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 甲板上に段積みされたコンテナが崩れた場合、乗組員や船の安全性、そして環境にとって重大な危険となります。荷崩れが発生してコンテナが海上に落下する事例数は増え続け、頻度も高まり深刻さも増していることから、海運業界と保険会社はここ数年大きな損失を被ってきました。

こちらは、英文記事「Why do containership stacks collapse and who is liable?」(2020年6月15日付)の和訳です。

本稿では、コンテナの荷崩れの代表的な原因と、荷崩れによる賠償請求に対処する際の法的な位置づけについて概説します。

 

原因

原因を把握することは、事故を防止するためだけでなく、各事件における責任の所在を判断するうえでも重要となります。

 

荒天は、海運の発祥以来切っても切り離せない問題となってきました。航海計画やウェザールーティングの高度な技術が船長をサポートしてくれるものの、事故が起きれば船長の判断が問題視されます。コンテナ船が荒天の中を航行すると、コンテナ、固縛装置、そして段積みされたコンテナの山に大きな力がかかります。過去数年、パラメトリック横揺れ、および同調横揺れと呼ばれる現象によって、コンテナ船で重大な事故がいくつも発生してきました。

 

パラメトリック横揺れとは、向かい波や追い波中で発生する大きな横揺れの自励振動のことで、船長と波長、さらに波との出会い周期の力学が関係しています。船の横揺れ角度がわずか数回の周期で適度な横揺れから30度を超える角度にまで大きくなり、それによって段積みされたコンテナの山に加速度が過剰にかかる可能性があります。同調横揺れは、船の横揺れ周期が波の出会い周期と一致することで引き起こされます。このとき波が同調を招く場合があり、波によって船の横揺れが次第に大きくなって船が横揺れ角度を制御できなくなってしまうおそれがあります。

 

Gard Guidance on Freight Containers, chapter 5.5(Gardの海上コンテナに関する手引書、第5.5章)(英文のみ)』

 

サイズの問題もあります。大型船は小型船と比べて海上での動き方が異なるからです。例えば、1998年に起きたAPL China号の事故後に行われた調査では、船首フレアの大きい大型コンテナ船はパラメトリック横揺れを特に受けやすいことが判明しました。さらに、最大級のコンテナ船ともなれば、コンテナは水面から最大40メートルもの高さまで積み上げられ、甲板上に並べられたその幅は60メートルにもなります。船と、このような巨大な山となったコンテナとが横揺れを始めれば、船が海の動きに合わせて動き始めたときにコンテナの山が大きな力を受けやすくなることは、誰でも容易に想像がつくでしょう。

 

船上での積み付けも重要な要素です。船上での重量配分も海上での船の動きに影響を及ぼすからです。GM(コラム参照)とは、船の初期静的復原力を測定した値で、航海前にこのGMを適切な範囲にしておくことが極めて重要です。これは、陸側と船上の両方での適切な積付計画に関わる問題ともいえます。実際の業務のほとんどは高度なソフトウェアによって行われますが、コンピュータープログラムを動かすには、ソフトウェアの適切な開発、データの正しい入力のほか、人の手による操作、そして最終的には人の判断が欠かせません。

 

メタセンタ高さ(GMは、船の重心とメタセンタの距離を算出した値です。このメタセンタ高さは船体の自然な横揺れ周期に影響を及ぼします。例えば、GMが小さいと船は非常に大きく傾斜します。逆にGMが大きいと傾斜に対する初期復原力が大きいということになりますが、横揺れ周期が短くもなるため、動きが速くなり積荷にかかる力も大きくなります。そのため、GMは大きすぎず小さすぎず、適切な度合いにする必要があります。

 

 

コンテナ内での貨物の積み付け方も問題となります。1本でも積み付け方の悪いコンテナがあると、段積みされたコンテナの山全体に影響を与えるからです。あるコンテナの中の貨物が動き出した場合、その山全体にドミノ効果が起きるおそれがあります。中に積まれている1個の貨物がコンテナに損傷を与えたことでそのコンテナが含まれる列がまるごと崩れてしまった、という深刻な事例はこれまでいくつもありました。そのため、貨物固縛マニュアル(CSM)に適切に従い、問題となりそうな貨物に関しては別途積み付けガイドラインを探す必要があります。ひとつ問題となるのは、荷送人やフォワーダー、またはその下請け業者が貨物を適切に梱包、固定してくれなければ、コンテナ船社がなす術はほぼないということです。トラブルを避けようがないのです。

