できる部分は色々とあります。バンカーサプライヤーの選定や、燃料油の組成に関する知識の掘り下げ、検査費用の共同負担、燃料油を実際に使用した際の性能についてのフィードバックなどがそうです。協力することで全当事者の収益を向上させられるかもしれません。

 

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