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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックはまだ続いています。各国で都市封鎖や、渡航制限、国内規制の変更が行われたり、船内でCOVID-19の疑い例が生じてもすぐに病院で治療を受けられないなど、船員や船主に大きな困難や不安をもたらしています。一部の国や地域では感染者数はまだ増え続けていますが、感染率が低下している国もあり、多くの国や地域が徐々に人と人の関わりを緩和し始めています。パンデミックに対処し、都市封鎖を緩和する上で鍵となるのが、この病気の検査です。検査に関してGardに寄せられたご質問に、ノルウェー海上・潜水医学センターの医師の協力を得てお答えします。

こちらは、英文「An introduction to testing for COVID-19」(2020年6月2日付)の和訳です。

 

コロナウイルス、免疫システムそして検査

COVID-19を引き起こすコロナウイルスは人類にとって比較的新しいウイルスですが、そのふるまいは他のコロナウイルスと似ています。他のコロナウイルスには、SARS、MERSウイルスのほか、頻繁に流行し比較的害の少ない一般的な風邪のコロナウイルスも含まれます。COVID-19を引き起こすウイルスに対する人体の反応は、他のウイルスに対する反応に似ています。ウイルスが体内に侵入すると、免疫システムがウイルスを異物と認識して攻撃を開始します。免疫システムの効率には個人差があるため、ウイルスに対する反応の強さ、速さ、有効性は人によって違います。

 

ウイルス検査を行う場合、ウイルスの存在を調べる方法と、ウイルスに対する免疫反応の存在を調べる方法があります。体内の活性を持ったウイルスを探す検査方法をPCR検査、抗原検査といいます。ウイルスが活性を持つためには、体内でウイルスが広がり始めている必要があります。つまり、ウイルスに感染してから検査までの時間が短すぎると、ウイルスが検出されない場合があります。さらに、回復後に相当な時間が経過していても体内からウイルスが見つかることがあります。このため、PCR検査と抗原検査の結果は、患者の病状や感染力に関する目安にはなりません。PCR検査は一般的に費用が高く、人手を必要とし、病院などの医療環境において実施される場合がほとんどです。将来的には、抗原検査は現場で迅速に行うことのできる臨床現場即時検査になる可能性があります。

 

ウイルスに対する免疫反応を調べる検査方法を抗体検査といいます。ウイルスに感染すると、免疫システムが数種類の抗体を形成します。しかし、抗体の形成速度には個人差があります。このため、抗体検査は過去にコロナウイルスに感染したことの確認には使用できますが、感染後8~10日間は信頼性のある結果が得られません。さらに、抗体検査の中には、COVID-19以外のコロナウイルスに対して形成された抗体に反応するものがあります。このため、医学界においては抗体検査だけでCOVID-19を確認することはありません。追加のPCR検査が必要です。

 

検査の質

現在、迅速検査として商用化されているのは抗体検査だけです。PCR検査は現場で検体採取できますが、スワブを検査施設に輸送して分析する必要があります。抗原検査は、将来的には臨床現場即時検査として利用できるようになる可能性があります。PCR検査は最も確実な検査方法ですが、それでも最大30%のケースで感染を見落とします。その主な原因は、感染後検体を採取した時期、検体採取時のミス、輸送上の問題、検査施設での間違いです。

 

現在利用できる抗体検査は、質に大きなばらつきがあります。独立機関のノルウェー・ラボ検査品質改良機関(Noklus)は、最近COVID-19の原因ウイルスに対する抗体を検出する11種類の迅速検査を評価し、11種類の検査のうちを推奨できる高品質のものは4種類だけだったとしています。この評価レポートは2020年4月24日に公表され、Noklusのウェブサイトからダウンロードできます。

 