 

コンテナは貨物を収容する目的に適合するよう設計されていますが、超過荷重により過度の負荷がかかってしまうと、構造が破壊される場合があります。また、コンテナの外側は、経年劣化したり乱暴に扱われたりすることで構造が脆くなることがあります。コンテナが1本損傷すると、その上や周りに積まれている他のコンテナも損傷することになります。

 

貨物の重量は荷送人から申告されるものですが、重量の誤申告が業界で問題となっており、貨物の積み付けプランナーにとってはかなり大きな問題になりかねません。プランナーは荷送人が申告した貨物明細を基に作業を行うからです。数が間違っていたり、ましてや故意に誤申告されていたりすると、段積みされたコンテナの保全性が脅かされる可能性があります。

 

ラッシングとセキュアリングが巨大な山の大量のコンテナに施されているかも大きな問題です。これが適切に行われていないと深刻な事態につながりかねません。簡単に説明すると、甲板上のコンテナは、四隅にツイストロックを装着して互いにつなぎ合わされ、さらに、段積みされたコンテナの山とラッシングブリッジやハッチカバーとがラッシングロッドでつなぎ合わされます。各ツイストロックとラッシングロッドは適切に取り付けて機能させ、負荷を抑えられるようにする必要があります。海上へのコンテナ落下の原因として特に多いのは、不適切なセキュアリング、緩くなったツイストロックやラッシング資材の紛失や損傷といったことが考えられます。貨物の固定を怠ったことでこれまで重大事故が発生してきました。

 

複数の原因によって事件が複雑になることもよくあります。とりわけ責任の有無を取り扱う場合はなおさらです。大半のケースで前述の原因のいくつかが関わっており、直接的原因、間接的原因、単独で十分成り立つ原因、予見性などの問題について弁護士は法的な考察を深く行うことになります。

 

一般的な法的考察事項

原因が確定したとして、次に行うのは個々の事実に対する法の適用です。ここからは堪航性に焦点を当てながら、貨物クレームや用船契約クレームで繰り返し起きてきた法的な問題をいくつか見ていきましょう。

 

貨物クレーム:船荷証券とヘーグ/ヘーグ・ヴィスビー条約

コンテナ貨物は通常、コンテナ船社の輸送基本条件に基づいて輸送され、その条件には一般的にヘーグ条約またはヘーグ・ヴィスビー条約(ヘーグ・ヴィスビー・ルール)が組み込まれています。

 

契約上の運送人が貨物の損害や滅失に責任を負うか否かは、運送人がこの条約で定められた義務に違反したかどうか、または損傷の原因が運送人の免責となる危険によるものかどうかで決まります。

 

運送人の基本的な義務は、貨物を適切に管理すること

 

ヘーグ・ヴィスビー・ルール第3条第2項では、「運送される物品の積込、取扱、積付、運送、保管、管理及び荷揚を適切かつ慎重に行う」義務を運送人に課しています。このため運送人は、貨物を保管している間その義務を果たす確固たる方法を取り入れなければなりません。例えば、段積みされたコンテナのラッシングが航海中に緩んできていると思われる場合、運送人はその問題を是正してラッシングを締める義務を負っています。これは契約上の義務であり、契約上の運送人が実際の運送人ではなく乗組員を直接管理していない場合でも、その運送人が契約上の義務を負うということです。ちなみに、一般的に運送人はコンテナ内の貨物の積み付けを改善する義務は負っていません。これは通常、荷送人側の責任となります。ヘーグ・ヴィスビー・ルール第4条第2項(n)も参照してください。

 

貨物が外観上良好な状態で輸送されたにもかかわらず損傷した状態で荷揚げされた場合、運送人は、その損傷が無過失により発生したものか(H/Vルール第3条第2項)、またはその損傷が同ルール第4条第2項で定められた免責危険を原因とするものかを立証する義務を負う。

Volcafe Ltd v CSAV, 2018, UKSC 61

 

ヘーグ・ヴィスビー・ルールの「免責危険」と無過失条項

 

1. 船舶の取り扱いに関する過失

 

