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韓国の海域を航行する船舶が、漁網や海藻養殖場、その他水産養殖施設との接触を頻繁に起こし、高額なクレームにつながっています。

こちらは、英文記事「Fishery claims in South Korean waters」(2020年3月23日付)の和訳です。

概要

2015年から2019年にGardのH&M(船体保険)とP&I(船主責任保険)の対象となった漁具、養魚場との接触事故のうち、12%は韓国の海域で発生したものでした。接触事故は何が原因で発生しているのでしょうか。損害を受けた漁業施設所有者は、損害賠償請求に向けてどのような行動を取るのでしょうか。接触事故の防止や、損害を最小限に抑えるためにどのような行動を取れるでしょうか。今回のGard Insightでは、こうした疑問にお答えします。

 

接触事故が頻発する原因

接触事故の主因の1つは、船舶が指定された航路を航行せず、航海図に明確に目印があるにもかかわらず漁具の敷設されているラインを横断することです(ケース1参照)。また、目印の付けられた漁業水域の外側ぎりぎりを通過していた事例もいくつか見られました(ケース2参照)。

ケース1この船はNakpo石炭桟橋で荷揚げを完了し、燃料補給のために麗水(ヨス)の港外錨地に向かっていました。停泊から数時間経過後、麗水の沿岸警備隊が同舶に連絡し、漁網に損傷が発生したことを通知しました。VTS(船舶通航業務)の記録では、同船は海図に記されていた漁場を航行していました。同船の水中検査を行ったところ、漁網がプロペラとラダーに絡まっていたことが判明しました。

 

ケース2ある船が燃料補給のために麗水に向かっていました。同舶は漁場には入域しなかったものの、漁場東端の外側ぎりぎりを航行したところ、一組の漁網が損傷しているのが見つかりました。同船では、損傷した漁網は海図に記されたゾーンの外側に敷設されていたことから、航行の妨げとなっていたという認識でした。後の調査によって、漁網の実際の位置が当局の発行した漁網許可証に記載されている位置とは異なっていたことが判明しました。当局は、位置は異なるものの、当該漁網は許可された指定漁業区地域内にあったとの見解を示しました。しかし、指定漁業区域が同舶の海図には記されていませんでした。また、韓国の水路通報(2016年第29号)に、当該定置網の実際の位置を船員に通知するための修正が含まれていましたが、同船の船員はこの修正を把握していませんでした。

 

 

この他、敷設場所に関する情報が広く共有されていないために、海図上に印が付けられているにもかかわらず、ブリッジの当直員が養魚場、捕魚器、その他の漁業施設の存在を把握していない事例も数例発生しています(ケース3参照)。Gardのコレスポンデントによると、韓国の港湾当局は、必ずしも、漁業施設の敷設場所を知らせるために船舶に航行警報を出すとは限らないとのことです。

 

ケース3:この船は、平沢(ピョンテク)を出航し、群山(クンサン)港に向けて7ノットに減速して航行していました。Sipidongpado(シピドンパド)付近を航行する際、ブリッジには船長と二等航海士が詰めていました。両名とも周囲に数隻の漁船がいることに気付いていましたが、同船の進路上には漁場を示す浮標はありませんでした。ある漁師から沿岸警備隊に対して、同船によって長袋網が損傷したとの苦情申し立てがなされたことを受けて、科学鑑定が実施され、船長に対する聞き取りも行われました。調査の結果、同船が影島(ヨンド)の南西約7海里に敷設されていた4つの長袋網を損傷したと結論付けられました。沿岸警備隊からは示談が提案され、Gardのコレスポンデントが示談のまとめ役を担いました。

 

定置用漁網や魚介類養殖場の場合、漁師は漁場、漁業施設などの存在を示す目印を設置する必要があります。これに従わない場合、当局から以下の罰金が科される場合があります。

種類

韓国の漁業法で設置が義務付けられている目印

違反した場合に漁業施設所有者に科される罰金

定置網

漁場の全箇所に大型の浮標(目印)を設置し、

各浮標に蛍光塗料を塗るか照明を設置する

200,000ウォン(約18,000円)
(1度目の違反)

 

400,000ウォン(約36,000円)
(2度目の違反)

 

700,000ウォン(約63,000円)
(3度目の違反)

ノリ養殖場

漁場の全箇所に大型の浮標(目印)を設置し、

各浮標に蛍光塗料を塗るか照明を設置する

長袋網

旗を付けた浮標/旗竿を設置する

 

上記の表にあるように、漁業施設所有者に科される罰金は、商船所有者が直面する責任に比べて極めて少額です。韓国の規制によると、流し網などの小型漁具には目印の設置が義務付けられていません。