抗体検査を受けたい場合、IgGとIgMという2種類の抗体を調べる検査を探す必要があります。この検査では「ランセット」という小さな鋭い針で指先を刺し、検査用の血液を採取する必要があります(医療環境以外でも実施できます)。この検査キットは、COVID-19の原因となるコロナウイルス用のものである必要があります。また、CEマークがあるか、米国食品医薬品局(FDA)の緊急使用許可を受けたものを選ぶ必要があります。FDAの緊急使用許可を受けた検査キットの最新リストについては、こちらを参照してください。

 

検査による誤った安心感に注意

多くの人は、何らかの検査をして何も見つからなければ、自分には問題がないと解釈しがちです。ところが、そうとは限りません。第一に、検査とはある特定の時点の状態を示すものです。未来の何か、つまり検査後に起きることを示すものではありません。第二に、検査によって現在または過去にコロナウイルスに感染したことは確認できますが、コロナウイルスに感染していないことを証明するために使用できる検査はありません。第三に、どのような検査にも、精度や特異性を含め、不確実性が伴います。つまり、検査で検出されるはずのものが検出されなかったり(偽陰性)、存在しないものが存在するという結果になったり(偽陽性)する場合があるということです。このため、どのような検査でも、その検査の品質を把握し、検査結果を被験者の症状や既往歴と関連付けることができる医療関係者と協力して使用するべきです。

 

検査はどのような疑問に答えを出すことができるのか

次に、検査が皆さんにとって有用か否かを判断するための材料として、検査に関する疑問にお答えしたいと思います。

 

疑問

答え

検査では被験者がCOVID-19に罹っているかどうかを確認できますか?

はい。PCR検査を使えば、被験者がCOVID-19に罹っていることを確認できます。結果が陽性でも、感染力や病状についての目安にはならないことに注意してください。

検査することで、被験者がコロナウイルスに感染しておらずCOVID-19を発症する可能性がないことを確認することはできますか?(乗船前スクリーニング)

いいえ。感染直後の数日間や、検体の採取、輸送、分析のエラーにより、検査結果が陰性になる可能性があります。

COVID-19に似た症状の人を検査することで、COVID-19に罹患している可能性を排除することはできますか?

いいえ。感染直後から発症までの数日間は、検査結果が陰性になる可能性があります。これは特に抗体検査に言えることです。

 

まとめ

COVID-19に罹ることが心配な場合、どこよりも安全な場所は、14日間航海に出ていた船の中です(ただし、誰も体調の悪い人がいないことが条件です)。船にCOVID-19を持ち込まないためには、乗船前に2週間隔離することが最も安全なアプローチです。PCR検査を行えば、コロナウイ

スに感染していない可能性は高まります。しかし、結果が陰性であっても、感染していない保証はありません。

抗体検査は、コロナウイルスの感染歴のある人のスクリーニングに利用できます。この検査では、ウイルスに対する免疫については何も確かなことは言えません。感染歴のある人のほとんどは、何らかの免疫を獲得することがわかっています。しかし、現時点では、その免疫の持続期間はわかっておらず、免疫があれば再度感染しないのか、感染しても軽症で済むのかはわかっていません。

国際海運会議所(ICS)は、2020年5月28日にCOVID-19-guidance for ship-operators(船舶運航者のためのCOVID-19ガイダンス)の第2版を発行しました。このガイドは、船と陸の往来管理の方法、乗下船、船内でCOVID-19などの疑い例について詳しくアドバイスしています。ICSのガイダンスは、検査結果の利用について注意を促しています。—PCR検査で陰性であっても船員がCOVID-19に感染していない保証はなく、船内にウイルスを持ち込む可能性は残るため、乗船しようとする船員に呼吸器感染症の症状(咳、発熱、のどの痛みなど)が生じた場合、予定どおり乗船せずに医師のアドバイスを受けるべきである」

検査は診断と経過管理のための重要な手段です。しかし、COVID-19の拡大を防止するには、手洗い、咳エチケット、船内で人と距離を取る、体温によるスクリーニング、症状の自己観察、乗船前の健康自己宣言などの対策がより重要です。