ヘーグ・ヴィスビー・ルール第4条第2項(a)では、「運送人及び船舶は、航行又は船舶の取扱に関する船長、海員、水先人又は運送人の使用人の行為、不注意又は過失により生じる滅失又は損害については、責任を負わない」と定めています。

 

例えば、悪天候下での航行判断において安全な操船術(Good Seamanship)が欠如していたということを立証できる場合、運送人は免責危険としての航海上の過失を援用できる可能性があります。また、過度の横揺れを防ぐために必要な措置を講じなかった場合も、適切な航行上の過失と見なされることで運送人が免責となる場合があります。

 

英国法では、「船舶の取り扱い」に貨物に関する取り扱いは含まれていません。この原則はGosse Millard事件(Gosse Millard v Canadian Government Merchant Marine, 1927, KB 432)で、「損傷が、貨物に相当の注意が尽くされなかったことを専らの原因とする場合、またはそれを主たる原因とする場合でも本船は責任を負うが、損傷の原因が本船またはその一部に相当の注意が尽くされなかったことにある場合は、貨物の場合とは異なり、本船は免責となる」として述べられています。これはつまり、コンテナの荷崩れの原因が貨物の積み付けの過失のみによるものである場合は、ヘーグ・ヴィスビー・ルール第4条第2項(a)に基づく運送人の免責は適用されないということです。

 

2. 海上特有の危険

 

ヘーグ・ヴィスビー・ルール第4条第2項(c)では、「運送人及び船舶は、海上その他の可航水域の災害、危険又は事故から生じる滅失又は損害については、責任を負わない」と定めています。『Scrutton on Charter Parties and Bills of Lading, 20th Edition』(第112条)でScrutton裁判官は、そのような危険に「海上または海上の船舶に特有の危険であり、予知ができず、航海中に避けがたい、または起こりやすい出来事として船主またはその使用人が防ぐことのできないもの」が含まれると定義しています。つまり英国法は、滅失が自然を原因とするものでなければならないという観点から、そういった危険は「海上特有のもの」でなければならないという点を起点としているのです。

 

「予知ができない」という基準は、その危険が、合理的に予知が可能で運送人が回避できる範囲を超えたものでなければならないということです。そのため、技術の発達により、「海上特有の危険」を抗弁することは当然のことながらますます難しくなっています。航海の間通常の気象状況である場合、運送人は危険を避けるために必要な艤装を施すことを求められるのが一般的です。しかし、それでも抗弁はまだ可能です。異常な高波や厳しい波などについては、予知が不可能で運送人を免責とすると見なされることがあります。専門家の間では、パラメトリック横揺れや同調横揺れは穏やかな気象状況でも発生する可能性があるため、予知可能か否かという議論が交わされてきました。例えば、穏やかな天候下で船が同調横揺れに遭遇した場合にコンテナの山にかかる力は、船が極度の悪天候の中で普段よりも大きい横揺れと縦揺れに遭遇する場合にかかる力よりもかなり大きくなる可能性があるからです。この法律上の見解はまだ完全に定まっていません。

 

3. 運送人の故意または過失でないこと

 

ヘーグ・ヴィスビー・ルール第4条第2項(q)では、「運送人の故意若しくは過失によらない、又は運送人の代理人若しくは使用人の故意若しくは過失によらない」損害については、運送人を免責としています。これは通常「キャッチオール免責事項」と呼ばれ、運送人が自らの側に過失がなかったことを立証できる場合、運送人はこの免責事項を援用できるという点は非常に重要です。コンテナの荷崩れの場合、運送人は貨物の管理に対する基本的な義務を果たしていれば、自らの側に過失はないと一般的に主張することができ、それによって運送契約に基づく責任に反論することができます。「無過失」による免責は、運送人の使用人による過失にも適用されます。

 

船荷証券(B/L)に基づくクレームと堪航性

 

ヘーグ・ヴィスビー・ルール第3条第1項(a)では、運送人の基本的な義務の1つとして、「運送人は、航海前及び航海の開始にあたり、船舶を航海に堪える状態におくよう相当の注意を尽くすものとする」と定めています。ヘーグ・ヴィスビー・ルールは、運送契約に基づく物品輸送に適用されるものですが、「至上約款」として用船契約に摂取されることがよくあります。しかしながら、堪航性の問題は、船荷証券に基づくクレームと用船契約に関する紛争の間で異なる場合があります。

 

