この3か月間、世界中の人々の生活や働き方にはかつてない変化が起きています。COVID-19のパンデミックは驚くほどのスピードで世界中に拡大しました。各国政府が感染拡大の影響を抑えるために講じた措置によって事態はさらに複雑化し、至るところで人々の暮らしや社会経済に深刻な影響をもたらしています。

こちらは、英文記事「The power of working together」(2020年7月2日付)の和訳です。

世界各国でロックダウンが解除されるにつれ、こうした状況は当然変化し続けていきます。しかし、今後の数カ月、場合によっては数年間が、海事業界全体にとって非常に厳しいものになることは間違いありません。私たちは、メンバーの皆さまを支援できる力を備えつつ、当グループの長期的な財務健全性維持とのバランスをとることに努めています。

一方、私たちが直面する多くの課題において、協調的な対応が求められています。今回のパンデミックをきっかけに、グローバルなサプライチェーンが抱える根本的な脆弱性が浮き彫りになりました。国民の健康を守るために各国が様々な措置を講じれば、船舶輸送は大混乱に陥る可能性があるからです。つまり、食料、医療品、エネルギーといった基本的ニーズの供給を当然のものとして扱うことはできないのです。平常時であれば、5万隻以上の船舶が120万人の乗組員を乗せて運航しており、交代要員として約20万人の乗組員が世界各地で移動しています。国境が封鎖され、検疫体制が強化され、航空機は運航停止されているような現状では、これらの人員を移動させることが非常に難しく、今後も多くの困難を伴うと予想されます。

こうした難題に取り組むために結成された業界のタスクフォースでは、国際海運会議所(ICS)のようなグローバルな組織や、国際海事機関(IMO)のような信頼される多国籍機関の連携力が発揮されました。彼らの取り組みのおかげで、経済を動かし続けるうえで船員がいかに重要な役割を果たしているかが再認識されました。昨今の規制緩和を受け、シンガポールと香港でより効率的に乗組員の交代ができるようになったことは、業界全体で協力した成果を示す好事例です。

これまでの経験上、各国の対応は狭い視野からしか物事を捉えていないため不十分に終わってしまうことが多く、グローバルな解決を図るには時間がかかります。したがって、複数の利害関係者がより広範囲に連携を図ることはもとより、より小規模で実践的な分野横断型の取り組みも幅広い課題解決に資するという点を念頭に置いておくことが重要です。Gardとベルゲン大学病院との間で進んでいる連携はその一例であり、船上でCOVID-19の感染者を管理して船員の健康を守るため、オンラインで使えるウェブベースのツールが開発されています。

複数の利害関係者による連携の効果は既に明らかになっています。船主、石油企業、船級協会、金融機関、多国籍組織、政府が、タンカーによる油汚染防止に協力して取り組んだ結果、タンカーからの流出量は10年平均で97%も削減しました。これは海運業や海事産業だけでなく、海や沿岸の環境や、直接の被害者らにとっても好ましいことです。そしてこうした連携は一夜にして実現したわけではなく、40年の歳月を費やして可能になったものです。

COVID-19の危機はまだ始まったばかりです。回復には時間がかかるでしょうし、多くの人々に困難が待ち受けていることでしょう。しかし、複数の利害関係者が強力に連携すれば、その影響は軽減され、メンバー各位や海事業界全体にとってチャンスが生まれると確信しています。私たちはそのための備えを進め、与えられた役割を担ってまいります。

Rolf Thore Roppestad
CEO/最高経営責任者