これら以外にも、漁業施設との接触事故が発生する原因には次のようなものがあります。

  • 漁場の浮標付近に停泊していたり、いかりを漁業施設上で引きずったりしている。
  • 漁業施設は、航行水路や港の入口に近接して敷設されている可能性があり、商業船がそれらを避けることが困難である。

地元漁師が被疑船に対して講じる措置

漁具や漁業施設の損傷が発見された場合、地元漁師から連絡を受けた韓国沿岸警備隊が、船舶が事故を起こしたか否かを判定するための調査を直ちに開始します。調査は、船舶に搭載のVTIS(船舶交通情報サービス)やAIS(船舶自動識別装置)の履歴を基に行われ、その後、船員への聞き取りが行われます。ほとんどの場合、該当船に航海続行許可を出す前に、P&I保険会社からのLOU(保証状)の提出が求められます。通常、以下のものが漁師が提起する損害賠償クレームの対象となります。

  • 損傷を受けた漁具(漁網、ロープ、アンカーなど)の資材費
  • 撤去・復旧に要した人件費
  • 逸失利益(事故が漁期中に発生したものである場合には、これが害賠償請求額の相当な割合を占める可能性があります)。

漁場から損害賠償請求の通知を受けた場合、以下を実施するようにしてください。

  • VDR(航海データ記録装置)データをバックアップすること。
  • 船主の利益を保護するためにECDIS(電子海図情報表示装置)の記録も保存しておくこと。
  • 漁業施設の境界に明確な目印が付けられていなかったことを示す写真などの証拠を保存しておくこと。損害を受けた漁業施設の所有者との賠償請求額交渉時に役立つ可能性があります。
  • P&Iやコレスポンデントに速やかに連絡し、支援を受けること。 

損失防止対策

  • 適切な監視が極めて重要です。電波探知機を、例えばパルス長を長くしたり、距離範囲を小さくしたりすることで、より小さな物体をスキャンできるように設定しておくこと。
  • 養魚場やその他の漁業施設があることが分かっている地域を航行する際は、可能な限り、低速を維持すること。
  • 可能な限り、境界がはっきりしている航行水路や、普段航行している航行水路内を航行するよう努めること。普段とは異なる航路を航行する場合は注意が必要です。
  • 船員とブリッジの当直員は、漁具や漁業施設が設置されている地域を把握しておくこと。敷設情報を航路計画に含め、海図に明確に印を付けておくこと。情報を適切に把握するために、次のような様々な情報源を活用すると良いでしょう。
    • 韓国の航路情報(こちらで入手できます)。
    • VTISおよび水先案内人。ただし、最近できた養殖場や漁業施設に関しては、把握しきれていない可能性があります。なお、すべてのやり取りを航海日誌に記録しておくようにしてください。
    • P&Iコレスポンデント
    • 該当地域や港に寄港したことのある他船の過去の航跡情報
  • VTISや水先案内人から停泊位置を指示された場合、当該地域に漁具や漁業施設がないことをVTISや水先案内人に確認すること。
  • 麗水港外錨地などの停泊地に向かう場合、漁具が敷設されているラインから十分に離れて航行すること。推奨距離は500〜1000メートル。VTISまたは水先案内人から停泊位置を指示された場合、当該位置に漁業施設がないことを確認するよう努めること。
  • 台風からの避難のために鎮海(ちんかい)湾に向かうことを決定した場合、船長とブリッジの船員は、当該地域に敷設されている多数の漁具と施設を把握しておくこと。停泊場所として選んだ場所が安全であることを確認すること。
  • GardのコレスポンデントであるHS Corporationは、韓国の海洋水産部と海洋安全審判院が作成した海難報告書の翻訳版(英文)を提供しています(同文書はこちらからお読みいただけます)。同海難報告書を見ると、接触事故と衝突事故が9月と10月に頻発していることが分かります。同報告書に9月と10月の漁場パターンを示す地図が掲載されていましたのでここに転載します。
    • 現地の航海図
    • 沿岸水路誌
    • 現地代理店
  • 密集する漁船群には近付かないようにすること。特に浮標付近の漁船からは安全距離として、1海里距離を取ることが推奨されます。

       

9月/10月の一般的な漁場パターン


HS Corporationは、現地の養殖慣行をまとめた非常に参考になる文書も作成しています(同文書はこちらからご参照いただけます)。

 

まとめ

慎重に航行することで、(a)海図に示されている漁業施設、(b)目立つ目印が付けられている漁業施設を損傷させる事故を防ぐことができます。

 

漁業施設の損傷に伴うクレームについては、証拠が極めて重要になります。

 

本Insightは、Gardの韓国のコレスポンデントであるHyopsung Surveyors&Adjusters CorporationのSKChoi氏とKomos Surveyors and Adjustersからの情報に基づいて作成したものです。