船荷証券に基づくクレームで重要な点は、英国法の下では「堪航性がある(seaworthy)」ことが「貨物を安全に輸送できる(cargoworthy)」ことも意味するという点です。これについては、『Bills of Lading』(Sir Richard Aikens、Richard Lord、Michael Bools著)第10.99章などをご参照ください。これはつまり、堪航性に関する運送人の義務は各運送契約で定められた各委託貨物によって異なる場合があり、コンテナや保管、積み付けを目的に適合させなければならないということです。適合させなかった場合、運送人はヘーグ・ヴィスビー・ルール第3条第1項(a)に違反するおそれがあります。

 

用船契約に基づくクレームと堪航性

 

コンテナの荷崩れによって生じた損害と債務の最終的な責任については、(契約上の)貨物運送人と用船契約に基づく実際の運送人(船主)との間での堪航性に関する議論に行き着くことが少なくありません。船舶の堪航性維持に相当の注意を尽くすという船主の基本的な義務は、契約、および前提となる法律/判例法の両方の条項から判断することができます。これについては、FC Bradley & Sons Ltd. v. Federal Steam Navigation Co.事件( (1926) 24, LLOYD'S REP 446)で検討が行われました。

 

「船舶は、想定されるあらゆる状況を重んじて一般的に慎重な船主が航海の開始時に自身の船舶に必要とする程度の適合性を有さなければならない」ということが堪航性の従来の定義である。 

 

コンテナの荷崩れでよく生じる問題は、出港時に船とその艤装がどの程度正常であり適切に用いられていたかということと、それがよくある海上の危険に耐えうるものであったか否かということです。したがって、発生している海上の危険から船主がどのようなことを合理的に予知し得たかという文脈の中で堪航性が検討されることになります。例えば、コンテナの荷崩れが起きた場合に船のラッシングとセキュアリングに関する不備があれば、船を不堪航状態にする十分な理由になりえます。Moore事件では、「貨物が適切に積みつけられた一方、固縛を適切に行わなかったことでそれが移動して船


の復原性を徐々に損なった場合、その船は初めの時点で堪航性を備えていない」とする判決が下されました(Moore v. Lunn (1922) 11 L1. L. Rep. 86,92)。

 

また、出港時に、重心が極端に上に偏るような積み付け方がなされており、段積みされたコンテナの山そのものの安定性が損なわれている場合、その船は積み付けの過失によって不堪航状態にあるといってもよいでしょう。

 

荒天が絡むようなコンテナの荷崩れ事故が起きた場合は、原因を検討する中で、適切な航路計画やウェザールーティングが行われたかといったことを示す書類がしばしば引き合いに出されます。CMA-CGM Libra号の事件で裁判所が最近下した判決(Alize 1954 v Allianz Elmentar Versicherungs AG (“the CMA CGM Libra”))では、航路計画の欠陥によって航海上の過失が引き起こされる過程と、それが結果的に船を不堪航状態にする可能性が検討されています。CMA-CGM Libera号の場合は状況が異なる(座礁)うえ、荒天下でのコンテナの荷崩れの場合は原因となる要素がたいてい複数あるため、議論の内容も違ってくるでしょう。しかし場合によっては、コンテナが荷崩れを起こした際の責任の所在を判断する際、航路計画を怠ったことがその原因だと判明すれば、航路計画と堪航性が関わってくる可能性があります。

 

また、貨物クレーム、および船荷証券における法的な位置づけに加え、近年の重大事故では、環境被害に対する責任が重要な問題になっています。コンテナや貨物が海上を漂ったり最終的に海岸線に打ち上げられたりした場合、当局は通常「廃棄物排出者」に矛先を向けます。その破棄物排出者は船の船主または運航者だと見なされるのが一般的です。破棄物は当然取り除くべきものですし、いずれ取り除かれますが、その費用や損失に対する最終的な責任は多くの場合用船契約のもと争われることになります。

 

最後になりますが、コンテナの荷崩れ事件に適用されることの多い法律は制定から100年以上が経過しており、現代の船や技術にうまく適合しない場合もあります。残念ながら、これまでコンテナの荷崩れ事件は、金銭的な損失および船の安全性・環境的影響のいずれの面でも深刻な結果を招いてきました。運送人、保険会社、弁護士、裁判官、仲裁人はコンテナの荷崩れ事件の複雑さに今後も悩まされていくことが懸念されます。